BtoBカスハラの“気づかない加害”とは?加害者側の重大リスクと対策を専門家が解説
| この記事は【加害者側の対策】について解説しています。 |
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BtoB(企業間取引)カスハラは「一部の悪質な企業だけの問題」と思われがちですが、実際にはごく普通の業務の中で、意図せず加害者になってしまうケースが最も多いのが現実です。
特に、中小サービス業では、現場の指導や取引先とのやり取りが日常的に多く、その“当たり前の対応”が相手企業から見るとカスハラと受け取られることがあります。
例えば、KPI未達への叱責、短納期の要請、担当者個人への確約依頼──いずれも「業務上の必要な指示」のつもりでも、相手が負担や圧力を感じれば、通報の対象になり得ます。
つまり、BtoBカスハラの加害リスクは、“悪意”ではなく“気づかないままの行動”から生まれます。
そして、加害行為に該当する場合は、「下請法」「独禁法」に抵触する可能性があることに注意が必要です。
だからこそ、まずは「自社も加害者になり得る」という前提を持ち、どこにリスクが潜んでいるのかを知ることが重要になります。
そこで本コラムでは、加害者側のリスク、自社だけでは線引きが難しい理由、そして最小限で効果の高い対策について、順を追って解説していきます。
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BtoBカスハラの“気づかない加害”とは?加害者側の重大リスクと対策を専門家が解説
BtoBカスハラ加害者側の“3つの重大リスク”と企業間トラブルの実例
カスハラ対策は、被害対策にばかり注目されがちですが、BtoBカスハラの場合は、加害者認定された場合の方がビジネスへのインパクトが大きくなる可能性があります。
取引停止・契約解除:最も深刻な“経営インパクト”が直撃するリスク
一度、「加害者」として認定されると、関係修復には膨大なエネルギーを要します。
組織的な関与が全く無く、担当者の暴走だったとしても、監督不行き届きに対して経営幹部の謝罪や組織的な再発防止策の構築は欠かせません。
また、明示的なものでは無くても、組織の目標達成圧力が遠因になっていた場合などは、組織体質が原因だと捉えられ、取引停止・契約解除となる可能性もあります。
自社が発注側でも、取引停止・契約解除は極めて深刻な影響を与えかねません。
委託先の選定や発注にも膨大な時間を要しますし、カスハラで関係を悪化した取引先が引継ぎに非協力的になってしまった場合などは、一からやり直しならまだ良い方で、最悪の場合は訴訟沙汰も免れません。
損害賠償・法的責任:下請法・優越的地位の濫用に該当する可能性
カスハラが認められたら、損失補填や損害賠償を求められることもあります。
そういった場合に、是正と継続発注を背景に賠償を免じるように交渉するケースが耳にすることもありますが、そのような対応はお勧めできません。
「カスハラをした挙句、賠償額を値切った」と受け取られると、会社同士では解決したことになっても、名誉感情を侵害された現場の士気は回復せず、健全な関係になることは困難です。
また、BtoBのカスハラは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)第4条の禁止行為や、独占禁止法第2条第9項に定義される「優越的地位の濫用」に該当する可能性もあります。
これらは匿名でも通報でき、前者は行政処分や罰金の可能性が、後者は行政処分の他に法人や個人に対し刑事罰が科される可能性もあります。
企業イメージの毀損:口コミ・業界ネットワークで“静かに広がる” reputational risk
自社にカスハラ行為が認められた場合、その情報が、取引先ネットワークなどで共有されることにより、企業イメージやレピュテーション(評判)が毀損される可能性もあります。
BtoBは一般的に、BtoC商材のような口コミサイトが無く、特に個別取引におけるトラブルを投稿できるような有名プラットフォームはほとんどありません。
しかし、業界のネットワークなどで情報が共有さることまで止めることはできませんし、加害企業側が誠実な対応をしなければ、被害企業側の恨みが消え去ることはなく、拡声器になる可能性もあります。
また、カスハラや個別トラブルを投稿できるようなプラットフォームはありませんが、転職サイトの口コミ欄やGoogleの口コミなどに、スタッフから書き込みされる可能性はあります。
そういった投稿を削除するのは困難であり、採用や営業に悪影響が生じることになりかねないので、注意が必要です。
委託先や取引先と“企業間トラブル”へ発展する典型パターン
BtoBカスハラは、単なる担当者間の行き違いでは終わらず、企業間トラブルへ発展しやすい構造を持っています。
特に中小企業では、企業間の力関係に大きな落差があるため、現場の叱責や短納期の要請といった“通常業務”が相手企業にとっては圧力や不当要求と受け取られやすく、双方の認識ギャップが大きな火種になります。
そして、担当者同士の感情的対立がエスカレートすると、組織対組織の問題へと拡大し、契約見直し・取引停止・損害賠償請求など、経営に直結するリスクが一気に顕在化します。
こうした企業間トラブルは、「悪意」ではなく「認識のズレ」から生まれることが多いため、早期に第三者の視点を入れ、事実関係と線引きを整理することが最も効果的です。
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BtoBカスハラが“自社だけで対策できない”3つの理由
BtoBカスハラで加害者にならないことは、場合によっては被害者にならないようにすることよりも難しく、自社だけで有効な対策をすることは困難です。
正当な指導とカスハラの“境界線”が曖昧で判断が難しい
まず挙げられる理由は、正当な指導・要請とカスハラとの境界線が曖昧になりがちなことです。
例えば、筆者が以前コンサルティングしたコールセンターでは、応答件数の低迷に対しクライアントから厳しい叱責を受けていましたが、応答件数が低迷はビジネスにネガティブなインパクトを与えるため、改善を要請すること自体は正当な行為です。
問題は、その要請の内容や伝え方が時間の経過とともに極めて厳しくなっていったことです。
こういった構造は、システム開発や店舗のリフォームの場合も同様であり、工期の遅れはビジネスに深刻なインパクトを与えるため、どうしても厳しく是正を求めることになり勝ちです。
そういった行為は、発注側として当然の指導・要請です。
そのため、それらがBtoBのカスハラに該当するか否かについては、指導・要請の内容、伝え方、契約内容、業務内容などを踏まえて判断する必要があるため、線引きが極めて難しくなりがちです。
社内通報が機能しない構造:心理的安全性が確保されにくい
BtoBカスハラの加害者側では、社内通報制度による加害事実の把握は極めて難しいです。
理由としては、以下のようなことが挙げられます。
- 上司が加害者の場合、部下は通報に躊躇してしまう
- 組織的なプレッシャーが強い場合、通報窓口自体を信頼できない
- 「誤解だったらどうしよう」という不安が足かせになる
そのため、相談窓口を経営層直結にしたり、客観性を担保できる専門家など第三者に相談窓口を移管したり、といったことも考えられます。
ただし、その場合でも、相談窓口設置の背景や、どのような者が相談に応じるかを周知するとともに、相談をした労働者に対し不利益取扱いをしないことを表明することが欠かせません。
なお、カスハラの相談者に対する不利益取扱いの禁止は、今般改正された労働施策総合推進法でも定められており、違反した場合は指導、勧告、企業名公表などの行政処分の対象になる可能性があるので注意が必要です。
第三者性の欠如:自社だけの改善では取引先の信頼を得られない
一度カスハラが明らかになると、加害企業が独自の改善策を講じても、客観性が確保されていないと取引先の納得を得るのは簡単ではありません。
特に、モニタリングなどの自浄機能を導入する場合は、外部の専門家の関与があるかどうかは、信頼性に大きく影響します。
しかし、この「第三者性」の確保は、決して簡単ではありません。
例えば自社の顧問弁護士に参加してもらっても、しょせんは加害者側の顧問弁護士なので、客観的であるとはなかなか思ってもらえません。
反対に、加害者側の弁護士が出て来ることで、被害者側も弁護士が出て来るなど態度が先鋭化し、交渉が困難になってしまう可能性さえあります。
当社が参加する場合も、「第三者性」を確保するためには、契約段階から細心の注意をしています。
| 正当な指導とカスハラの境界線は、社内だけでは判断が困難です。 第三者が入ることで、取引先にも説明できる“客観的な線引き”が可能になります。 ▶自社のリスクを相談する。 |
BtoBカスハラ加害者側の3つの対策”
BtoBのカスハラについて、加害者側の対策としては、大きく、事前対策、発生時対策、専門家活用の3点が挙げられます。
非常に基本的なものですが、上記の3つの対策を適切に行うことで、カスハラが起こりにくく、万が一起こっても速やかに把握できる環境・関係性へと繋がります。
事前対策:兆候を早期に把握する“報告が上がる仕組み”の構築
まず挙げられるのが、社内で報告が上がりやすい仕組みを作ることです。
具体的なカスハラになってしまう前に、兆候の段階で把握し、是正することができれば、加害者側だけでなく被害者側にとってもベストです。
ただし、カスハラについては、前述の通り、一般的な社内通報窓口では報告が上がりにくいため、ただ相談窓口を設置しただけでは、カスハラの事実を把握することは困難です。
そのため、以下のような対応をすることが不可欠です。
- 匿名通報を可能にする
- 不利益取り扱いをしないことを周知する
- 上司ルート以外にも相談窓口を設ける
- 取引先からの通報も可能とする
発生時対応:取引先の通報には誠実かつ“事実確認優先”で対応する
取引先からカスハラに対する調査の協力依頼があったら、必ず、誠実に確認します。
改正労働施策総合推進法でも、協力については定められています。
この「協力」は努力義務ではありますが、協力を拒否しても事態を把握することにはつながらず、リスクが高まる一方です。
誠実に調査に協力したうえで、違うものは違うとし、是正するべきものは是正しましょう。
注意点としては、以下のようなことが挙げられます。
- 事実確認を優先
- 感情的な反論はNG
- 処分は全て確定した後
特に「処分」については、カスハラの内容によっては、担当者やその上司に対し社内規程に基づく制裁人事や、企業間の損害賠償、場合によっては刑事処分を受ける可能性もあります。
そのため、改善は早期に着手しますが、処分については、客観的な事実関係や証言を確認し、事実関係が確定してからにしましょう。
再発防止:第三者専門家の関与で“客観性と信頼性”を担保する
再発防止策を講じる際は、できるだけ、第三者の専門家に参加してもらうことをお勧めします。
その中でも、当社では特に、以下の3点をお勧めしています。
- 第三者調査
- 共同研修
- 共同ガイドライン作成
このような取組みは、開発や業務委託など、長期的な業務においては特に有効です。
研修やガイドライン作成を共同で行うことは簡単ではありませんが、根本的な改善が無ければ不可欠な取組みであり、それに取り組む姿勢を示すことは、被害者側企業との信頼回復に大きく影響します。
また、その際に、信頼できる専門家にプロジェクトマネージャーを依頼し、客観的な視点から取り纏めをしてもらうということも有効です。
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【事例紹介】取引先と良好な関係を築くために
厚生労働省が公開した『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』では、BtoBカスハラについて、以下のような事例を紹介しています。
取引先と良好な関係を築くための好事例
同マニュアルでは、取引先と良好な関係を築くための好事例として以下を紹介しています。
- 取引先はパートナー企業、取引先からの派遣従業員はパートナー従業員と呼び、自社従業員と同様に扱っている。
- 会社として、各取引先にアンケートを実施している。回答企業は無記名とし、「自社の社員が暴言をはいていませんか」等の設問を設け、問題のある部署はヒアリングを行うようにしている。
- 企業の行動指針として「取引先との関係」の項目を設け、自社従業員に他社従業員への接し方の注意について周知している。
- 被害者だけでなく、加害者にならないよう、コンプライアンスという観点で教育している。また、Eラーニング等を通して商習慣の中で過度な要求がないよう、取引先への伝え方等について指導している。
職場における実態の把握
同マニュアルでは、職場における実態の把握の重要性について以下のように述べています。
「本取組は、カスタマーハラスメントにつながる予兆を把握し、未然防止につなげるという重要な役割を果たします。例えば、過去にハラスメントまでは至らなかったが、当該顧客が複数回のクレームを申し出ていたといったものや、混雑や騒音が激しい等の顧客が不満足になる兆しがあった等の状況を把握し、ハラスメントが発生する前に対処することが重要と考えられます。」
BtoCを想定したものと思われますが、起こってから受動的に対処するのではなく、起こる前に能動的に状況を把握し、予め対処・対策を講じることの重要性は、BtoBも同様であると考えます。
BtoBのカスハラは、1ユーザーが起こすBtoCカスハラに比べ被害規模が大きく、損害賠償や関係回復などに膨大なエネルギーを要します。
そのため、日頃から自社の状況を把握し、カスハラが発生する前に対処しましょう。
まとめ:加害者にならないための“最初の一歩”
BtoBのカスハラは、悪意ある企業だけが起こすものではなく、日常業務の中で“気づかないまま”発生するケースが最も多いという点が最大のリスクです。
KPI未達への叱責、短納期の要請、担当者個人への確約依頼など、どれも一般的な業務のつもりでも、相手企業から見ればカスハラと判断され、通報につながる可能性があります。
そして一度「加害者」と認定されると、取引停止・契約解除、損害賠償、企業イメージの毀損といった経営に直結するダメージが一気に顕在化します。
また、正当な指導との線引きが難しく、社内通報制度も機能しにくいため、自社だけでの対策には限界があるのが実情です。
だからこそ、“第三者の視点”を取り入れ、リスクを客観的に確認することが、効果的な第一歩になります。
「自社は本当に大丈夫か?」と少しでも不安を感じたら、まずは無料相談で現状を整理し、必要な対策の方向性を明確にしてください。
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