【人員不足への対策】採用だけじゃ無い5つのステップ

人件費の高騰に伴い、人手不足が深刻化しています。もちろん、どの会社も採用に力を入れ、給与を上げたりなどの努力をしていますが、それでも、採用難や人材不足は解消せず、空前の売り手市場が続いています。

東京商工リサーチが2023/04/17に公開した『2023年 企業の「人手不足」に関するアンケート調査』によると、全体の66%が「正社員不足」(大企業では73%が「正社員不足」)となっていました。非正規社員は正社員に比べ不足感の深刻さが少ないようですが、それでも、飲食、宿泊、その他生活関連サービスなどの業種は人手不足が慢性化しており、アフターコロナの反動需要やインバウンド需要に対応できず、成長機会を失い倒産となる企業もあります。
弊社でも人手不足についての相談をいただくことがありますが、ある都内の飲食店は、ゴールデンウイーク直前にアルバイトが複数退職し、時給を1,300円超まで上げて募集しても応募が全く無く、お店を回すことができずに営業時間の大幅短縮を余儀なくされているといった深刻な状況でした。

本コラムでは、このような人手不足を背景に、特にパートやアルバイトなど非正規社員の人手不足を解消するためにできること・やるべきことを、5つのステップでご紹介いたします。

【人員不足への対策】採用だけじゃ無い5つのステップ

採用の前に、まず、業務改善を徹底的に行う

採用や育成には時間がかかりますが、業務の改善なら今すぐできます。また、無理・無駄・ムラのある状態で採用をしても、本当に必要な人数が分からず、かえって人件費が過剰になる可能性もあります。
そのため、まずは以下の様なポイントを踏まえて業務改善を行い、生産性を高めながら採用を行うことが重要です。

ECRSの視点で分析する

『ECRS』とは、業務改善の視点であり、Eliminate(排除:無くせないか)・Combine(結合:まとめられないか)・Rearrange(交換:変えられないか)・Simplify(簡素化:簡単にできないか)の頭文字を並べたものです。

「排除:無くせないか」の検討

最初に「無くせないか」を検討するのは、業務自体を無くすのが一番インパクトが大きいからです。
例えば、深夜営業の人員が確保できない場合に、無理して高い時給で従業員をかき集めるのではなく思い切って深夜営業を止めてしまう、といったことです。

なおこの場合、日中営業を止めて深夜営業に集中した方が、深夜需要を一手に引き受けることになり、業績の拡大に繋がる可能性もあります。深夜営業の人手が足りないからと安易に深夜営業を中止にするのでは無く、積極的な営業改善機会と捉え、どのような対応が良いかを検討しましょう。

「結合:まとめられないか」の検討

同じような業務をまとめて一度で終わらせられるようにしてしまえば、生産性は大きく向上します。
例えば、客先に配達に行ったついでに次の注文が無いかを確認して来たり、類似出席者の複数の会議をまとめ一度で終わらせたり、といったことが挙げられます。

「交換:変えられないか」の検討

人がやっていた業務の自動化や(機会への交換)、セルフサービス(顧客への交換)を検討します。
また、会議を、長時間の集合開催から短時間のオンライン開催に変更することで、営業時間中でも幹部会議を開催できるようにするといったことも、業務プロセスを変えることによる生産性の向上となります。

「簡略化:簡単にできないか」の検討

無くしたりまとめたりはできなくても、業務をシンプルで手間がかからないものにできれば、生産性は向上します。また、ミスをする可能性も減りますし、チェックの精度も向上するため、手戻りも減少します。

採用を強化する

業務改善がある程度進んだら(平行してでも可)、採用の強化に着手します。
この時、ただ目の前の人手不足を解消するための採用では無く、企業文化、チームワーク、雇用条件などを見直す機会とすることを考えましょう。

欲しい人材像を明確化する

シフトの穴や、必要なスキルや経験、既存従業員で活躍している人の特性などから、欲しい人物像を明確化します。この時、マネジメントの視点だけでなく、必ず現場のリーダー層からも意見を聞き、具体的でリアリティーのある情報に落とし込みましょう。

自社で働く事のメリットを明確にする

給与の高低だけで採用をしようとすると、人件費の高騰に拍車がかかり、企業の経営を圧迫します。
一方、従業員の側でも、もちろん給与が高いことは重要ではありますが、必ずしもそれが全てではありません。給与水準が低くて採用を苦戦していた会社が昇給を行ったとしても、不満が解消するだけで、満足にはつながりません。周囲の同業他社がもっと高い給与水準を提示したら、再び不満になるか、転職される可能性もあります。

「この会社で働くことに対する従業員のメリット」を考える場合は、できるだけ給与以外の条件も考えましょう。

まずは、既存メンバーに紹介を依頼する

人材要件や採用条件が明確になったら、まずは既存従業員に自社で働いてくれそうな人の紹介を依頼しましょう。紹介の場合、外部媒体と異なり、凝った募集広告を作る必要が無いため、すぐにでも声掛けしてもらえます。
また、外部媒体と異なり、以下の様なメリットがあるので、非常に有効な手段です。

  • 紹介する従業員が、「この会社に合うか」など一定のフィルタをしてくれる。
  • 紹介する従業員が、良いところ・悪いところなどを率直に伝えたうえで、紹介に応じた人が応募してくれるので、働いてみて「こんなはずじゃ無かった」といったミスマッチが起こりにくい。
  • 実際に働き始めた後も、紹介した従業員が間に入ってくれるので、会社に馴染みやすく、早期戦力化が期待できる。

退職者にカムバックを打診する

採用チャネルで見落とされがちなのが「退職者へのカムバックの打診」です。

過去に自社で働いたことがあれば、能力、性格、退職理由なども詳しく分かっているので、新規採用に比べはるかに低いリスクで採用できます。フリーターや主婦などであれば、一度退職しても戻って来てくれる可能性はあるので、非常に有効な手段です。また、もし本人には断られた場合でも、人間関係のできている相手であれば、事情を説明することで良い人材を紹介してくれる場合もあります。

外部チャネルで募集・採用をかける

既存メンバーへの紹介依頼や退職者へのカムバック打診だけでは人手不足を賄い切れない場合、外部への募集・採用を検討します。自社が求めている人材はどんなチャネルを見ているのかを分析し、コストとのバランスを考えながら募集媒体を検討しましょう。

従業員を定着させる

人手不足の解消において、せっかく採用した人材の早期退職は絶対に避けたい事態です。特に外部媒体やエージェント経由で採用していた場合、研修期間中の給与や育成担当者の給与に加え、媒体掲載やエージェントへの手数料などで高額の支払いが発生します。それなのに人手不足は解消せず、そのうえ、また一から採用対策をやり直すことになります。

人手不足を解消するためには、採用はもちろん重要ですが、採用してからのプロセスが本番と言っても過言ではありません。以下の様なポイントを押さえ、確実に定着してもらうように心がけましょう。

退職タイミングと退職理由を把握する

ほとんどの業種・業態で、採用後1年くらいの間では退職が増える一定のタイミングがあります。例えば、最初の1週間程度は一般的に退職率が高まりますし、一定の研修期間を設けている場合は研修終了の直前に退職率が高くなります。ちなみに弊社の経験では、なぜかある程度長期の研修(1~3か月くらいなど)がある場合の方が、終了直前に退職率が高くなっていました。また、研修終了後も3か月や半年、夏休み直前など、その会社によって必ず退職率が高くなるタイミングがあるはずです。従業員の定着率を高める場合、まず、過去の実績をしっかり確認し、退職率が高くなるタイミングを数字ベースで把握しましょう。

また、退職率の高低だけで無く、退職理由を把握することも重要です。人間関係が原因の場合、その場で急に呼び出して質問しても本人が本当の退職理由を話してくれることは少ないですが、同僚や現場のリーダー・サブリーダーなどに訊けば知っていることを教えてくれたりします。また、普段からメンバーとの会話を心掛けたり休憩室で一緒に食事を採ったりすることで、自然と情報が集まったりします。

新人を見守る仕組みを作る

ある会社では、新人が配属されると、複数の育成担当者が、会話、得意、苦手、教えたこと、気になったことなどの具体的な情報をカルテとして共有していました。このカルテは、単なる連絡帳では無く、育成担当リーダーが毎日必ず目を通し、その内容に沿って育成チーム全員で声掛けしたり追加で研修をしたりすることで、新人の不安を早期に解消し、新人側からも話しかけやすい雰囲気を作るために活用していました。

新人を見守る際は、「頑張っているね」など、曖昧で当り障りのない言葉だけでは不十分であり、具体的に声をかけてあげるからこそ新人の側からも具体的な心配を打ち明けてくれます。一方、特定の誰かだけがいつも具体的な声掛けをしていると、「見張られている」と感じ、かえって萎縮してしまうことになりかねません。
そのため、大きな課題や方向性は関係者全体で共有しながら、ポジティブな出来事や頑張ったことは全員で声を掛けてあげ(「昨日、●●で頑張ったみたいですね」「▲▲さんから、■■がすごく上手になったって聞きましたよ」など)、ネガティブな出来事や改善点は、その場で確認した担当者かリーダーが具体的に伝えてあげるなど、役割分担をしながら見守ってあげると良いでしょう。

また、そういった声掛けの前段階として、毎朝の挨拶や、遅刻や早退した後に出勤した際は「大丈夫?」と心配の声掛けしてあげるなど(程度にもよりますが)、普段からのコミュニケーションも心掛けましょう。

勤怠を安定させる

人間は機械では無いので、100%無遅刻無欠勤という訳には行きません。例えば、1か月で20日出勤する従業員が1日休めば欠勤率5%、2回休めば欠勤率10%です。これを高いと見るか低いと見るかは個々の状況によりますが、1日辺りの平均出勤人数が100人の場合、欠勤率を10%から5%に改善するだけで、5名採用したのと同じだけの人員創出効果があります。

ポイントは、適正値の把握と、回復手段の明示です。

遅刻・欠勤の適正値を把握する

私見ですが、子育てや介護を抱える主婦パートの場合であれば、月に1~2回くらいの欠勤は止むを得ず、それを見越したシフトや採用計画を立てることが現実的な対策と考えます。ただし、安易に欠勤を許容するのではなく、事情を理解したうえで遅刻でも出勤できる場合は出勤してもらう、といった調整は必要です。一方、事情にもよりますが、1人暮らしのフリーターであれば事情は違ってきますし、正社員や契約社員など、勤務の日時がある程度決まっている従業員なら5%でも高過ぎるでしょう。

勤怠を安定させるためには、従業員の属性などに応じた勤怠の適正値を把握することが第一歩です。

回復手段を提示する

例えばその日に遅刻や欠勤をしてしまったとして、一方的にマイナス評価を付すだけで無く、他の不足日に追加出勤してもうなどマイナスを回復させる手段を提示してあげれば、従業員にとってもメリットが生まれます。また、事前に遅刻や欠勤が生じると分かった場合には、シフトの譲渡や交換など、従業員自身で予めマイナスを補填させる仕組みを作っておけば、シフトのマイナス自体が生まれにくくなります。

業務の生産性を高める

生産性を高めるためには、大きくは、業務改善とスキル向上の2つのアプローチがあります。

業務フローの改善

業務改善の基本的な方向性は前述しましたが、一度実施したら終わりではありません。新しい商品やサービス・業務などは次々にリリースされるので、そこに対応して行かなければ、次第に業務フローが実態に合わなくなり、生産性が低下して行きます。業務の計画や設計の段階で十分な生産性を確保できていなければ、人員を採用しても焼け石に水です。生産性は十分か、業務フローは適正か、定期的に検証を行い、改善し続けるようにしましょう。

なお、業務フローの改善に伴い設備や機械、システムなどに投資を行う場合、公的な補助金を使える場合があります。大規模な投資により生産性を大きく向上させることもできるので、補助金の要件に当てはまる場合にはぜひ活用をお勧めします。

業務スキルの向上

適切な業務フローを設計できたら、従業員自身のスキル向上を図ります。この時、方向性としては職務充実と職務拡大の2つの方向性で検討します。

職務充実とは

担当する業務を質的に高め、管理的な要素を加え、高度化して行くことです。
例えば、料理を作るだけだったのが発注も担当する、新人教育も担当する、といったことです。
ポイントは、以下の3点です。

  • 作業だけで無く背景や目的などをしっかり理解してもらう(上位管理者からちゃんと伝える)
  • 顧客満足や職場の生産性向上などの目標を自律的に達成するため、仕事内容に応じた一定の権限を委譲する。
  • 権限を委譲した以上はあれこれ口出しはしない。ただし、定期的な面談とフィードバックにより、不安を解消し、権限を行使できるよう、目一杯サポートする。

なお、職務充実を行う場合、パート・アルバイトの正社員化や、仕事内容に見合った処遇の向上など、一般的に雇用条件の改善を伴うことが多く、その条件によっては公的機関の研修や助成金を受けられる場合もあります。

職務拡大とは

担当する業務の種類を増やし、いわゆる多能工化することです。
例えば、料理の担当者が、サラダ類だけから、焼き物、揚げ物、煮物など、作れるものを増やして行くことなどが該当します。
ポイントは、以下の3点です。

  • スキルマップなどを用意し、職種や職責に応じてスキルとその習得状況を可視化する。
  • 標準的な業務のやり方を決めることで、できるだけ同じ職種・職責のメンバーどうしでスキルの共有ができるようにする。
  • 新人期間中に習得するべきミニマムスキルや、「ここまでできるようになったらプラス●円」といったラインを決め、関係者に共有しておく。

まとめ

ある程度の規模の組織で人手不足をゼロから着手する場合は、需要予測から採用計画を立て、採用し、育成するまで、1年以上かかるプロジェクトになります。一方、従業員が何人かまとめて退職すると人手不足はすぐに生じ、ほとんどの場合は1年がかりで解消する余裕はありません。今回ご紹介した全体像の中でも、例えば業務改善など普段からできることはやり、求める人物像についてリサーチをしておくことで、いざ人手不足が生じた時にすぐに採用に向けた動きをとることができます。同様に、普段から従業員の遅刻、欠勤、その理由などにしっかり目を配ってあげ、細やかに声を掛けてあげることも重要です。

従業員の遅刻や欠勤の理由、ご家族の状況、モチベーションの源泉、困っていることや気になっていること、退職の理由(または退職を思い立った要因)は、通り一遍の業務だけでは把握できません。やはり、普段からの細やかな声掛けにより信頼関係を作り、定期的な面談により相互理解を深めて行くより他に方法は無く、近道はありません。そういった地道な取組みこそが従業員を定着させ、良い企業文化を醸成し、紹介やカムバックへと繋がり、人手不足の解消への近道となります。

弊社では、数十名規模から数百名規模まで様々な組織の人手不足解消に関わって来た経験があり、今回ご紹介した業務改善から勤怠改善までをトータルでご支援可能です。ご要望に応じて、貴社に合わせた勤怠管理方法の提案や、面談のトレーニングなども対応できます。

人手不足にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。

著者のイメージ画像

花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。