クレーム・カスハラ相談窓口の作り方|中小企業の最短整備のための実務ガイド

カスタマー ハラスメント相談窓口
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中小企業診断士(経済産業大臣登録済み)
ProClaim合同会社 代表社員・花村憲太郎
クレームやカスハラを減らすだけでなく、顧客満足度を高めます。
元コールセンターの品質管理チームマネージャーであり、15年以上にわたり3,000件以上のクレームに対応した経験に基づく、実践的で再現性の高いノウハウを持つ専門家です。
無料相談から、お気軽にご連絡下さい。

本コラムでは、従業員がカスハラ被害に逢った際に相談する窓口を設置する際のポイントについて、具体的に解説します。
また、実際にカスハラが発生したときに、相談窓口としてどのような対応が必要かも解説します。

労働施策総合推進法の改正により、2026年10月から、全企業にカスハラへの対策措置が義務化されます。

この措置義務の一つに、カスハラへの相談窓口の設置や相談体制の整備があります。

相談窓口が無い企業では、店長や現場の社員がすべてのクレーム対応を抱え込むことになり、次第に本来業務が滞留します。

スタッフは「相談しても助けてもらえない」と感じ、我慢を重ねた結果、離職につながるケースもあります。

対応が後手に回ると、SNS炎上や口コミ悪化といったレピュテーション(評判)リスクも増大します。

特に、人手やノウハウの足りない中小企業の場合、結局全て引き受けることになる経営者の負担は、更に大きなものになります。

本来、相談窓口・相談体制を作り担当者を設置することは、“従業員を守る仕組み”であり、同時に“企業を守る仕組み”でもあります。

適切に整備すれば、現場の負担が軽減され、離職防止や顧客満足度の改善につながります。

店長や経営者に対応が集中し本来業務を圧迫する、といったことも解消できる可能性が高まります。

本コラムでは、中小企業がカスハラ相談窓口を整備するための実務ステップを、専門家が分かりやすく解説します。
自社の相談体制に不安がある場合は、まず現状の弱点を可視化することが第一歩です。

相談体制が整っていないと、現場の負担は急速に積み上がります。
「今のままで大丈夫なのか…」と少しでも不安があるなら、まずは状況を整理するだけでも、現場の迷いと負担は大きく減ります。

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クレーム・カスハラ相談窓口の作り方|中小企業の最短整備のための実務ガイド

クレーム・カスハラ対策相談窓口設置の3ステップ

相談窓口については、改正労働施策総合推進法で義務化される以前から、同じ厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』では、以下のように階層的にカスハラに対応する体制を勧めていました。

実際、筆者も勤務時代にはこれに似た相談体制の監督者と本部の双方を経験しましたが、適切に機能すると、従業員の負荷を軽減できる優良な取組みだと感じています。

クレームの初期対応は、こちらのコラムで詳しく解説しています。

相談窓口の設置(本部に相談できない場合もある)

カスハラ対応の相談窓口を決めたら、それを従業員が分かるように明確に周知します。

ただし、例えばオーナーシェフが経営している1店舗のみのお店など、中小企業の場合は本部にエスカレーションできない環境もよくあります。
しかし、そういった場合にオーナーシェフに全てを相談していたら、肝心の料理が止まってしまいます。

そこで、そのような場合にはベテラン社員やアルバイトバイトリーダーを現場の相談窓口にし、経営者が上図の「本社/本部」のような位置付けで対応するのも方法です。

相談担当者の選定、マニュアル作成、教育

相談窓口の担当者を設定したら、以下のような対策マニュアルについて、主要なシチュエーションからすこしずつ揃えて行きます。

  • カスハラ対策自体のマニュアル
  • 相談内容に応じた対応マニュアル
  • 顧客対応を交代する場合のマニュアル

相談窓口では、「上司に代われ!」や「あいつクビにしろ!」と言われた後の対応であったり、一次対応とは異なる状況・立場で相談を受けることが多いです。

そのため、過去の事例なども参考に、相談窓口担当者向けのマニュアルを作ることをお勧めします。

また、相談窓口担当者には、必ず、相応しい研修を受けさせるようにしましょう。

通常、どんなにベテランでも、オペレーションについては詳しくてもクレームやカスハラへの対応については教育を受けたことが無い、という方がほとんどです。

自社で対応が困難な場合は、外部の研修機関や士業などの専門家による研修を検討しましょう。

相談者の心理的安全性への配慮

窓口を設置しても、安心して相談できる環境でなければ従業員はなかなか相談をできません。

他の従業員には知られたく無いという場合もありますし、カスハラの発端として自分にも一定の原因がある場合などは、怒られるかもしれないと相談を躊躇します。

この点は、改正労働施策総合推進法においてでも明確に定められており、厚生労働省のリーフレットでは、『そのほか併せて講ずべき措置』として、以下の2点が定められています。

プライバシーへの配慮

リーフレットでは「相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する」となっています。

相談窓口の担当者としては、発生中のカスハラに対する相談に応じるだけでなく、「得意客にカスハラをされている」「同僚が他店でカスハラをしているようだ」といったセンシティブな相談も不安がらずにできるよう、別室を用意し、周囲に誰もいないことを確認してから相談に応じるなどの配慮しましょう。

不利益取扱いの厳禁

リーフレットでは「相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する」となっています。

相談窓口が、見当違いだからと相談された内容を放置したり、相談者が原因になっているからと不利な評価や叱責をしたりしたら、二度と信頼し相談してくれることは無くなります。

例えば、以下のようなメッセージを経営者名で共有するなどし、誰でもどんなことでも相談できる環境を作りましょう。

  • 「相談内容そのものを根拠に不利益取扱いはしません」
  • 「どんなことでも、相談してくれたら必ず一緒に解決策を探します」
従業員が安心して相談できる環境を作るために
まず“自社の相談体制がどこまで整っているか”を把握することが重要です。

そのために、必要な項目をまとめたチェックリストをご用意しました。
短時間で現状の弱点を確認できますので、ぜひご活用ください。

クレーム初期対応チェックリスト
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カスハラ相談窓口の役割

カスハラ加害者やクレーマーに対する相談窓口では、現場で即時対応をする直属の上司(一次相談)と、組織としての支援・判断をする本部・経営層(二次相談)に役割分担をすることをお勧めします。

中小企業では両社の線引きがあいまいになりがちですが、この役割分担を整理するだけで、相談窓口/相談体制は大幅に機能し易くなります。

一次対応(直属の上司が行うべきこと)

直属の上司の役割は、現場で“今まさに起きている問題”を止め、従業員を守ることです。

具体的には、カスハラを受けていると相談されたら、以下のような対応を行います。

  • 従業員がそのまま対応できるか見極める
  • 対応について適切にアドバイスする
  • 対応困難な場合、クレーマーから従業員を切り離す
  • 必要に応じて上司が交代して対応
  • 暴力・脅迫があれば即座に警察・警備へ連絡

二次対応(本部・専門家・業界団体へのエスカレーション)

本部や経営層の役割は、組織としての判断・方針決定・再発防止を担うことです。

具体的には、現場からの報告を受けたら、以下のような対応を行います。

  • 報告内容を踏まえ、必要に応じ追加ヒアリング
  • 証拠(録音・メモ・防犯カメラ)の整理
  • 組織としての対応方針の決定
  • 再発防止策の構築
  • 警察や医療機関などとの連携

相談しやすい環境づくり(声かけ・見守り・心理的配慮)

カスハラの相談窓口は、相談された時だけ受動的に応じるのではなく、普段から従業員に声をかけ、様子を見守り、いつでも相談できる環境を作ることが重要です。

具体的には、遅刻、欠勤、ミスの増加、笑顔の減少、口数や反応の低下、よく1人でぼんやりしているといった行動面でのサインや、服装や髪型の乱れといった外形的なサインがあれば、声を掛けてあげます。

カスハラの影響ではないかもしれませんが、従業員の不調を早めに把握し会社として対応できるのであれば、それにこしたことはありません。
場合によっては、自分よりももう少し関係が近い同僚などから声をかけてもらっても良いでしょう。

カスハラへの対応打ち切りについては、こちらのコラムで詳しく解説しています。

従業員の心身へのケア(休憩・医療・付き添い)

カスハラの被害に遭うと、その時は興奮して痛みが無いように見えても、実際は怪我をしていたり、身体的な影は無かったとしても精神的には激しく消耗していたりします。

私自身、今でもクレームやカスハラの現場に出会うと、動悸が強まります。

そのため、相談窓口の担当者は、例え従業員が「大丈夫です」と言ったとしても、必ず、以下のような対応をするようにしましょう。

ちゃんと休憩を取らせ、場合によっては早退してもらう

カスハラ対応をした後は、必ず休憩を取らせ、場合によっては早退させても良いでしょう。

周囲も、会社や上司がそういった配慮をしているのを見て安心します。

なお、カスハラの状況などから、待ち伏せや付きまといの可能性が危惧される場合には、絶対に一人で帰宅させてはいけません。
タクシーを使ったり、可能な限り男性従業員が付き添って、衆目の途絶えない明るい大きな道を通って帰ったり、場合によっては警察に相談したりしましょう。

医療機関を受診させる

胸倉を掴まれた、胸をドン!と押された、殴られた、といった暴力的な行為があった場合は、ぱっと見は大丈夫に見えても、必ず医療機関を受診させましょう。
また、身体的な怪我は無かったとしても、精神的に大きなダメージを受けている場合もあるので、必要に応じメンタルヘルスについても受診してもらうようにしましょう。

医療機関を受診することで、被害届に診断書を添付し傷害罪として厳しく対応を要請できます。

服や持ち物に汚破損が無いか確認する

痛みが無いから大丈夫だと思っても、実は、服や持ち物に汚破損が発生している場合もありますが、後から気が付いても、カスハラとの因果関係を調べることや弁償を求めることは困難です。

そのため、従業員の側でも「会社はフォローしてくれなかった」と不満の温床になりがちです。

そのようなことにならないように、カスハラが生じたときは、その時点で従業員の服や持ち物に汚破損が発生していないか確認し、発生している場合は必ず写真を撮り、日時、場所、撮影者、撮影状況などのメモとともに記録に残しましょう。

会社としての対応方針を伝える

カスハラをした相手に対し会社として止めるように通告した、入店禁止とした、文書で警告をした、場合によっては警察や弁護士に移管した、といった会社としての対応方針を従業員に伝えましょう。

これにより、従業員も「会社がしっかり守ってくれた」という信頼感となります。

会社として従業員を守るためには
相談窓口だけでなく“明確なガイドライン”が欠かせません。

対応基準が曖昧だと、現場は迷い、判断が属人的になります。
そこで、対応方針の整理のポイントをまとめた資料をご用意しました。

✅ガイドライン作成の6ステップ
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✅クレーム対応基本方針

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相談窓口の運用を継続的に機能させる3つのポイント

カスハラへの相談体制を構築しても、それだけで対策が完成する訳ではありません。
毎回、お客様も違えばトラブルの内容も違うので、常にアップデートさせていかなければ、環境変化に対応できず運用が止まると、従業員からの信頼を失うことになります。

そのため、相談体制構築後も以下のようなポイントに注意し、相談体制を継続的に改善して行きます。

情報の共有・分析を行い、商品やサービスの改善に活用する

その場はなんとか収めたとしても、根本原因を残したままでは、最悪の場合、他の顧客からまた同じカスハラをされる可能性があります。

そのため、カスハラが起きたら、相談から得た気付きなどを必ず社内の関連部門に共有し、原因や対策を分析することが重要です。
そうすることで、商品やサービスが継続的に改善され、カスハラが起こりにくい体質が作られていきます。

マニュアルを更新し、必要に応じて研修を行う

カスハラの発端が商品やサービスではなく、従業員にあった場合は、例えそれがクレーマー側の理不尽な理屈によるものだったとしても、その理不尽な行為に対する再発防止策を講じます。
そうしなければ、最悪の場合、また同じ理不尽なカスハラが起こりかねません。

そのため、そのような事態に巻き込まれないようにオペレーションを見直すとともに、必ずマニュアルにも反映し、必要に応じて従業員に研修も行うことで、誰もが同じように対応できるようにしましょう。

業務分掌(役割定義)と評価・報酬を連動させる

カスハラの相談窓口を作っても、その人たちに何をどこまで対応してもらうのかを定義しなければ、カスハラに関することは何でも押し付けられたりすることになりかねません。

そのため、必ず自社の相談窓口の役割を明確にしましょう。

また、役割分担と評価・報酬を連動させることも重要です。

なお、この「報酬」は、必ずしも金銭である必要はありません。

例えば、閑散期にだけ使える特別有給でも良いですし、学生アルバイトの場合は、顧客対応に対する真摯な態度を推薦状にしてあげるのも一法です。
「本当にありがとう」と心からお礼を伝えることも、重要な評価・報酬の一例です。

できるだけ多様な報酬のカードを用意し、シチュエーションに応じて使えるようにしましょう。

研修については、こちらのコラムで詳しく解説しています。

中小企業が最短で相談体制を整備する方法

人手やノウハウが十分ではない中小企業にとっては、しっかりとした相談体制を作ることは簡単ではありません。

そのような場合は、まずは、いざという時に従業員が迷わず行動できるように、相談フローの整備から始めることをお勧めします。

1日で相談フローを作るための6ステップ

ポイントは「完璧を目指さず、まず“動く最小限のフロー”を作る」ことです。

以下の手順であれば、1日(3〜6時間)で十分に形になります。

  1. 相談フローの“在るべき姿”を決める(例:担当者→直属の上司→経営者)
    フローに沿ってそれぞれの役割も決める
  2. 自社の“現状の流れ”を書き出す(ホワイトボードでOK)
    現状の弱点を明確化する
  3. 弱点を3つだけ改善する(全部やらない)
    全部やる”と終わらないので、 最も効果の大きい3つだけに絞る。
  4. 相談フロー図を作る(紙1枚でOK)
    改善点を反映した相談フローを1枚図にまとめる
  5. 関係者にその場で共有する(出て来た意見を反映する)
    「これで現場は動けるか?」 を確認する
  6. 掲示物・マニュアルに反映し周知する(最低限でOK)
    フロー図、相談窓口の連絡先、記録シートを整備する

実際に走り出して不都合を感じる箇所があれば、定期的に見直しをすることで、精度を高めて行きましょう。

従業員への周知の6つのポイント

現場の従業員は忙しいため、背景を理解しなければ自分からは動きません。

そのため、以下のようなポイントを押さえながら従業員に周知することをお勧めします。

  1. まず“なぜ必要なのか”趣旨を共有する
    法改正により全企業が義務化されることや従業員を守るためであることなど
  2. 相談フローを“1枚の紙”で説明する(長い説明は不要)
    予め作成した1枚図に沿って、フローと役割を説明
  3. 各従業員の“役割”を明確にする
    店長、サブリーダー、スタッフそれぞれのやること・やらないこと
  4. 従業員に“ロールプレイ”してもらう
    顧客対応の他、相談やその回答を受けた対応など
  5. 従業員からの質問に回答する
    疑問だけでなく、不安も丁寧に拾って解消に努める
  6. 相談窓口の連絡先や連絡方法などを伝える
    分かり易い様に1枚にまとめ、フロー図とともに掲示する

周知をして終わりとせず、趣旨とともに落とし込むことで、従業員が躊躇せず相談できる土壌を作り、抱え込みを予防します。

お勧めは社外専門家を窓口とすること

中小企業では、店長や経営者がクレームやカスハラ対応を抱え込みがちです。

そこでお勧めしたいのが、相談窓口の“二次対応”として社外専門家を設定する方法です。

社外専門家が入ることで、現場だけでは判断が難しいケースでも専門家が客観的に整理し、会社としての対応方針を示せます。

従業員にとっても、社内の人に知られたくない相談を安心して話せるというメリットがあります。

また、相談内容を聞くだけでなく、マニュアル整備や再発防止策の構築、店長研修など、組織改善まで一気通貫で支援できるのも社外専門家の強みです。

専任担当者を置けない中小企業でも、スポット相談や月額顧問などを活用すれば、低コストで“専門部署と同等の機能”を持つことができます。

まとめ|適切な相談体制は、従業員の退職を防ぐ

カスハラやクレーム対応は、現場の努力だけで自然に改善するものではありません。

むしろ、相談体制が曖昧なまま放置されるほど、従業員は「助けてもらえない」と感じ、離職やメンタル不調につながりやすくなります。

一方で、相談窓口や相談フローが整備されると、店長や経営者の負担が軽減され、従業員も安心して働ける環境が生まれます。

結果として、顧客対応の質が安定し、組織全体のサービスレベルも向上します。

ただ、中小企業が限られた人員の中で相談体制を整えるのは簡単ではありません。

「何から手を付ければいいか分からない」「うちの規模でもできるのか」と感じるのは自然なことです。

そのような場合は、第三者の視点で現状を整理し、優先順位を明確にするだけでも、改善のスピードは大きく変わります。

まずは一度、専門家に相談し、貴社の状況に合った最適な進め方を確認してみてください。

クレーム・カスハラが自然に解決することは“絶対に”ありません。
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