クレーム・カスハラを「受けやすい人」「受けにくい人」の特徴5点を解説

クレーム、カスハラ、受けやすい、受けにくい

クレームやカスハラについてお話しを聞いている中で、「クレームを起こす人は起こすけれど、起こさない人は起こさない」「起こす人は、何度言ってもクレームが無くならないから、もう諦めている」「明確に悪いことをしてる訳じゃないけどなぜかいつもクレームになるのは、結局、その人の問題」など、個人の問題だと考えている方に出会うことがあります。

確かに、筆者の経験としても、クレームやカスハラを「受けやすい人」と「受けにくい人」は、明確にいると感じています。一方、クレームやカスハラを「受けにくい人」の特徴は、カスハラを躊躇するような圧倒的な体格や、どのような状況にも対応できるような知性などの先天的な特長ではありません(それらがあれば良いですが)。大半は、「ちゃんとした感じ」や「気持ち良い印象」といった、後天的に習得できる特徴です。それらの特徴は、男女や年齢などと無関係であり、誰でも後天的に見に付けられる要素です。

そこで今回は、クレームやカスハラを「受けやすい人」「受けにくい人」の特徴を具体的に解説します。

クレーム・カスハラを「受けやすい人」「受けにくい人」の特徴5点を解説

社会人としての基本的なマナーができている人は、クレームやカスハラを受けにくい

結論から伝えると、業種や職種を問わず、社会人としての基本的なマナーができている人は、クレームやカスハラを受けにくいと言えます。具体的には、外見、態度、知識、声や話し方、顧客志向などが与える印象が良い人は、クレームやカスハラを受けにくいです。

要素受けにくい人受けやすい人
外見清潔感があるだらしない
態度笑顔、謙虚、毅然、テキパキしかめ面、傲慢、おどおど、ダラダラ
知識知識豊富で説明も分かり易い知識不足で、説明も分かり難い
声や話し方ハキハキ、明確、分かり易いぼそぼそ、曖昧、分かり難い
顧客志向受け止め、共感、代替案を考える他人事、マニュアル通り、言い訳ばかり

以下、クレームやカスハラを受けにくい人の特徴を、具体的に見て行きます。

【外見】外見次第で第一印象の良し悪しが決まる

しわの無い清潔な服装、整った髪型やメイク、といった外見は、ただそれだけで“きちんとした人”に見えるため第一印象が良くなり、カスハラに遭い難いです。
反対に、髪がボサボサでフケが見えたり、シャツがよれよれだったり、匂いがしたりといった外見だと、元々、商品やサービスに対してご不満をお持ちのお客様から、「なんだそのだらしない態度は!」「真面目に対応するつもりがあるのか!?」と、標的にされやすいです。そのため、誰でもぱっと見で分かる外見を整え、第一印象を良くすることは、クレームやカスハラを受けにくくするために有効です。

中でも服装、髪型、メイクなどは、服務規程など社内ルールで決まっていることも多く、それに沿って対応するだけで一定の好印象を確保できます。ただし、近年の募集広告では、スーパーや飲食業など客先に出る職業でも、ヒゲ、ネイル、メイク、金髪などを可としている例を見ることもありますが、これらも、不用意な言動と相まってクレーマーの標的にされる可能性があります。そのため、企業自身が顧客に対し、従業員の個性尊重の背景を掲示するなどして伝えるとともに、マスクや髪留めなど必要な配慮を指導するなどし、クレームやカスハラのリスクを減らすことをお勧めします。

【態度】基本は、お客様の話しを傾聴し、お気持ちに合った表情で、謙虚にテキパキと対応すること

お客様に対応する時は、できるだけ笑顔で、謙虚に、テキパキと対応することが基本です。一方、お客様のご不満が伝わって来る場合など、かならずしも笑顔が相応しくない場合もあります。そのような場合には、お客様に合わせた表情で対応して行く必要があります。

お客様に合わせた表情としては、特に、喜・哀・楽に合わせた表情を心掛けることが重要です。
例えば、お客様が使い方を分からず困られているなら、ご不便をおかけしていることに対する「哀」の表情で、深く頷きながら傾聴します。また、その場の説明で解決し、お客様が喜ばれていると感じたなら、こちらも「喜」の表情で、「解決できて良かったです」「私も嬉しいです」などと伝えましょう。左記のようにお客様の感情に合わせ、謙虚にテキパキと対応する人に対しては、クレーマーも絡む隙を見付け難くなります。

なお、この例は電話対応の場合でも同様です。喜を表す場合には、弾むような声で優しく話しかけ、反対に哀の場合には、少し低めの声で落ち着いた話し方を心掛けるとともに、「お察しいたします」などの言葉で伝えるのがお勧めです。そのように、お客様に合わせた表情を受け止めながら、「“急ぎ”確認します」「“すぐに”対応いたします」などと伝え、テキパキと対応するようにしましょう。

【業務知識】知識豊富で、専門用語や業界用語を使わず分かり易く説明できる

お客様のご要望に対し、正しい知識で分かり易く応えることは、誤解に起因したクレームを排し顧客満足度を向上させるためにも、企業にとって極めて重要なことです。そのため、業務に就く前には十分な研修をするとともに、独り立ちした後も、言葉遣いなどについて上司や先輩が継続的に指導して行く必要があります。

一方、お客様からの質問や、場合によっては不満の芽は、いつどこで何に対し発生するか分からず、それらに対し全て適切に応えるのは簡単ではありません。例えば、店頭の対応中にコールセンターへの問合せや広告内容についての不満を述べられた場合、「知りません」と答えるのが良く無いと分かっていても、社内のナレッジシステムや教育体制が十分な大企業でも無い限り、適切に対応することは困難です。
そこでお勧めしたいのは、従業員のマルチタスク化です。

ある通販コールセンターでは、電話対応のオペレーターが葉書での注文や配送に関する問合せに適切に回答できず、クレームになるケースが続いていました。調べてみたところ、そのコールセンターでは、朝のオープン直後に入電のピークになり、昼頃前にはその半分、夕方以降は1/3まで電話が減っていました。そこで、受注葉書の入力を担当しているスタッフにも電話を取れるように教育し、オープン時には全員で受信するとともに、昼以降には逆にコールセンターのスタッフが入力業務のヘルプを行い、夕方以降は獲得アウトバウンドに人員を割くようにしました。結果、会社全体としての処理効率が上がっただけでなく、配送や広告などまで含めた業務全般に対する理解度が高まり、全てのオペレーターが分かり易く説明できるようになったことで、左記に起因したクレームが大きく減少しました。

【声や話し方】お客様に案内する際の、声や話し方の印象が良い

ご不満をお持ちのお客様に対しては、傾聴や共感も重要ですが、こちらから何かを案内する際には、ハキハキと、明確に、分かり易く伝えることが重要です。反対に、ぼそぼそと、曖昧に、分かり難く伝えていたのでは、例え同じ内容ではあったとしても、「何言ってんのか分からねーよ!」「ハッキリ言えよ馬鹿!」などと、ヒートアップを招きクレームになりかねません。

技術的には、早口、小声、下を向いて話すなどの要素が重なると、ぼそぼそと聞き取りにくくなります。反対に、お客様に正対し、話すスピードに合わせて、一定の声量で話すと、それだけでハキハキと聞こえやすくなります。また、分かり易く話すためには、結論から先に、順序だてて、シンプルに話すなどのポイントを意識して対応するのが基本です。また、よくある口癖の「あのー」「あー」「えー」などを無くしたり、話し癖を改善したりするだけで、印象は大きく変わります。

上記については、よくある問合せについて分かり易いマニュアルを用意するとともに、ロープレなど実施の対応を倣ったトレーニングを行い、客観的なフィードバックを受けながら改善することをお勧めします。

【顧客志向】お怒りか否かに左右されず、一貫して顧客志向を実践できる

一見して理不尽で、100対0で全面的にお客様が悪い一方的なクレーム・カスハラに思えても、お客様にとっては一定の理由があることも少なくありません。実際、筆者はコールセンターで品質管理をしていたとき、オペレーターがお客様と対応している音源を毎月2~30件くらい聴いていましたが、どんなに理不尽なクレームでもほぼ例外なく、お客様はお客様なりの理由を主張していました。

顧客志向の対応とは、お客様のご要望や理由に対し、ただ言いなりになることではありません。必要な謝辞や謝罪を伝え、しっかり傾聴し、事実関係を確認し、真のニーズを理解し、解決策を提示しようとする対応を、理不尽か否かに関わらず一貫して行うことです。それが徹底できれば、誤解を早期に解消し、小さなクレームを初期段階で鎮火することができるので、クレームやカスハラを受けにくくなります。反対に、他人事、マニュアル通り、言い訳ばかりと感じられるような対応をしていたら、正当なクレームだったとしてもカスハラに発展してしまう可能性があります。

このような対応は、単にマニュアルに「顧客志向」と書いたからと言って、それだけでできるようになるものではありません。経営層が中心となり、クレームやカスハラへの対応だけでなく顧客満足にも配慮した自社の顧客対応の在るべき姿を具体化したガイドラインを作成し、それに応じて継続的に業務フローやマニュアルを見直しながら、顧客対応の様々な場面で、率先して顧客対応を実践して行くことが不可欠です。

また、推奨行動基準や非推奨行動基準の作成や、評価基準への組み込み、フィードバックなど、従業員自身が顧客志向について主体的に考える仕組みを作ることも重要です。

まとめ | クレームやカスハラを「受けにくい」組織を作る

店舗やコールセンターなど、営業担当など、顧客接点の従業員全員が「ちゃんとした人」「気持ちの良い人」になったとしても、モンスタークレーマーやカスハラが完全にいなくなる訳ではありません。しかし、それだけでも一定の未然防止には繋がりますし、何より、クレームやカスハラの防止に対してだけでなく、顧客満足度の向上に対するポジティブな効果も期待できるので、非常にお勧めです。

本コラムでご紹介した取り組みについて、専門家のご相談をご希望の場合には、お気軽に無料相談をご利用ください。

カスハラ、クレーマー、対策、相談

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花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。