クレーム対応のコスト|時間単価だけでは見えない3層の損失を計算する

クレーム対応のコスト
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中小企業診断士(経済産業大臣登録済み)
ProClaim合同会社 代表社員・花村憲太郎
クレームやカスハラを減らすだけでなく、顧客満足度を高めます。
元コールセンターの品質管理チームマネージャーであり、15年以上にわたり3,000件以上のクレームに対応した経験に基づく、実践的で再現性の高いノウハウを持つ専門家です。
無料相談から、お気軽にご連絡下さい。

クレームやカスタマーハラスメント(カスハラ)にどのくらいの時間を要しているのか、どのくらいのコストがかかっているのか、把握している企業は、ほとんどありません。

クレームやカスハラへの対応は、損益計算書のどこにも科目がありません。
そのため、経営者が「現場は大変らしい」となんとなく知ってはいても、優先順位が上がりにくくなります。

数字になっていないものは、経営会議の議題になりません。
そして数字として表に出てくるときには、たいてい手遅れになっています。
対応していた社員が辞めるという、最悪の形で現れるからです。

そのため本コラムでは、クレーム対応にかかっているコストを自社の数字で計算する際のポイントをお伝えします。

計算方法と、根拠になる公的な統計を示しながら進めます。
最後まで読んでいただければ、自社が年間いくら失っているかを、概算できるはずです。

クレーム・カスハラへの相談はProClaim合同会社まで

クレーム対応のコスト|時間単価だけでは見えない3層の損失を計算する

結論|クレーム・カスハラの対応コストは3層あり、多くの企業は1層目しか見ていない

クレームやカスハラへの対応コストは、次の3つの層で構成されています。
下の層にいくほど金額は大きくなり、同時に見えにくくなります。

内容見え方
第1層対応に費やした時間に対する人件費請求書は来ないが、時間と単価が分かれば計算できる
第2層対応した本人と、その周囲の従業員の生産性低下社内の数字には出ず、研究データから推定するしかない
第3層休職・離職の発生と、欠員を埋めるための採用費人が辞めて初めて、請求書という形で表に出る

第1層だけを見ていると、クレーム対応は「担当者が数時間我慢すれば終わる話」に見えます。

しかし実際には、第2層と第3層のほうが金額としてはるかに大きくなります。
以下、層ごとに根拠と計算方法を見ていきます。

なぜクレームやカスハラへの対応コストは経営者に見えないのか

コストが見えない理由は2つあります。
会計の仕組みの問題と、現場から情報が上がってこないという問題です。
どちらも、経営者側の努力だけでは解消できません。

また、そもそもクレームやカスハラへの対応は業務の一部であって、わざわざ費用として数えるものではない、という考えから、見えていないこと自体を問題だと認識していない企業も少なくありません。

しかし、見えていないことと、存在しないことは違います。
誰かが時間を使っている以上、そこには必ず金額が発生しています。

損益計算書に「クレーム対応費」という科目はない

クレームやカスハラへの対応にかかっているのは、すでに支払っている給与の一部であり、新たな支出が発生するわけではありません。
そのため、どれだけ対応に時間を取られても、会計上は何も起きていないように見えます。

外注していれば毎月請求書が届くので、金額は嫌でも目に入ります。
しかし、自社で対応している限り、費用は通常の人件費として支払われるため、、経営者がぱっと見で「クレーム対応に要した費用」を把握することを難しくします。

また、対応に当たった時間は本来の業務ができなかった時間でもあります。
営業担当者であれば商談ができず、管理職であれば判断業務が止まっています。
ですが、その結果として残業が増えたとしても、クレーム対応のコストと認識されることはほとんどありません。

そもそも件数すら把握できていない企業が多い

コストを計算する以前に、現場が会社に報告していないため、何件起きているのかを把握できていないケースが少なくありません。
例えば、株式会社ヴァンガードスミスが2026年7月に公表した調査(回答者500名)では、カスタマーハラスメントの被害を受けた従業員の42.2%が「会社や周囲に相談しなかった」と回答しています。
相談しなかった理由として最も多かったのは「誰かに相談しても無駄だと思ったから」で、55.2%を占めました。

同じ調査では、会社が何らかの対応をしたケースでも、「解決していない」「解決したかわからない」という回答が合計で74.0%に達しています。

現場から見ると、報告しても状況は変わらないという結論になっているわけです。
そのため、コストを計算するときは、把握できている件数が実数より少ないという前提で見る必要があります。

クレームやカスタマーハラスメントの件数が正確に把握できていない状態が続いている場合は、早い段階で専門家にご相談されることをお勧めします。
もしお近くに相談できる相手がいらっしゃらない場合は、当社でも無料相談を承っておりますので、お気軽にお声がけください。


企業間取引(BtoB)では、コストがさらに見えにくくなります

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法人を相手に取引をされている企業には、取引先からの理不尽な要求は、担当者が最も報告しにくい種類の問題であるため、もう少し事情が変わります。

取引先からの不当要求は、決して珍しくはありません

株式会社エス・ピー・ネットワークが2025年に実施したカスタマーハラスメント実態調査(回答者1,030名)では、回答者の51.3%が「取引先など法人の顧客から不当要求やハラスメントを受けた経験がある」と回答しています。
実に半数を超える水準です。

要求の内容として上位に挙がったのは、次の3つでした。

  • 威圧的な言動:16.7%
  • 値引きの強要:16.5%
  • サービスの強要:15.0%

暴言や暴力などの形が多い一般消費者(BtoC)からのクレームやカスハラとは違い、BtoBのクレームやカスハラへの対応では、「値引き」や「無償対応」といった具体的なベネフィットを要求されることが多いです。
そのため、対応した時間だけでなく、実際に値引きに応じた金額や無償で提供した役務が、そのまま損失として上乗せされることになります。

失注が怖いから、担当者は報告しません

BtoCのクレームやカスハラであれば、その顧客を失っても事業への影響は限定的なので、会社への報告をそこまで躊躇することはありません。
しかし、BtoBの取引先が相手だと、話がまったく変わります。

報告すれば会社が動き、会社が動けば取引先との関係が悪化するかもしれません。
その結果として発注が減れば、自分の担当売上が落ちます。

こういった構造があるために、営業担当者は理不尽な要求を自分の胸にしまい、無償で引き受けることになってしまいがちであり、経営者から見れば、何も起きていないように見えてしまいます。
しかし、実際には、値引き分や無償対応分と担当者の疲弊が、静かに積み上がっています。
こういった、特定の取引先に合わせた投資をしてしまうと、その投資は他社では使えないため、相手に対して弱い立場に置かれるというという現象は、経済学では「ホールドアップ問題」として研究されてきました。
相手のシステムを覚えた、専属のチームを組んだ、その相手専用の運用ルールに合わせた、といった状況を作るための投資をした後ほど、断りにくくなります。

これら結果、企業間取引におけるクレーム対応のコストは、次の3つが上乗せされることになります。

  • 値引きや無償対応として、直接的に失っている金額
  • 報告されないために記録に残らず、集計そのものができない部分
  • 取引先のニーズに合わせて設備や人材への投資をした額

第1層|対応時間から直接の人件費を計算する

まず計算できるのが、対応に費やした時間に対する人件費です。
必要な数字は「1件あたりの対応時間」と「対応した人の時間単価」の2つだけです。

1件あたりの対応時間には、極端なばらつきがある

UAゼンセンが実施した悪質クレームに関するアンケートでは、迷惑行為1件あたりの対応所要時間について、次のような分布が報告されています。

対応にかかった時間割合
1時間以内61.6%
7日から1か月以内2.8%
半年以上1.3%

過半数となる61.6%は1時間以内に収束しています。
ここだけを見れば、大きな問題には見えないかもしれません。
しかし、問題は残りです。

7日から1か月かかる案件が2.8%、半年以上かかる案件が1.3%存在します。
割合にしては僅か4%ですが、対応コストに換算すると1時間以内の合計である61.6%を上回る可能性があることには、注意が必要です。

ここで重要なのは、平均値で計算してはいけないという点です。
平均対応時間を出して件数を掛けると、実態を大きく下回る数字が出ることになるので、短時間で終わる案件と長期化する案件は、分けて計算しましょう。

時間単価は「給与」ではなく「会社の負担額」で計算する

次に、対応した人の時間単価を出します。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、1時間あたりの賃金を「賃金を所定内実労働時間数で除したもの」と定義しています。
しかし、ここで出てくるのは従業員に支払われる給与額です。
会社が実際に負担している金額は、社会保険料の会社負担分、オフィスの固定費、通信費などが上乗せされるため、これより大きくなります。

管理会計の実務では、給与ベースの時間単価の1.5倍から2倍を会社負担額として見積もる考え方が一般的だと言われています。

また、役職が上がるほど単価は跳ね上がります。
令和5年賃金構造基本統計調査によれば、従業員100人から999人規模の企業における部長級の月額給与は、平均で約59.6万円でした。
時給千円ちょっとのアルバイトが担当していたクレームが、課長や部長にエスカレーションした瞬間、同じ1時間の値段が数倍になる、ということです。

計算してみるとこうなる

実際に数字を入れてみます。
時間単価3,000円の管理職が、1件のクレーム対応に3時間かかったケースです。

項目計算金額
給与ベースの人件費3,000円 × 3時間9,000円
会社負担ベース(1.5倍)9,000円 × 1.513,500円
本来やるはずだった業務の遅れ3時間分の営業活動・判断業務業種により変動

1件ではそれほど大きな金額に見えません。
しかし、これが月に10件あれば、年間で160万円を超えます。
そして、長期化する案件が1件混ざれば、この金額はさらに跳ね上がることになります。

止まった業務の分をどう見積もるか

上の表の3行目には、金額を入れていません。
それは、本来やるはずだった業務が止まった分、いわゆる機会損失だからです。
機会損失は業種や業態によって金額が大きく変わるため、一律の計算式が置けません。

とはいえ、当然ながら無視してよい金額ではありません。
目安として使えるのは、その従業員が1時間あたりに生み出している粗利であり、年間の粗利額を従業員の年間労働時間で割った数値を用います。

営業担当者であれば、より直接的に計算できます。
1件の商談にかかる時間と成約率、平均受注単価が分かっていれば、3時間で失った期待値が出せます。

月に数件のクレーム対応で、商談1件分の期待値が消えている企業は珍しくありません。
数字を出すことで、その数字は管理すべき具体的なテーマになります。
例えば、経営会議で「クレーム対応に時間を取られている」と報告しても議論は動きませんが、「今期、商談◯件分の時間が失われている」と伝えれば、無視することはできません。

第2層|対応した本人だけでなく、周囲の生産性まで落ちる

第1層の計算には、大きな抜けがあります。
それは、対応が終わった後の時間が、まったく計算に入っていないという点です。

理不尽な言動を受けた従業員は、電話を切った後も本来の働き方に戻れません。
これは気合いや性格の問題ではありません。
人が強い言葉を浴びた後、しばらく集中できなくなるのは、ごく自然な反応です。
そしてこの影響がより深刻であるのは、悪影響が、対応した本人だけにとどまらないという点です。
同じ部屋にいた同僚にも、そして次に応対した別の顧客にまで広がっていくことになります。

無礼な扱いを受けた従業員に何が起きるか

この分野には、長期にわたる実証研究があります。
Christine Porath氏とChristine Pearson氏は、14年間にわたり数千人の労働者を対象とする調査を行っています。
その結果は2013年、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に「The Price of Incivility」として発表されました。

職場で無礼な扱いを受けた従業員に起きた変化は、次のとおりです。

無礼な扱いを受けた後の変化該当した割合
その出来事について思い悩み、仕事の時間を失った80%
組織への帰属意識が低下した78%
自分のパフォーマンスが落ちたと実感した66%
相手を避けるために仕事の時間を失った63%
意図的に仕事への努力を減らした48%
意図的に仕事の質を下げた38%
自分のいらだちを顧客にぶつけた25%
無礼な扱いが原因で離職した12%

注目していただきたいのは一番上の数字でであり、80%が「思い悩んで仕事の時間を失った」と回答しています。

席に座って出勤している状態でも、実質的には仕事が進んでいない状態は、健康経営の分野でプレゼンティーズムと呼ばれます。
プレゼンティーズム、欠勤と違って勤怠に記録が残らないため会社からはまったく見えず、ましてやそれがクレームやカスハラの影響と把握することは困難です。
しかし、傍目に見えないだけで、失われている労働時間は実際の対応時間を大きく上回ります。

見ていただけの人にも伝染する

さらに深刻なのは、影響が本人にとどまらない点です。
同じPorath氏の研究では、無礼な振る舞いを目撃しただけの従業員にも次の影響が出ることが確認されています。

  • 目撃しただけの従業員でも、パフォーマンスが25%悪化する
  • 新しいアイデアを出すなどの組織への貢献行動が48%減少する
  • 他者を助けようとする協力行動が、目撃しなかった群の51%に対し25%と半減する

簡単に言うと、クレーム対応をしているのは1人でも、その部署全体が影響を受けることは避けられない、ということです。
クレームやカスハラの内容が周囲の従業員に見える環境であれば、なおさら影響が大きくなります。

他の顧客に八つ当たりが向かう

上の表で、もう一つ見過ごせないのが「自分のいらだちを顧客にぶつけた」の25%という数字です。
この「ぶつけられた」顧客は、元々のクレームやカスハラとは無関係の顧客であり、クレームやカスハラを受けた従業員がたまたま次に応対した優良な取引先です。
つまり、1件のクレーム対応が、別の取引先との関係を損なう連鎖が起きているということになります。

Sliterらが2012年にJournal of Applied Psychologyで発表した研究も、同じ方向を示しています。
顧客からの無礼な言動は従業員の感情的な消耗を強く予測し、それが欠勤の増加と職務パフォーマンスの低下に直結する、という内容です。

この第2層のコストは、金額として請求書には現れません。
しかし、間違いなくサービスレベルを下げ、顧客満足度を悪化させ、売上そのものを削っています。

モチベーション回復に要するコストを加味する

このように、モチベーションを大きく低下させてしまった従業員が、自然にまたやる気を出してくれるということはほとんどありません。
特に、原因がクレームやカスハラであれば、自分が直接被害を受けた訳では無かったとしても、会社のアフターケアや再発防止策などの取組みを見て仕事への熱意を失います。

そのため、従業員がクレームやカスハラに遭ったときは、面談、休憩や休暇、研修の実施、マニュアルやガイドラインなどへの反映、場合によっては医療機関の受診を促すなど、細心のアフターケアが不可欠になります。

これらの一部は、労働施策総合推進法の改正により全ての企業に義務化されたものです。
しかし、十分な体制が整わない中、急なトラブルにより対応が強いられることになれば、計画外の対応が避けられず、その分だけコストが積み上がることになります。

自社の状況を整理するための資料をご用意しています。
現在の対応体制に不足がないかを確認する際にご活用ください。

クレーム・カスハラ対策のマニュアルを無料で進呈します。

第3層|休職と離職が起きたときの金額

最も金額が大きく、そして唯一はっきりと数字になって現れるのが第3層である、従業員が休職または離職したときに発生するコストです。
ここまで来て初めて、経営者はクレームやカスハラへの対応に多額のお金がかかっていたことを知ることになります。

ただし、この時点で分かるのは金額だけです。
辞めた社員が持っていた顧客との関係も、蓄積していた対応の勘所も、一緒に失われることまでは把握できていないことが大半です。
残された社員には業務が上乗せされ、次の離職の引き金になります。

何より、第3層のコストが最も厄介なのは、一度発生すると連鎖しやすいところにあります。

どのくらいの企業で実際に起きているか

厚生労働省の令和4年労働安全衛生調査(有効回答8,144事業所)では、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者、および退職した労働者がいた事業所の割合が、企業規模別に報告されています。

従業員数1か月以上休業した人がいた割合退職した人がいた割合
300人から499人65.3%33.2%
100人から299人46.9%23.6%
50人から99人23.6%9.3%
30人から49人14.1%8.7%

従業員100人から299人の規模では、約半数の事業所で1か月以上の長期休業者が発生しています。
退職に至ったケースでさえ、23.6%もあります。
また、同じ調査では、休職した労働者の復職率は過去3年間の平均で51.9%と報告されています。
つまり、休職した人の約半数は、職場に戻ってきていないということです。

なおこの調査はメンタルヘルス不調全般を対象としたもので、クレームやカスハラへの対応だけが原因ではありません。
ただし、厚生労働省の令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査では、顧客等からの著しい迷惑行為によって被った損害として「労働者の休職・離職」を挙げた企業が22.6%も存在していました。

企業自身が認識している損害の中身

同じ令和5年度の厚生労働省の調査では、顧客等からの迷惑行為による損害として、企業は次の項目を挙げています。

  • 通常業務の遂行への悪影響:63.4%
  • 労働者の意欲・エンゲージメントの低下:61.3%
  • 労働者の休職・離職:22.6%

上位2つは、前章で見た第2層の内容とそのまま重なります。
つまり、企業側も、生産性が落ちていること自体は認識しているわけです。
しかし、認識していながら金額にできていないために、対策の順番が後回しになっているということです。

あわせて押さえておきたいのが、この調査の傾向です。
社内のパワーハラスメントとセクシュアルハラスメントの相談件数は減少傾向にあるのに対し、顧客等からの著しい迷惑行為だけが増加傾向を示しています。
特に、相談があった企業の割合は全業種平均で27.9%ですが、医療・福祉では53.9%、宿泊業・飲食サービス業では46.4%、不動産業・物品賃貸業では43.4%と、業種によって大きく上回っていることには注意が必要です。

1人辞めると、いくらかかるか

離職が発生した場合、欠員を埋めるための採用コストが発生します。
株式会社マイナビの中途採用状況調査によれば、2024年実績で1社あたりの年間中途採用費用は平均650.6万円でした。
採用単価に換算すると、全業種平均で約31.3万円となっています。

ただしこの平均値は、大量採用を行う大企業を含んだものです。
また、業種によっても、採用費用の額は2倍以上も大きく変わります。

業種年間の中途採用費用
サービス・レジャー業438.3万円
IT・通信業998.5万円

やや古い調査になりますが、株式会社リクルートの就職白書2020では、1人あたりの採用コストを新卒93.6万円、中途103.3万円と算出しています。
中小企業は大企業のように母集団を大きく作れないため、1人あたりの固定費を薄めることができません。
つまり、規模が小さいほど採用単価が重くなる構造があります。

さらに、社内でも、採用担当者と面接官の人件費、欠員期間中に止まっている業務、新しく入った人が戦力になるまでの教育工数などが加わります。
1人の離職で失われる金額は、100万円前後からそれ以上と見ておくのが現実的です。

自社の数字で計算する3つのステップ

ここまでの内容を、自社の数字に置き換えていきます。

正確さにこだわる必要はありません。
概算額が分かれば、対策にだいたいいくらかけてよいかの判断ができます。
粗くてよいので、まずは一度、算出してみましょう。

ステップ1|直近1年の件数を、長さ別に数える

まず、直近1年間に発生したクレーム・カスタマーハラスメントの件数を数えます。
このとき、必ず短時間で終わったものと長期化したものを分けて数えてください。
平均で処理すると、コストを大幅に見誤ります。

また、報告書などに残っている案件以外にもトラブルが無かったか、現場にヒアリングをかけることも重要です。
実際、前述のとおり報告されていない案件が眠っている可能性があるため、出てきた数字は少なめに出ると考える方が無難です。

ステップ2|対応した人の時間単価を出す

次に、実際に対応した人の時間単価を計算します。
対応者の年収を年間の所定労働時間で割り、そこに1.5倍を掛けたものを会社負担額とします。
ここで多くの企業が驚くのが、管理職がクレーム・カスハラへの対応に要したコストです。
しかし、管理職の対応コストが高いからといってエスカレーションの基準を高く設定すると、さらなる長期化や従業員の退職に繋がりかねないことには、注意が必要です。

エスカレーションポイントについては、コストの面からも検討するのは当然ですが、今よりも高くする場合は、マニュアルや研修の充実、ヘルプ担当者の設置など、適切なフォロー体制も同時に整備するようにしましょう。

ステップ3|休職・離職があったかを確認する

最後に、直近2年から3年をさかのぼり、クレーム対応の負荷が関係していた可能性のある休職・離職がなかったかを確認します。
該当があれば、その人数に採用単価を掛けます。

このようにして算出したクレームやカスハラへのトータル対応コストは、一次対応に時給をかけた金額とは桁の違う数字になるはずです。
1人の離職が、数百件分の一次対応コストに相当することも珍しくありません。

計算式
第1層(短時間案件の件数 × 平均時間 × 一次対応者の単価)+(長期化案件の件数 × 実際の時間 × 管理職の単価)
第2層第1層の金額に、対応後の生産性低下分と周囲への波及分を加算(休憩や研修に要した実際の時間、または研究データから推定)
第3層休職・離職者数 × 採用単価 + 欠員期間の損失 + 教育コスト

外部に委託した場合と比べてみる

自社のコストが出たら、外部に委託した場合の金額と並べてみましょう。
比較して初めて、今の体制が高いのか安いのかが判断できます。

外部委託の費用相場

コールセンターなどBPOのクレーム対応サービスの費用については、比較サイトや業界メディアなどが情報を公開している場合があります。
統計調査に基づくものではないため目安として扱う必要がありますが、おおよその水準は次のとおりと思われます。

費目相場の目安
初期費用0円から50万円程度
月額基本料(小規模)20万円から40万円前後
月額基本料(中規模以上)50万円以上
超過分料金1時間あたり5千円から1万円

委託元の指示に沿って月間数件程度の一次対応のみを委託する場合で月額20万円から40万円、契約を上回る超過分は従量制が目安とされています。
また、訪問謝罪などはオプションになることが一般的です。

参考までに、弁護士などに対し、委託元の指示によらず交渉を含めて顧客対応を一括して依頼する場合には、着手金として、1件あたり30万円から50万円くらいかかることが多いようです。

金額の比較だけで決めない

月額20万円以上の固定費負担は、中小企業にとって軽い判断ではありません。
ただし、自社の従業員に対応させた場合、従業員が1人離職すれば100万円前後の採用コストが即座に発生するうえ、運良く退職に至らなかったとしても、その間本来業務ができなくなるといったデメリットもあります。
月間20万円の委託費と比較したとき、どちらが高いのかは冷静に見る必要があります。

一方で、すべてを外注すればよいという話でもありません。
外部委託にはノウハウが社内に蓄積されないという明確なデメリットがあります。
顧客の声を直接聞く機会が減ることも、事業改善の観点では損失です。

判断の軸は、次のように整理できます。

  • 件数が多く定型的な一次対応は、外部に出しやすい
  • 取引条件や責任範囲の判断を伴う案件は、社内に残す必要がある
  • 長期化・悪質化した案件は、外部委託ではなく専門家との連携で対処する

自社のどこを外部に委託し、どこを内製で強化すべきかは、業種や取引構造によって変わります。
当社では、自社で対応することを前提に、判断基準や対応フローの整備、マニュアルの作成、相談窓口の構築など、自立的な対応の仕組み作りについて、専門家の支援を受けることをお勧めしています。

お近くに信頼できる専門家がいない場合は、当社でも承っておりますので、お気軽にお声がけください。

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コストを下げるために、先に手を付けるべき3つのこと

コストが計算できたら、次はそのコストを下げる番です。
費用対効果が高い順に3つ挙げましょう。

クレームやカスハラへの対応コストは、その企業によって異なるため、まずそれを見極めることが重要です。
研修やマニュアルの整備は、その後で構いません。
優先順位を考えずむやみやたらに手を出したとしても、自社の実態に合った対策ができていなければ、効果は薄いからです。

クレームやカスハラのボトルネックを早く見つける

貴社のコストに最もインパクトを与えているクレームやカスハラは、具体的にどのような内容であるか、まずは冷静に振り返りましょう。

例えば、前述の「1時間以内」に終息する61%の大半を、似たようなクレームやカスハラが占めている場合、業務フローやマニュアルの見直しでロジックエラーを減らし、この61%に直接的なアプローチをすることが最も効果的です。

一方、クレームやカスハラの類似性が低く、その中の一部が前述の長期化する4%に繋がっている場合は、ヒューマンエラーを減らし個別の対応能力をブラッシュアップすることで、長期化を防ぐことが最も効果的です。

このように、クレームやカスハラへの対策は、自社のボトルネックによって効果が大きく異なるため、数字で判断することが不可欠です。
また、数字で判断するのは、担当者を守るためでもあります。
主観に任せると「まだ自分でなんとかできる」と考えて抱え込み、報告が遅れがちです。
報告が無ければ、上司はボトルネックを把握できず、結果、連鎖退職や個客満足度の低下など深刻な問題が起きるまで、対策が的外れである事にも気付けないということにもなりかねません。

数字は、最初は粗くて構いません。
運用しながら、自社の実態に合わせて調整していけば十分です。
大切なのは、数字に基づいてボトルネックを特定する習慣を作っていくことです。

打ち切りの基準を先に決めておく

どこまで対応するかを決めていない企業では、終わりが相手次第になってしまいます。
そのため、平時のうちに、どのような要求であれば応じられないのかを文書にしておくことが重要です。
文書があれば、担当者は現場で迷うことなく、会社の方針に基づいて対応し、対応を打ち切ることができます。

事業内容にもよりますが、例えば、金銭の要求に応じる基準、対応する時間帯と回数の上限、担当者個人への攻撃があった場合の扱いなどが決まっていれば、現場は動くことができます。

そして、決めた内容は、必ず経営者がトップダウンで従業員に表明しましょう。

一次対応の範囲を明確にする

担当者が「どこまで自分で答えてよいのか」を分かっていないと、何から何まで持ち帰ることになり、二度手間になりかねません。
逆に、権限を超えた回答をしてしまえば、後から取り消すことになり事態が悪化します。

一次対応の範囲を明文化することは、正当なクレームに対する適切な対応に繋がるので、答えてよい範囲、確認が必要な範囲、上位者にエスカレーションする範囲の3つだけでも明確にしておきましょう。

返金や値引きのように金額が動くもの、契約条件に触れるもの、他部門の判断が要るものなどは、一次対応の範囲から外す法が無難です。
一法、事実確認や謝意の伝達、次の連絡予定の案内は、一般的に、担当者がその場で答えてよい範囲です。

よくあるご質問

クレーム対応にかかる費用はいくらですか

外部に委託する場合の費用と、自社で対応している場合のコストは、分けて考える必要があります。
月に数件をBPOとして外部委託する場合は、一次対応のみで月額20万円から40万円以上が目安とされています。

モチベーション回復に要するコストや採用や育成に要するコストまでを考えた場合には、多くの企業では自社対応のほうが金額が大きくなるようです。

クレーム対応でやってはいけないことは何ですか

様々な考え方があると思いますが、当社では、その場を治めるために顧客の言い分を受入れ、従業員に責任が無いにも関わらず謝罪を命じるようなことは、絶対にやらないようにお伝えをしています。

こういった対応をした企業には、以前から、安全配慮義務違反で損害賠償請求が認められた判例があります。
また、労働施策総合推進法の改正により、令和8年10月1日から、全ての企業でカスハラ対策が義務化されたことで、今後はさらに、企業側が従業員を守るために対応をしたことが重視されることになります。

そのため、クレームやカスハラが発生した際に従業員に理不尽な謝罪を強要することは、予め講ずるべき対策を講じないことと同様、企業にとって大きなリスクとなります。

クレーム対応が上手い人の特徴はありますか

対応が上手い担当者に共通しているのは、以下の5点です。

  • 冷静で感情的な反応をしない
  • 人の気持ちの機微を理解している
  • 誠実で責任感がある
  • 論理的に思考できる
  • 慎重かつ堅実である

また、自分の判断で抱え込まず、会社としてのルールに沿った対応をすることも大きな特徴です。
詳細は、下記のコラムで詳しく解説しています。

まとめ|数字にすれば、優先順位は変わります

クレーム対応のコストは、3つの層に分かれています。

第1層は対応時間に対する人件費で、これは計算すればすぐにわかります。
第2層は対応者と周囲の生産性低下で、研究データによれば本人の80%が思い悩んで時間を失い、目撃した周囲も25%パフォーマンスが落ちます。
第3層は休職と離職で、1人あたり100万円前後の採用コストが発生します。

多くの企業が認識しているのは第1層だけです。
そのため「担当者ががんばれば済む話」として扱われ、対策の順番が後ろに回されて来ました。
しかし、実態に合ったコストを算出するためには、まずは直近1年分でも良いので、第2総と第3層も含めて、数字を可視化してみましょう。
数字が出た時点で、この問題が経営課題であることがはっきり分かると思います。

とはいえ、自社だけで対応体制を組み直すのは簡単ではありません。
どこまでを社内で持ち、どこから外部の力を借りるかという判断には、内部の論理にとらわれない客観的な視点が必要になります。

自社のコストを計算してみて数字に驚かれた場合は、そのまま抱え込まずにご相談ください。
初回のご相談は無料で承っております。

クレーム・カスハラへの相談はProClaim合同会社まで

まずは資料で情報を集めたいという方は、こちらもあわせてご覧ください。

クレーム・カスハラ対策のマニュアルを無料で進呈します。