悪質クレーマーの電話は着信拒否できる?元コールセンターマネージャーが解説

クレーマーやカスハラからの電話の着信拒否
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中小企業診断士(経済産業大臣登録)
ProClaim合同会社 代表社員・花村憲太郎
クレームやカスハラを減らすだけでなく、顧客満足度を高めます。
元コールセンターの品質管理チームマネージャーで、3,000件以上の対応経験に基づいた、実践的で再現性の高いノウハウを持つ専門家です。
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コールセンターなど電話対応では、「クレーム・カスハラが多い」「揚げ足取りばかり」というイメージを持っている人がいます。

例えば、弁護士ドットコムが2025年3月に行った『カスハラの加害・被害の実態についてのアンケート』では、カスハラ加害者がカスハラ(カスタマーハラスメント)をした場所は、電話オペレーターが44.4%と圧倒的多数を占めていました。

実際、筆者も電話のクレーマーやカスハラについて、「着信拒否して良いの?」「どうやって拒否するの?」「更にトラブルになることはないの?」などと相談を受けることがあります。

店舗における来店拒否(立入禁止)と同様、電話対応でも、クレーマーやカスハラ加害者に対し着信拒否をすることは問題ありません。

ただし、適切な組織的プロセスを経て着信拒否しなければ、かえって炎上することになりかねません。

そこで本コラムでは、コールセンターの元品質管理チームマネージャーである中小企業診断士が、電話での悪質クレーマーやカスハラ加害者の対応を3ステップで解説します。

本記事は「電話対応スキル」ではなく、経営者が整えるべき“組織の仕組み”に特化 しています。
電話対応に関する具体的なスキルなどは、別記事「スキル編」で解説しています。

【スキル編】はこちらからご覧ください。

着信拒否は強力な手段だからこそ、判断を誤るとリスクになります。
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悪質クレーマーの電話は着信拒否できる?元コールセンターマネージャーが解説

対面と電話の違いから考える“対応拒否の3ステップ”

対面カスハラの場合、複数名で対応し、悪質であれば来店拒否し、それでも再来店して来たら相手の姿が見えた時点で警備や警察を呼ぶこともできます。

しかし、電話の場合は基本的に1対1であり、来店拒否はできず、しつこく迷惑電話をかけて来たとしても非通知なら出るまでは相手が誰か分からないため、対面に比べて対応拒否がし難い、と思われがちです。

実際、こちらから一方的に電話を切るだけでは、すぐにかけ直されるだけで、何の解決にもなりません。

しかし、必ずしも電話では拒否できないかというと、そういう訳ではありません。

以下のような対面との違いを踏まえたうえで適切に対応することにより、電話でも確実に“対応を拒否すること(着信拒否)”は可能です。

ステップ1|電話対応の拒否(=お客様扱いを止める)

ステップ1としては、顧客の言動がカスハラに該当すると組織として判断をした時点で、お客様扱いを止める、というものです。

これは、対面でいう「サービス停止」に相当し、例えば、「お客様が先ほどから口にされている“死ね”などの人格攻撃はカスハラだと判断です。直ちにお止めいただけなければ、対応を終了します」などと警告します。

また、対応拒否は”組織として”の判断であるため、予めカスハラに該当するか否かの判断基準を整理しておくとともに、状況によっては責任者から対応拒否を通達しましょう。

ステップ2|着信拒否(=対応自体を止める)

警告してもカスハラ行為を続ける場合は、ステップ2として、着信拒否を宣言します。

これは、対面接客でいう「入店禁止」に相当し、例えば、「カスハラ行為をお止めいただけない以上、誠に残念ではございますが、対応を終了させていただきます」などと言って電話を切り、着信拒否を設定します。

着信拒否は、その電話番号からの着信自体を完全に遮断できるため、強行来店ができる対面接客の来店拒否よりもはるかに強力です。

反面、注意点としては、以下の2点を抑えておく必要があります。

  • 電話を切ってから着信拒否するまでの間に再入電があると拒否できない
  • 拒否完了後も、別な電話番号から入電されると拒否できない

そのため、後段で詳述しますが、上記のような入電に備えて情報共有や回答の統一など、予め組織的な対策を講じておくことが、着信拒否運用を成功させるためには不可欠です。

ステップ3|警察への被害届(=刑事対応)

着信拒否をしても尚も別番号から入電し、カスハラを続けて来る場合は、基本的にはその別番号も着信拒否してしまいます。

ただし、電話を全て拒否すると、場合によっては相手に乗り込まれる可能性があることには注意が必要です。

実際、筆者も勤務時代、朝礼中にクレーマーに乗り込まれ、身の危険を感じたことがありました。

そのため、繰り返し電話がかかって来る場合や、脅迫的な言動をして来る場合には、着信拒否だけでなく、脅迫罪や威力業務妨害罪で警察に相談することをお勧めします。

なお、警察への相談を視野に入れる場合は、予め以下の2点を抑えておくことで、証拠に残しやすく、現場での迷いも減らすことが可能です。

  • 録音機能付きの電話機を導入し、録音の仕方を共有しておく
  • 組織として「どのラインで警察に相談するか」を事前に決めておく

電話カスハラに対する着信拒否の3つの方法

対面クレームの場合には、来店拒否をされてもまた来られてしまえば、それを力づくで排除することはできず、最終的には弁護士や警察に相談せざるをえません。

しかし、電話の場合は、着信拒否に設定することで簡単に再訪を防ぐことができます。

度を超えたカスハラが延々と続く場合などは、来店拒否と同様、着信拒否を検討しましょう。

電話機の迷惑電話拒否機能

迷惑電話拒否機能付きの電話機の場合、本体操作だけで着信拒否が設定でき、一番簡単に対応できます。

ポイントは、以下の2点が挙げられます。

  • 安価で簡便である
    2026年4月現在Amazonでは、数百件の着信拒否と録音機能の搭載された国内メーカー製電話機が1万円だいで販売されており、操作も、高齢者でも対応できる簡単なものです。
  • 非通知の着信は拒否設定できない
    ただし、「非通知拒否機能」の搭載機の場合は、ナンバーディスプレイ契約と併用することで非通知を拒否することもできます。

NTT「迷惑電話おことわりサービス」

NTTの固定電話をお持ちなら、迷惑電話おことわりサービスを利用することも有効です。

特徴は、以下の2点が挙げられます。

  • 電話機の機能に依存せずに着信拒否を設定できる
  • 非通知も着信拒否に設定できる

操作方法も簡単で、カスハラ電話の終了後に受話器をあげて144をダイヤルし、2を押下するだけで拒否設定が可能です。

なお、費用としては、工事料(2026年4月現在、3,300円 / 回線)や月額使用料が発生します。

NTT東日本:迷惑電話おことわりサービス

フリーダイヤルの拒否設定(カスコン)

NTTでフリーダイヤルをご利用の場合は、カスターコントロール(カスコン)からの設定で、追加料金無しで着信拒否を設定することが可能です。

特徴は、追加料金無料で1,000件まで登録でき、着信履歴からと電話番号からの両方の登録に対応しており、オリジナルガイダンスを登録できるなど、比較的自由度が高い点です。

反面、複雑で、間違えて捜査すると電話対応システム全体に影響が出てしまうので、注意が必要です。

NTTドコモ ビジネス:カスタマコントロール – ナビダイヤル

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着信拒否後の社内共有と“統一回答”の作り方

着信拒否は、組織としてそのユーザーからの着信を拒否するという非常に強硬な対応です。

そのため、着信拒否を設定するに際しては、担当者がその場で判断するのではなく、組織としての統一した基準に基づいて、必ず責任者が確認・判断するプロセスを持つようにしましょう。

拒否前に必ず確認すべき3項目

大前提として、企業に契約自由の原則に基づき、原則として顧客を選ぶ権利があります。

そのため、電話の場合であっても、悪質なクレーマーやカスハラと判断した場合は、その相手からの電話を着信拒否することは、企業の判断として問題ありません。

そして、電話対応の着信拒否は、電話機やPCの操作だけでほんの1~2分で設定でき、設定したらその番号からの着信は確実に防ぐことができます。

この点は、お客様に通告し、実際に退店させ、そして再来店を防ぐ必要のある対面接客に比べ、はるかに簡単で確実です。

着信拒否は、組織としてその相手からの着信を拒否するという非常に強硬な対応です。

ですから、拒否設定する際は、以下のようなポイントについて、組織として慎重に検討することが不可欠です。

  • 組織としてのカスハラや着信拒否基準に該当するか
  • 他の顧客と同様、通常すべき対応はしているか
  • 継続中の契約・債務不履行リスクはないか

債務不履行となるリスクに注意する

前項で伝えた3つ目の項目「継続中の契約・債務不履行のリスク」については、特に注意が必要です。

これは例えば、自社が注文を間違えたことが発端でカスハラになった場合、カスハラだからと一方的に着信拒否しサービスを停止してしまえば、債務不履行ということになりかねません。

単純な商品売買であっても、それはカスハラとは別問題であり、カスハラを受けたからと一方的に解約することには極めて深刻な検討が必要です。

不用意に着信拒否することで、SNSや口コミサイトなどに「あそこの店は、大事なチラシに誤植しといて、ちょっと怒ったらカスハラだって着信拒否しやがった」「自分のことは棚に上げて最悪、絶対契約しない方が良い」などと吹聴されたら、信用問題になりかねません。

そのため、基本的には、それはそれ・これはこれでカスハラを止めるように要請していくことになりますが、カスハラが止まない場合に、着信拒否にするかどうかについては、法務部門などに確認して慎重にすることをお勧めします。

別番号・別窓口からの再接触への備え

着信拒否は、番号単位・回線単位での着信拒否です。

そのため、拒否した番号と別な番号から電話をかけて来たり、別な窓口に電話をかけて来られた場合には、問題無く繋がってしまい、「なぜいつも繋がらないんだよ!?」「電話するとこの番号からはお取次ぎできませんって流れるけど、着信拒否してんのか!?」などと詰め寄られると、答えに窮することになります。

そこで、着信拒否を設定したら、必ず、そのことを関係部署などに共有しておきましょう。

統一回答テンプレートの用意

電話対応部門内では、拒否設定に関する質問については、以下のような統一回答を用意しておくことも有効です。

  • 「なぜいつも繋がらない!?」と問われたら
    ➡「もうしわけありません。詳細は分かりませんが、混雑などだったと思われます。」
  • 「着信拒否してるのか!?」と問われたら
    ➡「着信拒否する場合もありますが、社内運用なので、お応えはしておりません。」

必要以上の情報を与え過ぎず、嘘もつかず、感情的にもならない、バランスの取れた回答をテンプレートとして予め窓口担当者に共有しておきましょう。

着信拒否の前に整えるべき“組織の仕組み”

電話のクレーマーやカスハラに対し、着信拒否は非常に有効な手段ではありますが、明確な定義や対応ルールを決めておかなければ、現場は迷ったり躊躇したりすることになり、着信拒否ができません。

また、現場に権限を与え過ぎると、正当なクレームまで着信拒否してしまう可能性もあります。

そこで本項では、適切に着信拒否を運用するために必要な、組織的な対策について解説します。

カスハラ定義と基本方針(ガイドライン)の作成

電話対応の場合でも、最初に整備するのはガイドラインです。

ガイドラインにより、カスハラの定義や具体例などを明文化し、組織全体で共有することが、全ての対応の出発点になります。

ガイドラインにどこまで詳細に盛り込むかは、その組織の考え方によりますが、着信拒否を想定した場合は、以下の2点を盛り込むことをお勧めします。

  • 具体的にどのような行為をカスハラと捉えるかの例示
  • カスハラに遭った場合は対応を中止し、以降対応をしない

なお、当社ではガイドラインを作成する際には、不当クレームやカスハラへの対応だけでなく、自社の実態を調査したうえで、顧客対応の在るべき姿を明文化することをお勧めしています。

カスハラやハードクレームへの対応に偏重したガイドラインだと、どうしても、お客様の言動をそれに当てはめるように考えてしまい、正当なクレームも排除する方向に作用してしまいがちです。

そうならないように、バランスの取れたガイドラインを作成しましょう。

初期対応フローの標準化(正当/不当の見極め)

電話は対面と違い、手元で資料を見ながら対応することができます。

そのため、対応フロー図やそれに合わせたトークスクリプトを作ることは、クレーム対応の標準化にとって非常に効果が大きく、漏れや間違いを予防し、担当者による対応の違いを平準化することができます。

特に、正当なクレームなのか不当なカスハラなのかまだ分からない初期段階において、対応フローを統一しマニュアル化しておくことは、安易な対応による炎上や正当なクレームの排除を防ぐためにも、極めて重要な取組みです。

電話カスハラのエスカレーション基準の明確化

上司に対応方針を相談するとき、ただ「怒っているから」と相談されても判断のしようがありません。

そのため、質問をする際には、最低限、何をどの程度確認するか組織のエスカレーションルールとして決めておくことで、質問しやすく回答しやすい環境を作りましょう。

一方、同じエスカレーションでも「上司を出せ!」「社長を出せ!」などの交代系については、あまり簡単に交代すると、業務を止めてしまうだけでなくクレーマーに「押せば通る」と学習されてしまうことになります。

そのため、交代する場合を明文化しておくとともに、交代要求をお断りする場合についてのトークスクリプトも用意しておくと、いざという時に迷わずスムーズに対応できます。

本記事は「電話対応スキル」ではなく、経営者が整えるべき“組織の仕組み”に特化 しています。
電話対応に関する具体的なスキルなどは、別記事「スキル編」で解説しています。

【スキル編】はこちらからご覧ください。

まとめ|着信拒否は“逃げ”ではなく、組織を守る経営判断です

悪質な電話カスハラは、担当者の精神を削り、業務を止め、離職につながる深刻な経営リスクです。

そして、着信拒否は合法的に可能であり、企業が従業員を守るための正当な手段です。

ただし、強力な手段だからこそ、 「どの段階で、誰が、どう判断するか」 を決めておかなければ、現場は迷い、対応が遅れ、逆に炎上するリスクもあります。

電話は、匿名性が高く、対面に比べ気楽にアクセスできるため、放置しても自然にクレーマーやカスハラが減ることはありません。

むしろ、対応できる人がいる組織ほど、悪質な相手に狙われ続ける傾向があります。

従業員が疲弊して辞めてしまう前に、 経営者が「組織として守る仕組み」を整えることが必要です。

電話のクレーマーに従業員が悩まされている方は、従業員が疲弊し退職してしまう前に、着信拒否を含めた対策フローの構築を強くお勧めします。

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