プロが教える | クレームをカスハラにさせない、初期対応10のポイント

クレーム カスハラ 初期対応

クレームとカスハラは似て非なるものですが、現実の接客では、お客様が酷く感情的になっている場合などは区別が難しく、内容的にもグレーゾーンが少なくありません。

最初は正当なクレームだったお客様が、初期対応を適切にできなかったためハードクレームに発展してしまい、その場は何とかやり過ごせてもお客様の中に強いわだかまりが残り、些細なきっかけでカスハラをするようになる、といった例もあります。

もちろん、カスハラは不適切な行為です。
例え過去に不十分な対応があったとしても、それはそれであり、目の前の店員にカスハラをして良い理由にはなりません。

しかし、適切な初期対応により炎上が回避できるのであれば、それがベストです。
お客様の満足度も高まるし、従業員・スタッフも、ハードクレームやカスハラへの対応により余計なストレス・プレッシャーを受けることがなくなります。

今回は、上記のような背景を踏まえて、ハードクレームやカスハラに発展させないための、クレームへの適切な初期対応について解説して行きます。

クレーム・カスハラの専門家への相談

プロが教える | クレームをカスハラにさせない、初期対応10のポイント

クレームにける初期対応の目的

冒頭で、クレームの初期対応の目的として、「ハードクレームやカスハラに発展させないため」とお伝えしました。

しかし、これは決して「お客様に勝つ」ことによってクレームを終結させ、ハードクレームやカスハラに発展させないという意味ではありません。

むしろ、感情的になられているお客様に対して、勝とうとする、撃退しようとするから、余計な衝突が発生しハードクレームやカスハラに発展してしまう可能性が高まります。

そのため、クレームの初期対応の目的としては、以下の3点を強く意識することが重要です。

  • 事実関係、ご意見、ご要望を把握する
  • できる範囲で回答する
  • 担当部署や上司に適切に繋ぐ

仮にお客様がお怒りで、一見して怖いと感じたとしても、状況も分からないまま単に「怖いと感じた」という主観的な理由だけでクレーマーやカスハラとして扱うべきではありません。

できる限り事実関係、ご意見、ご要望を把握し、できる範囲で回答し、それでも治まらないなら担当部署や上司に適切に繋ぐことができれば、それで十分です。

初期対応10のポイント

以下、クレームの初期対応について、具体的なポイントを確認していきましょう。

速やかに謝罪する

お客様がお怒りだと把握したら、まず、速やかに謝罪しましょう。
具体的には、「ご不快な気持ちにさせて申し訳ありません」「対応が至らずに申し訳ありません」など、心情や対応全般に対してのお詫びをします。

初期段階のクレーム対応では、「状況が分からないのに安易に謝罪したら付け込まれる」「非を認めたら、損害賠償責任が発生する」といった心配から、頑なに謝罪しようとしない方がいます。

しかし、損害賠償は原則として、契約違反や不法行為に対し課されるものであり、非礼を謝罪したからといって直ちに賠償責任が生じるものではありません。

むしろ、謝罪を求める理由が「態度が失礼」「説明が分かりにくい」「待たされた」といった程度のものであれば(“程度”によるが)、速やかな謝罪により“謝って済ませてしまう”ことをお勧めします。

また、お客様がお怒りの時は、初見では分かり難くても、実際に自社に瑕疵・過失があったり、それによりお客様に損害が生じていたり、といったことも少なくありません。

ですから、クレームの初期段階で事実関係が分からないからと言って頑なに謝罪を拒んでいたら、当初は正当なクレームだったのに、「あいつは謝罪を拒否した」「ここまで言われてから謝罪されても受け入れられない!」などとお怒りを買い、ハードクレームやカスハラに発展する可能性があります。
上記の様にこじれる事態を防ぐためにも、お客様がお怒りのご様子なら、まずは速やかに、その心情に対し謝罪しましょう。

ミスに応じた謝罪に止める

冒頭で、「速やかに謝罪する」の重要性についてお伝えしました。

しかし、中にはそれでは納得せず、「そんな謝罪では納得できない」「お前の対応に対するクレームなんだから、お前の上司が謝罪するのが当たり前だろう」などと、執拗に謝罪を要求し続けて来る相手もいます。

いかに自分のミスが原因だったからと言って、そういった場合に、相手が納得するまで延々と謝罪をし続けたら、お客様をエスカレートさせることになり、土下座や金品提供など不適切な対応に繋がりかねません。

また、そもそもの前提として、納得するか否かはそのお客様の気持ちの問題なので、こちらでコントロールすることはできません。

企業が業務上のミスについて謝罪する際の大原則は、ミスに応じた謝罪をすることです。

逆に言えば、ミスに応じて真摯に謝罪を行ったのであれば、それ以上の対応は不要であって、ましてや、相手が納得するまで謝罪し続ける必要はありません。

「ミスに応じた謝罪」とは、言い間違えがあった、言動に失礼があった、といった担当者の対応に関するクレームであれば、担当者が口頭で謝罪すれば十分です。

仮に、こちらのミスが原因で損失が生じたとして謝罪を要求して来たとしても、ミスと損害に明確な因果関係が無いのであれば、謝罪は、ミスに対する真摯な謝罪をすれば事足ります。

執拗にそれ以上の謝罪を求めて来る場合は、「当方のミスに対しては、既にお詫びしております。恐れ入りますが、これ以上の謝罪はいたしかねます。」とお断りしましょう。

丁寧に対応する

例えば、第一声で怒鳴られたとしても、それだけでカスハラと決め付け粗末に扱うような対応はNGです。

実際、改正労働施策総合推進法では、カスハラの構成要素の一つである『社会通念上許容される範囲を超えた言動』について、「事業者または労働者の側の不適切な対応が端緒となっている場合もあることに留意する必要がある」としており、ちゃんと状況が分からなければカスハラか否か判断できません。

組織としてカスハラだと判断するまでは、他のお客様と同水準の、丁寧な対応を心掛けましょう。

「丁寧な対応」とは、「特別扱い」ではありません。そのお客様の契約内容、知識、理解度、などに応じて、誠実な対応を心掛けるということです。

日々業務に触れている社内スタッフにとっては社内ルールや専門用語などが常識でも、大半のお客様にとってはそうではないので、極力、前提知識無しでも分かるような平易な説明を心掛けます。
また、お怒りのお客様を目の前にすると、つい「早く切り上げたい」と思って対応が雑になったり、喧嘩腰の言動になってしまったりしがちなので、そうならないよう注意しましょう。

繰り返し説明する

クレームを伝えて来るお客様は、誤解や見落としなどをされている方も少なくありません。

しかし、そういったお客様であっても、わざわざそれを伝えて来る時点ではすっかり「自分が正しい」と思い込んでいて、説明してもなかなか分かってもらえないということもあります。

そのため、お客様のお話しを伺いながら、説明を微調整し、根気強く繰り返し説明することが必要です。

そうやって説明しようとすると、「その話しはさっき聞いたよ!」とお怒りになる方もいらっしゃいます。

ですが、その場合であっても、過敏に反応しないように注意しましょう。

お客様がお怒りになったとしても、こちらまでイライラしてしまったり、過剰に恐れてしまったりしたら、そういった反応はお客様にも必ず伝わります。

ポイントは、最初から一度に全てが伝わると思わず、段階的に伝え、お客様の理解を得るように対応することです。

とはいえ、あまり多段階だと話が複雑になり、かえって理解を得るのが難しくなります。

そのため、前提→事実関係→結論と3段階か、多くても5段階くらいを目安に、例えば「まずご契約の状況を簡単に説明します」→「ここまででご不明な点はありませんか?」→「改善策のご提案ですが、一番早いのは、、、」など、一つづつお客様の「YES」を積み重ねて行きましょう。

背景を踏まえて対応する

店頭購入の場合、お客様が払っている金額は商品の代金だけでも、実は、お店に来るまでの交通費や、検討や移動に要した時間など、目に見えないコストを払ったうえで自社の商品をお選びいただいています。

そのため、例えば初期不良で交換する際に、交通費や特典を希望されたからといって「そういったことはできません!」と真正面から拒絶するだけでは、お客様のお怒りに火を注ぎ、小さなクレームがハードクレームやカスハラに発展しかねません。

もちろん、会社側が来店や購入を強要した訳ではない以上、お客様が実際に支払った以上の額を補償するか否かは、会社側の判断です。

しかし、ご要望にお応えできない場合でも、「そういったご事情があるのですね」などとお客様の背景を受け止めたうえで、「ただ、当店は路面店という特性上、来店に要する交通費は負担しないルールになっております」など、要望に応じられない理由を簡潔に伝えるようにしましょう。


クレームは、火が小さな初期のうちに適切に対応することが、ハードクレームやカスハラに発展させないためには何よりも重要です。
また、適切な初期対応のためには、机上の理論だけでなく具体的なマニュアルや実戦的な研修が不可欠です。

もし、クレーム対応体制の構築について専門家に相談を希望の方は、ぜひ無料相談からご連絡ください。

また、自社で対策を進めたい方のためにもダウンロード資料をご用意しておりますので、お気軽にダウンロードして頂ければ幸いです。

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安易にエスカレーションしない

クレームでは、「責任者を出せ!」といった要求をされることがありますが、こういった要望を安易に受けると、最終的には「社長を出せ!」「株主総会で報告しろ」など、際限なくエスカレートしていくため、基本的にはお受けしないで対応します。

具体的には、「私が担当者として、責任を持って対応します」とし、お前じゃ話にならない、お前の態度が悪いから責任者を出せと言っているんだ、などと言われても、「会社としても、担当者が責任を持って対応することになっております。上司には私から在りのままを伝え、指示・指導を受けます」などと対応するのが良いでしょう。

それでもしつこく、「社長を出せ!」などと要望される場合には、「社長は現在、顧客対応をしておりませんので、御取次できません」など、毅然とお断りしましょう。

ただし、対応した従業員が入ったばかりのアルバイトであり、「責任を持って対応」が現実的に不可能な場合や、クレームの内容が重大なミスやトラブルであり、責任者が対応するのが相当な場合もあるので、そういった場合には柔軟に対応します。

「言った」「言わない」の議論をしない

クレームの原因として、「前に問い合わせた時には●●と言われたのに違うのか!?」といった誤案内の主張があります。

こういった場合に、安易に前回の対応を誤案内と言ってしまうのはNGですが、だからといって前回の担当者を呼ぶと、「言った」「言わない」の議論となり、事態がさらに紛糾しかねません。

また、仮に録画や録音で誤案内が無かったと確認できても、僅かな言葉尻を捕らえて「素人には分かり難かった。なぜもっと丁寧に教えてくれなかったんだ!?」などと誤案内に拘泥されたら、収拾に繋がりません。

このような場合の対応のポイントとしては、まず、お客様のご要望の中核が何であるのか、しっかり確認をすることです。

この時、「前の奴とやり取りしたことをまた一から説明しろって言うのか!?」「いいから前の奴を呼んで来い!」と拘泥されたとしても、そこで前回担当者に替わると水掛け論になるので、「以前の担当者にも確認はしますが、当社は基本的に、その時々の担当者が責任を持って対応しております」とお断りして、要望の中核の確認に集中します。

そして、例えばお客様が「以前は●●と言われたのになぜ断るんだ!?」と主張して来たとしても、要望の中核が全く違う理由(例:滞納、審査、公表している推奨環境外)であれば、改めて、ルールに沿った回答を明確に伝えます。

ただし、この対応は、水掛け論を回避して建設的な対応をするためのアプローチであって、自社に誤案内の可能性があるのを握り潰すためのものではありません。

お客様のお話しを傾聴し、一定の真実性や妥当性が読み取れるのであれば、前回担当者に交代はしなくても、真摯にお詫びし前回のミスや誤案内をカバーするのは当然のことです。

仮定の話しはしない

クレーム対応において、お客様のご要望に応じられない理由を伝えていると、「じゃあ●●だったらどうするんだ!?」などと追及される場合があります。

このような仮定の質問に応じていると、全ての“たら・れば”に回答することになり、際限なく議論が続きます。

それらに対してちゃんと回答しようとすればするほど、些細な点で揚げ足を取られ、「▲▲と言われた」「いや、そういう意味では言って無い」と新たな火種になる可能性もあります。

そうなってしまわないようにするためには、このような仮定の質問に対しては、「今の段階ではお応えいたしかねます」と回答してOKです。

ただし、仮定の質問であっても、お客様にとっては本当に心配されている可能性もあります。

そのため、お客様のご心配が妥当と思われる場合や、そうで無くても自社のミスや誤案内が原因で心配されていると思われる場合には、例え仮定の質問であっても、ご心配を解消できるように回答しましょう。

そのうえで、お客様が多少トーンダウンしたのを見計らって、「ご心配はごもっともですが、私どもも仮定の質問に全て答えることはできません。そこで一つご提案ですが、、、」など、ご要望の中核に話しを戻しましょう。

明確に回答する

お怒りのお客様に直面すると、つい、これ以上怒られたくないという気持ちが先に立ち、本当はNOであるご要望に対しても、「難しい状況ですが、しっかり検討して、、、」など、曖昧な回答をしてしまうことがあります。

しかし、そのような曖昧な回答をお客様がYESだと受け取ってしまうと、更にお怒りを買うことになり、些細なクレームがハードクレームやカスハラに発展してしまう可能性さえあります。

そのため、YES or NOを伝える時には、お怒りを恐れず、明確にYES or NOを伝えましょう。

注意点は、長々と曖昧な言い訳をしないで、結論を簡潔に伝えることと、回答がYES or NOのどちらであっても、同じように真摯に対応することです。

具体的には、NOの場合であれば、「申し上げにくいことですが、ご要望にはお応えできません。」と結論を明確に伝えたうえで、「お客様のご状況はよく理解できましたが、今回は、契約上の補償対象外事項です」など、心情には配慮しつつも、お受けできない理由(できるだけ客観的事実に基づいて)を伝えます。

もしこの順番が逆だったら、興奮しているお客様が「ご状況はよく理解できました」という部分だけでYESと誤解して後の案内は耳に入らなくなり、後になって「話しが違う!」ハードクレームやカスハラに発展する可能性がありまので、注意しましょう。

必要な時には話しの腰を折る

ここまで伝えて来たようなポイントを踏まえながら対応しても、なおも、ご自分の要求を一方的に主張し続け、話しが一向に進展しないようなクレームに対しては、話しの腰を折ってでも、最低限、必要なことを伝えます。

具体的には、同じ話しの繰り返しになったタイミングで「お待ちください、先程と同じお話しだと思いますが、これについて当社の結論は応じられないとお伝えした通りです」と伝えたり、主張が一向に止まない場合はあえて無言になって、お客様が「聞いているのか?」と尋ねて来たときに「今の段階で個別対応のお約束はできません」と伝えたりします。

クレームの内容にもよりますが、30分が経過しても全く進展が無いなら、一方的に聴き続けるのではなく、一度話しの腰を折って、必要最低限伝えることを伝えましょう。

なお、もし可能であれば、事実関係を把握できてすぐの段階でも一度、上記のような基本的な方向性を伝えておく方がベターです。

と言うのも、初期段階でそれをせず、何十分もクレームを聞き続けた後にお断りすると、「NOならNOと最初に言われれば、無駄な時間を使う必要も無かった! なぜそんなに不親切なんだ!?」と悪感情を募らせ、ハードクレームやカスハラに発展する可能性があります。

無理に序盤で伝える必要はありませんが、お客様に回答を求められるなど、方向性を伝えられるチャンスがあればぜひそうしましょう。

注意点

クレームの初期段階においては、まだ相手がどんな人か分かりませんし、どんな内容なのかもわかりません。

そのため、危険物を持っている可能性や、一見落ち着いて話しているように見えても、何かのきっかけで大爆発して乱暴な行為に及ぶような可能性があるかもしれません。

そのため、下記の注意点を踏まえながら、今回解説した10のポイントに沿って対応することをお勧めします。

  • 身の安全を確保できる距離を空ける
  • 感情的な言動をしない
  • 可能なら複数名で対応する

複数名対応ができれば、身の安全の確保にも繋がりますし、もう1人が感情的に対応をしてしまいそうになったときもブレーキ役になってもらうことができますので、非常に有効です。

しかし、シフトなどによっては、複数名での対応が難しい場合もあると思います。

そのような場合であっても、最低限、身の安全を確保できる距離を空け(1メートル以上)、感情的な言動をしないようにしましょう。

まとめ|クレームの初期段階で消化できるように

昨今、報道などで「カスハラ=カスタマーハラスメント」という言葉を目にすることが増え、クレームの延長線上にカスハラがあるかのように誤解されている方もいるようです。

しかし、本来は商品やサービスに対する意見、瑕疵・過失などの指摘、自らの希望などを伝えるクレームは消費者としての当然の権利であり、これらとカスハラは明確に区別をする必要があります。

問題は、上記のようなクレームが、時に強い態度で行われることで、外形的にはカスハラと区別がつきにくいということです。

また、経験を積んでいれば動じないような比較的小規模のクレームでも、担当者が経験不足の場合は、委縮して適切に対応できず、カスハラに発展させてしまう場合もあります。

いずれの場合も、初期段階で適切な対応ができなければ、本当のカスハラに発展してしまいかねません。

そのため、初期段階のクレームに対しては、適切に対応できるようにマニュアル化し、誰もが同じように対応できるようにトレーニングをすることが欠かせません。

本コラムが貴社の参考になれば幸いです。


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花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。