上手い人はやっている|クレーム対応のフローチャートを具体的に解説
クレームやカスハラ(カスタマーハラスメント)には、「こうすれば必ず解決できる」という万能の対応フローはありませんが、「これをやったら高い確率でハードクレームやカスハラになる」という対応はあります。
例えば、以下のような対応です。
【クレーム・カスハラを生む11の対応】
- 真摯な謝罪(お詫び)が無い
- お客様のお話しを傾聴していない
- 感情的に反応している
- 事実関係の確認をしていない
- きかれたこと(訊かれたこと)に答えていない
- お客様の言葉を遮っている
- 心情や真のニーズを理解しようとしていない
- 重要な問題に焦点を絞っていない
- 解決策を提示していない
- 企業の都合を優先している
- 心からの謝辞(お礼)が無い
これらの対応があると、商品やサービスそのものがどんなに優れていても、お客様のお怒りを買うことになりかねません。
暴言や暴力のともなうカスハラではなかったとしても、顧客満足度を大きく低下させ、お客様の離反を招くことになります。
また、そもそもクレームやカスハラになっている状況の中でこれらの対応をし、それを動画撮影や録音されてしまったら、最悪の場合、「あそこのお店でこんなに喧嘩腰の対応をされた!」とSNSなどに流出させられる可能性もあります。
しかし、これらの大半は、予め適切な対応フロー(フローチャート)を整備しておくことで回避が可能であり、むしろ、顧客満足度を高める機会にもなります。
そこで今回は、事例を踏まえながら、クレームへの基本的な対応フロー(フローチャート)について具体的に解説します。

上手い人はやっている|クレーム対応のフローチャートを具体的に解説
【事例紹介】このお客様はクレーマーか?
先日、ある全国展開している大手の印刷会社に印刷物を受け取りに行った際(キンコーズ様ではありません)、以下のようなやり取りを目撃しました。
- お客様:「これ、『全部で19種類の資料が2部あるんだけど、すぐに確認して持って帰りたいから、一部ずつまとめておいて欲しい』って伝えたけれど、なんで個包装になっているんですか?」
- 従業員:「さぁ、私には分かりかねます。とりあえず、資料に問題が無ければ、お受け取りのサインをお願いします」と言って受領証を差し出す
- お客様:「ん? 中身の確認も確認しないでサインしろって事ですか?」
- 従業員:「でしたら、お客様確認していただいても結構ですが。」
- お客様:「どうやって確認するんですか? っていうか、その時間はどうするんですか?」
- 従業員:お客様を遮って「今ここで、お手元の商品を開いて確認いただければ、、、」
- お客様:「話しを聞いていました? 私は『すぐ確認して持って帰りたいから、一部ずつまとめておいて欲しい』って伝えたんですよ。つまり急いでる訳で、個包装を外す時間なんて無いんですよ」
- 従業員:「ですが、後で『受け取っていない』と言われても困るので、規程上、受領証にサインを頂くようになっておりまして、、、」
- お客様:「それはお前らの都合だろ! 中身も見ねーでサインして、後でページが飛んでいましたってなったら、誰がどう責任取ってくれるんだ?」
- 従業員:「それは、お知らせいただければ後からでも追加で印刷いたします。」
- お客様:「馬鹿野郎! この資料は今日中に弁護士に確認を取って、裁判所まで持参しなきゃいけねぇー大事な物だから、『後から追加』なんてできる訳ねぇーだろ!」
- 従業員:「では、確認はしないで良い、ということでしょうか?」
- お客様:「揚げ足取るってんのかコラ! 注文したものがその通りに出来上がるなんて基本中の基本だろ!! てめぇーじゃ話しにならねーから店長呼んで来い!」
- 従業員:「そのような態度はカスハラなので止めて下さい!」
- お客様:「うるせぇーよ! んじゃ、頼んだものがその通りに出て来ねぇーのに、サインを強要されるのは何ハラだオィ? 店長の意見を聞きてぇーから今すぐに呼んで来い馬鹿野郎!」
このやり取りの後半だけを聞いて、「クレーマー」や「カスハラ」と言う方もいるかもしれません。
実際、対策本などの中には、侮辱や大声、上司を出せと要求することなどをカスハラと読んでいるものもあります。
しかし、筆者はすぐ隣りで聴いていた感想として、ちゃんと対応していれば全く揉める必要が無いように思えてなりませんでした。
まさに、冒頭で紹介した『クレーム・カスハラを生む11の対応』そのものであり、クレーム対応・カスハラへの対応における問題点が詰まっていると感じました。
確かに、企業や組織、そこで働く従業員に害をなす様な悪質なハードクレームやカスハラに対しては、組織的にしっかり対策して行くことが重要です。
しかし、どのような対策であっても、揉める前に鎮火できるのであればそれがベストです。
そのためには、一人ひとりの従業員が適切に対応できるように、クレーム対応の基本的なフローや対応手順を会社組織としてちゃんと整理することが重要です。
カスハラに発展させない、クレーム対応の基本的なフローチャート
上記のクレームの発端は、「お客様の注文通りに対応されていない」です。ですから、まずは真摯に謝罪し、次善策を講じるべきでした。
つまり、発端は注文対応の手違いでも、その発端を炎上させた原因は、従業員・スタッフの対応でした。
クレームには、様々な発端があります。
しかし、従業員やスタッフなど人を介して提供しているなら、その対応でクレームを生まないように、前述の『クレーム・カスハラを生む11の対応』を回避するため、以下のような対応フローを推奨しています。
【クレームへの基本的な対応フロー】
- まず真摯な謝罪(お詫び)をする
- お客様のお話しを傾聴する
- 感情的に反応しない
- 事実関係を確認する
- きかれたこと(訊かれたこと)に答える
- お客様の言葉をさえぎらない・お客様のお話しに被せない
- 心情や真のニーズを理解するように努力する
- 重要な問題に焦点を絞って対応する
- 解決策を提示する
- 企業の都合を優先しない
- 最後に心からの謝辞(お礼)を伝える
以下、具体的に見て行きましょう。
まず真摯な謝罪(お詫び)をする
お客様がお怒りの際、最初に行うべき行為は「お詫び」です。
時折、後で責任問題になるからと言って、事実関係が明らかになるまでは頑として謝罪しないという人もいますが、お勧めできません。
そのような対応をしたらお客様の温度感は高まる一方ですし、僅かでも自社に非があった時に大炎上します。
ですから、対応の初期段階では、企業側に責任があるか分からなかったり、お客様の誤解と思われるような場合であったとしても、心情に対し真摯にお詫びすることが、その後の対応から炎上リスクを排すことに繋がります。
冒頭の例であれば、以下のような対応が考えられます。
- まず「申し訳ありません」と速やかにお詫びをする。
- 「こちらにその経緯が伝わっていなかったようです」など、その時点で回答できる範囲を回答する。
お客様のお話しを傾聴する
お客様がお怒りの際、すぐに解決策を伝えようとしたり、または、自らに責任が無いことや正当性を伝えるために言い訳を伝えようとする人がいるが、これもお勧めできません。
企業内部の従業員・スタッフと違い、お客様は必ずしも正しい情報を持っているとは限りませんし、理路整然と説明できる方ばかりでもありません。
そのため、お客様のお話しに口を挟まず、まずは何が起こったのか、どのように希望されているのか、丁寧に聴き取って行く必要があります。
冒頭の例であれば、お客様は最初に「依頼と違う」と明確に指摘されていましたが、これをスルーして受領証へのサインを求めた結果、お客様に同じことを二度言わせて炎上への一因となりました。
ですから、受領証へのサインを依頼する前に、お客様が指摘されたことに対し「具体的にどのようなやり取りがあったか、教えて頂けますでしょうか」など説明を促す質問をし、お客様にお話しいただく環境を作ってから傾聴するのも一法です。
また、質問の前後に以下のようなトークを使うと効果的な場合もあります。
- ご説明いただくことに対し「大変恐れ入りますが」などとクッション言葉を入れる。
- 簡潔で良いので、「内容についてすぐに確認しますので」など説明を促す理由を述べる。
感情的に反応しない
前述の対応例では、従業員・スタッフが途中で揚げ足を取るような受け答えをしたことを発端に、お客様が少々乱暴な言葉遣いになりました。
しかし、従業員・スタッフはまるで喧嘩を買うように「では、確認はしないで良い、ということでしょうか?」「そのような態度はカスハラなので止めて下さい!」など、隣で聞いていても感情的、喧嘩を買い過ぎと感じる様な対応をしていました。
このような感情的な対応は絶対に避けるべきです。
お客様がお怒りの時、こちらも感情的な対応をしたら火に油は避けられません。
それでも、組織としてしっかり事実確認をし、理不尽な要求・不当なクレームだと判断し、排撃すると決定していたのであれば、毅然とした対応をするべきでしょう。
しかし、ほとんどのクレームは、初期段階では事実関係の確認さえできていません。
実際、前述の対応例では、お客様は冒頭で「注文通り仕上がっていない」と指摘していた訳ですが、従業員・スタッフは、その原因を把握できていないばかりか、指摘内容自体を理解できているようには思えませんでした。
もちろん、乱暴な言動をされたらこちらも感情が高ぶってしまうことは仕方ないでしょう。
しかし、それを表に出さないように工夫は出来ます。
例えば個人では、怒りを感じたらそれが消えるまでとりあえず6秒待ってみる「6秒ルール」がアンガーマネジメントとして推奨されています。
組織では、クレーム対応のヒアリングシートなどを用意しておき、それを埋めることに集中させることで、感情的に反応しにくいシチュエーションを作るなどは、比較的簡単にできる対応だと思います。
事実関係を確認する
前段で、解決策や正当性を伝えるための説明を急がない、と解説しました。
これは、その大前提として事実関係を適切に把握していなければ、説明や解決策が全て的外れなものになる可能性が大だからです。
そのため、基本は5W2H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、いくらで)を意識しながら丁寧に事実確認して行きます。
一方、ハードクレームやカスハラの場合、事実関係の確認が困難、という場合も少なくありません。
特に、既にご不満をお持ちのお客様の場合には、企業にとっては説明いただかなければ分からないことでも、お客様がメリットや意義を感じなければ、「なんでわざわざ説明してやらなきゃいけないんだ!? お前らで確認しろ!」と火に油となることもあります。
従って、まず“この人はちゃんと聴こうとしている”と分かってもらうことが大前提ですが、これに加え、以下のように説明のメリットを提示できるなら、ぜひそうしましょう。
- 「もしかしたら今からでもご提案できることがあるかもしれませんので」
- 「詳細が分かれば、対応できる者がいるかもしれませんので」
きかれたこと(訊かれたこと)に答える
クレームで、特に、自社に何らかの落ち度があった場合は、お客様からの質問に真正面から答えるのを避けて、つい、突き放すような答えをしてしまったり、質問に質問で返してしまったり、といったことをしてしまいがちです。
前述の例であれば、お客様は何度も「“すぐ”に確認して持って帰りたい」と言っており、お急ぎの状況の中でどう確認するつもりなのかときかれていました。
しかし、従業員は、時間についての質問には一切答えずに、手元の商品を確認すれば良いだろうと突き放してしまっています。
この件はそもそも、自社の不手際で注文通りに仕上がっていなかったことが発端です。
ですから、きかれたことに答えずに突き放した対応をすることは、無責任な論点ズラしともとらえられかねず、更なるハードクレームやカスハラに発展することになりかねません。
よほど理不尽なことや全く無関係な個人的な質問などであれば別ですが、きかれたことには、真っ直ぐに答えるようにしましょう。
ポイントは、お客様が何をきいているのか、しっかり理解して答えることです。
とはいえ、目の前で暴言を吐いたり暴力を示唆したりするようなハードクレームやカスハラを相手に、仰っていることを一言残さず聴き取り、適切に回答することは、ほぼ不可能です。
そのため当社では、基本的ではありますが、以下のようなことをお勧めしています。
- メモを取りながら対応する
- 聞き取れなかった箇所や分からなかったことは素直に確認する
- 「●●という経緯で良いでしょうか」など確認してから回答する
お客様の言葉をさえぎらない・お客様のお話しに被せない
「さえぎらない」「被せない」は平常の顧客対応においても重要ですが、クレームやカスハラ対応においては特に重要です。
テキストでは分かり難いかもしれませんが、前述の例では、お客様が「どうやって確認するんですか? っていうか、その時間はどうするんですか?」と質問しようとしていました。
しかし、従業員はその質問が終わらないうちに、お客様を遮るようにして「今ここで、お手元の商品を開いて確認いただければ、、、」と被せてしまっていました。
企業・お店の不手際で困り、腹を立てているときにこのような対応をされたら、例えわざとではなかったとしても、お客様が「お前らのせいでこんなに怒っているのに、それよりもお前の言い訳の方が大事だと言うのか!」と思うのは当然であり、火に油は避けられません。
とはいえ、クレームやカスハラの対応では、どうしてもヒートアップするため、語気も強くなり、話すスピードも徐々に速くなってしまいます。
そうやってヒートアップ・スピードアップしている時に、こちらが意識してペースコントロールをしなければ、釣られてスピードアップしてしまい、そのようなつもりはなくても、さえぎりや被りが起きてしまいます。
さえぎりや被りをしないためには、シンプルですが、お客様のご状況に合わせて対応することです。
車の運転と同じで、スピードを出せばぶつかりやすくなりますが、お客様のペースに合わせて、お客様の状況を確認しながら、ゆとりを持った会話を心がければ、事故は起こりにくくなります。
- お客様より『少し遅いペース』を意識して話す。
- 句読点で適度な間を取る(目安は、会話中の「、」で1秒、「。」で2秒)
- お客様の反応を見ながら話し、被ってしまったらゆずる(「どうぞ」と添えると良い)
心情や真のニーズを理解するように努力する
前述の例であれば、お客様は「すぐに確認して持って帰りたいから」と仰っています。また、その後に「この資料は今日中に弁護士に確認を取って、裁判所まで持参しなきゃいけねぇー大事な物だから、『後から追加』なんてできる訳ねぇーだろ!」とも仰っています。
この時のお客様の言葉遣いが乱暴だと言えばそうかもしれません。
しかし、企業として、正規の手続きで受注し対価を受け取ったにも関わらず、注文通りに納品できず、上記のようにわざわざお伝えいただいたニーズをスルーしてしまっていることも大きな問題です。
前段で事実関係を確認したら、次は、お客様はなぜそう感じたのか、なぜお怒りなのか、その心情を理解し、真のニーズを理解するように努めましょう。
そして、自分がどのように理解しているか、具体的な言葉にして伝え、お客様に受け入れてもらうことができれば、対峙し議論を戦わせる関係から、同じ側に立って共に解決を目指す関係に変化する可能性があります。
とはいっても、解決を急ぐ余り「要するに●●だったんですよね」などと、安易に話しをまとめようとしていると思われると、ますます大炎上しハードクレームやカスハラに発展することになりかねません。だからこそ、言葉にして伝える前の段階で聞いて、聴いて、更に訊いて、相手の心情を十分に理解してから言語化することが重要です。
再び前述の例であれば、心情や真のニーズを理解するため、以下のようなアプローチが考えられました。
- 「こちらに理解違いがあれば教えて頂きたいのですが~」といってお客様の認識を聴く。
- 「お急ぎで、しかもミスが許されない重要な書類だったからこそ、当社にお任せいただいたのですね」とニーズを訊く。
- 「ご信頼いただいたにも拘らず、個包装を外すようなお手間をかけたうえ、内容の確認もできずご不安を与えてしまい、本当に申し訳ありませんでした」と寄り添い受け止める。
重要な問題に焦点を絞って対応する
前述の例では、お客様は対応の冒頭で「すぐに確認して持って帰りたい」と言っていました。
それが最大のニーズであり、そのために安く無い費用を払って専門店に依頼をしていた訳ですから、例えて違いがあったとしても、そこに焦点を絞って対応すべきでした。
しかし実際は、サインの話しや、「後で『受け取っていない』と言われても困る」といった話し、事後にページの抜けが見付かった場合の話しなど、本題から逸れた話しの中で迷走するだけになっていました。
そうなったことの一因としては、お客様がお怒りで矢継ぎ早に色々と言って来たこともあります。
しかし、お客様は自社の商品やサービスについて研修を受けた訳でも、毎日取り扱っている訳でもありませんし、分かりやすく整理して話すのが得意な方ばかりでもありません。
クレームをカスハラにさせないためには、重要な問題に焦点を絞って対応するように、我々がプロとして適切にリードする必要があります。
具体的には、以下のような対応が考えられます。
- 対応する前に、「まずは●を急ぎ対応で良いでしょうか?」と優先順位を確認する
- 最優先事項を確認したら、こちらからは他の要望について言及しない
- 途中で別な要望が出て来た場合は「かしこまりました。●を急ぎ対応後、改めて確認します」と控室でお待ちいただく
- 細々とした要望が止まらない場合は「恐れ入りますが、●より▲を優先した方が良いでしょうか?」と選んで頂く
解決策を提示する
前述の例であれば、スタッフが手分けして個包装を外し一部ずつに分けて、お客様が内容を確認しやすいようにしてあげることが、その時点における最良の解決策だったはずです。
なぜそれをしなかったのか分かりませんが、人員的に不可能な状況ではなかったのであれば、やはり、お客様が注文した通りに仕上がっていなかった訳ですから、何らかの解決策や代替案は提示すべきでした。
注文通りに仕上がらず、代替案も提示されず、料金だけは請求されたのであれば、お客様がお怒りになるのも止むを得なかったでしょう。
とはいえ、ここで解決策を提示することに対して、「こんなに後になってから解決策なの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、クレームに発展しているということは、既にお客様は感情を害しているということです。
ですから、提示した解決策が的を射たものであれば良いですが、そうで無ければ「そんなことは求めて無い!」と更なる炎上を招くことになりかねません。
運良く的を射た解決策だったとしても、「だけどあいつの態度は許せない」と心情的な不満が残りかねません。
そういった事態を避けるため、解決策の提示を急ぎ過ぎないよう注意しながら、お客様のお話しを十分に傾聴し、事実関係や心情・真のニーズを十分に把握してから解決策を提示するように、今回ご紹介したクレームの対応フローでは、解決策の提示は9つ目のステップとしています。
企業の都合を優先しない
冒頭の例で言えば、受領証へのサインです。
お客様は、冒頭から明確に「注文通りでは無い」「中身を確認できない」と言っています。
ですから、その状態に誠意ある対応をする前に受領証にサインを求めることは、企業の都合でしかありません。
もちろん、企業としては必要だったのだと思います。
しかし、必要であったとしても、それをこの段階で確認するのは、お客様に対して「自分が困っていること・迷惑を被っていることよりも、企業の都合を優先している」、と思われても止むを得ないでしょう。
そう思われないためにも、やはり、まずはお客様の問題を解決し、解決してから企業側の依頼などをして行くべきです。
最後に心からの謝辞(お礼)を伝える
解決策が奏功したとしても、問題自体が起こらなかったことになる訳ではありません。
そのため、その点をしっかりケアすることで、お客様に「不手際はあったけれど、十分な対応をしてくれた」と思ってもらい、クレームをクレームで終わらせず顧客満足度向上の機会としましょう。
冒頭の例であれば、以下のような謝辞(お礼)が考えられます。
- 「ご要望通り対応できず、余計なお時間を取らせたこと、本当に申し訳ありませんでした。また、私どもの不手際にも関わらず、ご丁寧に経緯を教えていただき、ありがとうございました。」
- 「貴重なご意見をたまわり、心から感謝いたします。今回の件は社内でも必ず再発防止策を講じますので、お許しいただけるのであればぜひまたご利用くださいませ。」
- 「ご指摘の数々、本当にありがとうございました。すぐに全てのご要望にお応えするのはできないかもしれませんが、どうか今後も温かく見守っていただければ幸いです」
クレーム対応の基本フローを失敗させないための注意点
クレームやカスハラは、トラブルが起きてから焦って対応しようとしても、なかなか上手く行きません。
もちろん、相手があることですし、トラブルの内容も毎回全く同じではないので、ステップの濃淡を調整したり順番を入れ替えたり、といったことはあります。
しかし、それでも、トラブルが起きる度に出たとこ勝負では、落球や事故も起こりやすくなるので、いつでも基本的な対応フローに沿って対応することは重要です。
一方、基本的な対応フローを理解しても、上手く機能しない場合もあります。
そのため、今回ご紹介した『クレーム対応の基本フロー』を失敗させないための3つの注意点をお伝えします。
「論理的思考」や「冷静な対応」を信じない
クレーム対応が上手い人の特徴で調べると、トラブルに直面した時に「論理的思考ができる」や「冷静に対応ができる」といった特徴を挙げている記事を目にすることがあります。
たしかに、そういった特性は、クレームやカスハラへの対応においては極めて重要な要素であり、『クレーム対応が上手い』と見える場合が多いです。
しかし、そのような特性は誰もが持っている訳ではありません。
また、前述の通り、相手があり、トラブルの内容も毎回全く同じではないので、そういった個人の資質だけでは解決できない場面も起こり得ます。
何より、そういった個人の資質に任せた対応を続けていては、対応の品質が安定せず、企業として求める結果に近づいているかも分かりません。
そういった資質を持った従業員がいなければ、些細なクレームにも対応できず炎上させてしまう、といったことにもなりかねません。
これでは、企業の対応として全く不十分であり、従業員の不安も募ることになります。
個人の資質に依存した対応にならないように注意し、「論理的思考」や「冷静な対応」が得意ではなくても対応できるように、組織としての仕組みを作りましょう。
「クレーム対応が得意な人」には任せない
「クレーム対応が得意な人」は、印象で決めるのではなく、組織で定めた基準に基づき客観的に評価し、対応した案件がどうなったのかを、ちゃんと確認することが重要です。
例えば、筆者が以前支援したコールセンターでは、あるサブリーダーの方が「クレームが大好物」と公言し、オペレーターが受けたクレーム電話を積極的に交代されていました。
筆者も、そのサブリーダーの方の対応を複数モニタリングさせていただきましたが、知識豊富でハキハキと弁舌もたち、説明も論理的でお客様にやり込められてしまう場面は全くありませんでした。
しかし、その対応が良かったかというと、そうではありません。
「クレーム対応が上手い人」に任せっぱなしにすると、以下のような事態になることがあるので、注意が必要です。
お客様を迎え撃ち、言い負かし、勝ってしまっていた。
クレーム対応の目的は、決して、議論に勝つことではありません。
勝たなくても、誤解を解いたり、ご理解いただいたり、心情理解が伝わったり、場合によっては諦めることで、矛を収めていただければそれで十分です。
「更に上の上司に交代するような炎上が起きていない」からといった表面的な事象だけで「クレームが得意」と評価してしまえば、必要以上に戦い顧客の離反を招くことにもなりかねません。
組織としての学習機会に全くなっていなかった。
そのコールセンターでは、そのサブリーダーの方がクレームをほぼ一手に引き受けていましたが、形の上ではクローズしていたので、組織からも特に掘り下げた報告も求められてはいませんでした。
しかしその結果、クレームの原因やお客様のご要望が組織内に全く共有されず、学習機会を逸し続けてしまっていたことは大きな問題です。
クレームは、不可抗力などごく一部を除き、ほとんどの場合は自社にも改善余地が見付かります。
「得意な人」「上手い人」に任せ切りにすると、対応がブラックボックス化し、商品やサービスの改善材料やクレームの根本原因が社内共有されず学習機会を失うことにもなりかねません。
まとめ|組織的なフォローが「クレーム対応が上手い人」を育てる
今回ご紹介したノウハウは、再現性が高く、どのような案件にも応用が利くので、ちゃんと身に付ければ非常に有効です。
特に、クレームで二次対応をする人は、こういった対応フローを身に付けておかなければ、せっかく二次対応をしても終結させられず更にエスカレーションすることになるので、交代する意味が無くなってしまいます。
ただし、文中でお伝えした通り、クレーム対応は相手もあるし毎回同じ内容でもありません。
理屈では分かっていても、激怒するクレーマーを眼前にしたプレッシャーのかかる場面で、覚えた通りに対応するのは決して簡単ではありません。
今回ご紹介したクレームへの基本的な対応フローも、できるようになるまでにはそれなりに時間もかかる可能性はあります。
そのため、今まで適切な対応ができず、クレームが無くならなかったのであれば、対応フローを身に付けるための取組みをしなければ、来年も再来年も、このコラムを見ながら「動けない理由」を考え続けることになります。
ですから、今までクレームを適切に終結させることができなかったマネージャーや、個人の資質に頼ってブラックボックス化していた企業は、なるべく早い段階から、組織的な仕組み作りに取り組むことを強くお勧めします。
本コラムの内容について、専門家にご相談を希望の方は、無料相談からぜひお気軽にご連絡いただければ幸いです。

