クレームで「あいつをクビにしろ!」と言われた時の対応とカウンタートーク
クレームやカスハラの対応で、「あいつをクビ(首や馘とも)にしろ!」と言われたことがある方は、少なくないでしょう。
対人接客クレームの常套句と言えるセリフで、業種・業態を問わず非常に多いクレームです。
クビを要求するお客様は、ある意味で正義感が強く、自分の判断基準や価値観に対して無条件に「正しい」という自信を持っています。
そのため、他者に対しても高過ぎる水準の対応を求めたり、自らの価値観を押し付けることがあります。
また、執念深く根に持ちやすい性格の持ち主という場合もあります。
そのため、自分の思い通りに行かない場合に、形に残る復讐を果たそうとして、その担当者のクビを要求するのです。
筆者自身、筆者を指して何度も「あいつをクビにしろ!」と言われましたし、マネージャーになってからは、部下を指してクビにしろと言われて来ました。
その経験を通じて言えることは、常套句であるからこそ、明確な対応フローを定めておくことが極めて重要である、ということです。
そこで本コラムでは、クレームやカスハラの対応で「あいつをクビ(首や馘とも)にしろ!」と言われた場合の対応について、具体的に解説します。

クレームで「あいつをクビにしろ!」と言われた時の対応とカウンタートーク
クビではなく、起きた問題にフォーカスする
クビを要求される中でも、もちろん、時には明確に自社の従業員の側に非があり、お客様にお詫びしなければならない場面もあります。
しかし、それは飽くまで、非礼や不手際の範囲でお詫びすれば足りることであり、例えどのようなことをしたとしても、その場で即時解雇をすることはできません。
そのため、「クビにしろ!」と言われた時の基本的なスタンスは、お客様からご事情を伺い、しっかりと事実関係の確認を行ったうえで、組織のルールに則って対応することです。
例えクビにせざるを得ない程の非があったとしても、お客様に介入させることは不適切です。
お客様との信頼関係を構築することも従業員の仕事の一つと考えれば、お客様がお怒りである事実や、その理由についても考慮材料にはなるかもしれません。
しかし、それを含めて事実関係を確認し、処分を含め組織として対応するという一貫したメッセージを伝えることが、「クビにしろ!」と言われた場合の基本的な対応となります。
具体的なカウンタートークとしては、以下のような内容を丁寧に伝えていくことになります。
| 恐れ入りますが、事実確認もできていないこの段階で即時解雇にすることはできません。 ただ、お客様がお怒りであられることは間違いがなく、その原因が従業員の不適切な対応だったなら、社内規程に則って厳しく対応して行きます。 恐れ入りますが、具体的なご状況を教えていただけますでしょうか。 |
まず、お客様のおはなしを傾聴する
とはいえ、自らの判断基準や価値観を無条件に「正しい」と信じていたり、執念深く根に持ちやすかったりする性格の持ち主に対しては、「従業員の処遇は当社で決定しますので、ご要望には添いかねます」など、真っ向から拒絶することから入ると火に油となる可能性大です。
そのため、まずはお客様のご意見を傾聴することが大切です。
ただし、ただ一方的にがなり立てられ続けるだけで延々時間を浪費してしまうような状況になってしまったら、話が先に進みません。
そのため、お客様が同じ話しを繰り返すようになって来たり、話と話しに間が空くようになって来たり、といったタイミングを見計らい、以下のように確認をすることで、お客様の発言意図をこちらがしっかりと理解していることを伝えて行きます。
| もし違っていたらご訂正いただきたいのですが、今回の対応では、従業員の●●という態度、その後の▲▲という対応に問題があった、ということでございますね? |
なお、こういった確認において時折、「要するに~」という言葉から始める方がいますが、筆者はあまりお勧めできません。
ただでさえお怒りのお客様に対して、お客様のお話しを勝手に端折っているように聞こえる可能性のある話し方は、極力避けた方が無難でしょう。
ちなみに筆者は以前、ちゃんと纏められないまま「要するに」と話し始めた結果、お客様の原文より長々と話してしまったことで、「どこが要約なんだよ!」と更にお怒りを買ってしまった経験があります。
要約したり端折ったりする必要はありません。
しっかり傾聴した結果の、あくまでも理解のすり合わせとして、上記例のように下から行くことをお勧めします。
自社のスタンスを示し、お客様の干渉を防ぐ
お客様と認識の擦り合わせをしたら、以下のように自社のスタンスを伝えることで、お客様のそれ以上の干渉を防ぎます。
| 大変貴重なご指摘をいただき、ありがとうございました。 お話しいただいた内容は、私どもにとっても非常に重要なものだと思いますので、優先度を高く設定して、自主的に改善に取り組んで行きたいと思います。 |
つまり、ここから先は企業自身でちゃんと取り組みますよと宣言をすることで、お客様が干渉する余地を排して行きます。
また、上記のように伝えてもなお、「クビにしろ!」と要求して来る場合には、以下のように伝えて、面談のクロージングに向かうと良いでしょう。
| 誠に申し訳ございませんが、法令上、即時解雇はいたしかねます。 ただ、そういったご要望があったことは、人事考課上も一定の材料にはなりますので、その点を含めて責任を持って指導なりしてまいります。 ご期待に沿えるよう努力いたしますので、今後ともよろしくお願いいたします。 |
なお、自社のスタンスを示すときには、以下の点に注意が必要です。
その場しのぎの「嘘も方便」はしない
注意点の一つ目は、これらのセリフを決して、その場しのぎの嘘も方便としては使わないことです。
どのような非礼があったとしても従業員を即時解雇できないことは、労働基準法に定められた大前提です。
また、従業員の大事な仕事の一つとして、お客様との良い関係を作っていくことがある以上、そのお客様からお怒りの声が寄せられたことは、(程度は別としても)人事考課上の一定の材料になることは当然です。
「クビにしろ!」と言われた時は、嘘も方便で誤魔化そうとせず、上記を真正面から伝えたうえで、人事考課については企業が判断することを伝えて行きます。
本当のことであるからこそ、対応に迫真性が生まれ、「当社が責任を持って対応します」という言葉にお客様が納得してくれる可能性も生まれます。
従業員の教育機会とする
注意点の二つ目は、なぜお客様がそれほどまでにお怒りになったのか、従業員と一緒に振り返り、再発防止を考えるなど、教育機会とすることです。
それこそが、本当の意味での「人事考課における一定の材料」だと思います。
もしお客様が仰るような非礼が本当だったら、信頼していたはずの従業員がなぜそのような対応をしてしまったのか、一緒に考えてあげ、マインドの教育をする必要があります。
一方、お客様のお怒りが理不尽なものだったとしても、業務フローの改善などにより、そういった理不尽なお怒りの被弾を避けることができないかなど、検討の余地はあるはずであり、そのようなことを一緒に考えることは、従業員の成長に繋がるはずです。

「担当者を替えろ!」と言われたら
労働基準法により即時解雇ができないと伝えると、「なら担当者を替えろ!」とご要望されることがあります。
このようなクレームに対しても、原則としては、まずはお客様のご意向を傾聴します。
具体的には、どういった問題が生じているのか、なぜ担当者を替えたらその問題が解決するのか、合理的な説明がされるのを確認します。
そのうえで、お客様の説明に合理性がなく、感情・感覚によるものであれば、それらに対し配慮を示しつつ、基本的には自社で対応することを伝えクレームを収めるようにします。
具体的には、以下のようにお伝えし、お客様にご理解いただくように促します。
| 該当の従業員に対しては、私が責任を持って指導をいたします。 人間のやることなので、すぐに生まれ変わったように変わるというのは難しいかもしれませんが、本人も継続的に努力したいと申しておりますので、もうしばらく様子を見て頂けないでしょうか。 |
また、上記のように伝えると、指導内容や指導結果の報告を求められる場合もあります。
しかし、従業員の教育指導はあくまでも企業側の専管事項なので、それらについてまでお客様の干渉を受けないように、以下のように明確に防衛線を張ります。
| 人事情報に該当するため、お客様といえども、報告はいたしておりません。 ただ、私が責任を持って指導を行い、本人も努力したいという意向を示しておりますので、ご期待に応えられるかどうか、今後の対応を見ていただければと思います。 |
異性の担当者に変更を希望する場合
男性が、担当者を男性から女性に変更するよう希望する場合や、その反対に女性が、担当者を男性に変更するよう希望する場合です。
この場合、「クビができないならせめて担当を替えろ!」という理由のほか、「女性の方が感受性豊かで細かいところに気が付く」「男性の方が力強さや安心感・信頼感がある」といった期待を持っていることもあります。
そのため、このような要請を受けた場合には、ほかと同様に、まずはお客様が変更を希望する理由を丁寧に拝聴することが重要です。
そのうえで、もし「クビができないならせめて担当を替えろ!」という理由であれば、以下のようにお伝えし、理解を促して行きます。
| ご希望は承知しました。 ただ、当社も現状、交代要員の余裕はありませんので、ご希望に関しては私から指導し、改善していくということで、ご理解賜わりたいと思います。 |
また、後者の理由の場合にも、よほど重大な過不足なら考慮しますが、お客様側のイメージの範疇であれば、ハラスメントなどのリスクを回避するため、基本的には異性への交代は承らないようにします。
上記と同様に、お客様のご希望をしっかりと拝聴し、現在の体制でご希望に応える努力すると伝え、理解を促して行きましょう。
同姓の担当者に変更を希望する場合
前項とは反対ですが、これは、例えば何となく話題がかみ合わない、不潔な印象である、雑談を含めた会話が性的言動と捉えられるリスクを排したい、その他様々な理由があります。
現実問題として、自社にもお客様にも様々な人がいるので、どうしても「合わない」ということはあります。
特に営業担当者の場合などは、お客様との関係構築も仕事のうちと言われることもありますが、お客様に嫌悪感を持たれているのに放置してその担当者に対応を続けさせると、攻撃的・威圧的なカスハラに発展することがあるので、注意が必要です。
この場合も、他と同様にまずはお客様のご意向を丁寧に傾聴したうえで、現在の体制でお客様との信頼関係を回復できる可能性があるかを、上長も交えて検討しましょう。
まとめ|従業員への処遇に責任を持つのは企業
「クビにしろ!」と言われるのは、ほとんどの場合、商品やサービスではなく従業員の接客態度に起因しています。
そのため、丁寧にご意見やご希望を傾聴したうえで、指導すべきものは指導し、是正すべき点は是正するように対応して行くのが、対応の基本方針となります。 クレームやカスハラで「クビにしろ!」といった事を言われたことがある方は、基本的な対応方針について、業務フローの整備やマニュアル化などの対策をすることをお勧めします。
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