刺さるプレスリリースの書き方/基本テンプレートと背景を解説

プレスリリースには、一定のテンプレート(フォーマット)があります。
ネットで調べればそのテンプレートについて解説しているサイトは沢山見付かりますし、企業サイトには、実際のプレスリリースが公開されている例も少なくありません。

しかし、そういった解説サイトを見ながら作れば成功するかと言うと、ほとんどの場合はそうではありませんし、企業のプレスリリースはほとんどの場合、自社用にアレンジしたテンプレートを使っていますが、実際にメディア・報道機関に掲載される例はごく僅かです。一方、同じテンプレートを使っていながら、何度も掲載される企業もあります。

もちろん、中身にニュースバリューがあることは大前提です。
ですがなぜ、同じようなテンプレートを使っていながら、大多数の失敗とごく一部の成功・メディア掲載に分かれるのでしょうか?
その理由の一つに、背景を正しく理解しないでテンプレートを使っていることが挙げられます。

刺さるプレスリリースの書き方/基本テンプレートと背景を解説

プレスリリースの「5秒の壁」を超える

メディアは常に、ニュースバリューのある情報・報道のネタを求めているので、プレスリリースを送ること自体が嫌がられることはありません。その一方では、以下のような背景と注意点を踏まえておかなければ、どんなにプレスリリースを送っても、成功する可能性は高まりません。

(背景)

  • 1人あたり、1日に50件から多ければ2~300件のプレスリリースが届く
     なので、採否は初見の5秒程度で決まり、そこで選ばれなかったらセカンドチャンスは無い
  • 読み手は、自社や自社の業界についてあまり詳しく無い
     つまり、専門用語、内輪話し、細かすぎる情報、どこがすごいのかといったことは判断できない
  • 飽くまでも報道機関なので、『企業の宣伝』には警戒心が強い
     だから、宣伝だと思われたら取り上げてもらえないし、その後も敬遠されかねない

(注意点)

  • 5秒でポイントを把握できるように、重要なことは最初に書き、内容を絞り、要点を強調する
  • 専門用語、内輪の話し、細かすぎる情報は使わない
  • 商品やサービスの機能では無く、それによって解決される社会課題や背景を明示する

プレスリリースの一般的なテンプレートは、単に慣習的にそう決まっているのでは無く、メディアへの情報提供時の注意点を抑えるために効率的だから普及して来ました。

ですが、今やプレスリリースのテンプレートは浸透し、表面的にテンプレートを使うだけでは、1日に数十~数百件も届くプレスリリースの中に埋もれ、読んでもらう機会は与えられません。ですから、競争相手の中で抜きん出て、最初の「5秒の壁」を突破するためには、背景と注意点をしっかり理解したうえでテンプレートを使いこなすことが重要です。

基本となるフォーマットを理解する

背景と注意点を踏まえ、具体的なポイントを見て行きます。

全体の構成要素

基本的に、よほどのことが無い限りは、下記の要素をA4で1ページにおさめます。

  • ヘッダー
  • タイトル
  • リード
  • ポイント
  • 写真・イラスト・グラフなど
  • 本文
  • 連絡先

プレスリリースのニュースバリュー、つまりそのプレスリリースの内容が報道に値するものであることを伝えるためには、商品スペック、実験データ、利用方法といった詳細情報を伝える必要があり、それらを含めるとどうしても1ページには収まらない場合もあります。
しかし、それらはこちら側の事情であり、メディアには関係ありません。メディアが初見に費やすのはせいぜい5~10秒であり、プレスリリース自体のボリュームを増やしてしまうと、内容がどんなに意義のあるものでも、そもそも読んでもらうことができなくなります。

ですから、そういった場合には、プレスリリースは飽くまで1ページに納めて結論や重要なポイントに絞って伝え、詳細情報は添付資料とします。簡潔なプレスリリースで興味を喚起し、内容の重要性を理解してもらったうえで、必要に応じ添付資料を読ませることが有効です。

ヘッダー・・・発信者と、プレスリリースであることを伝える

ヘッダーには、発行日や自社の名前に加えて、左上に「プレスリリース」「報道関係各位」などと記載することで、メディアに対する情報提供であることを明示します。
いつ以降に報道して欲しい、といった希望がある場合には「情報解禁日:yyyy/mm/dd hh:mm」といった情報を記載することもあります。ただし、こういった記載はメディアに一手間かけてしまいますし、「ニュースバリューがある!」と思った時点ですぐ報道に載せてもらわないと、次々登場する新しいニュースに負けて露出が得られなくなる可能性があります。

タイトル・・・中核となるニュースバリュー(重要な価値)を伝える

プレスリリースで最も重要な要素は、圧倒的にタイトルです。
メディアやその先にいる視聴者・購読者にとって、なぜ、どのように重要なのかを端的に伝える印象的なタイトルを、全力で考えましょう。

タイトルが悪ければ、中身がどんなに良くても読んでもらうことはできません。
反対に、一度不発に終わったプレスリリースでも、タイトルを改善して出し直すだけで取材や掲載に辿り着くこともありますし、プレスリリースのタイトルがそのままメディアのタイトルになる場合もあるくらい、極めて重要な項目です。

(POINT)

  • 本質的なニュースバリューが何かを考え抜く
  • 1行は16文字くらいまで、全部で2行以内
  • 読み手の興味を惹く強い単語は左側(先に目にする側)に入れる
  • 特長、数字、固有名詞を盛り込む
  • 広告色・営業色は厳禁
  • 「世界初」「当社のみ」などの表現には注意(有利誤認にならないように)

リード文・・・5W2Hと、メディアにとってのメリットを伝える

リードで重要なのは、5W2Hを正確に伝えることです。

限られたスペースなので、リードだけで全てを網羅することは困難です。ですから、重要な情報は『ポイント』として切り出すなど工夫しながら、3~5行くらいで簡潔かつ正確にまとめます。

(POINT)

  • 曖昧な表現、情緒的な表現、奇をてらった表現は使わない
  • KISSの法則を守る(Keep it short and simple:事実を簡潔に)
  • 専門用語、形容詞、抽象的な表現、感嘆符(「!」など)は極力避ける
  • 正確さに万全を期す(特に、日付け、価格、販売チャネル、固有名詞などは必ずWチェックする)
  • メディアにとってのメリットを含める(例:誰に取材できる、どんな絵が撮れる、実物に触れられる)

ポイント・・・特に取り上げて欲しい情報と、読者・視聴者のメリットを伝える

全体の中で、「特にここを取り上げて欲しい」という重要な情報を3~5つに絞って強調することで、自社のアウトプットに近づけます。

(POINT)

  • 社会課題はPEST視点が使いやすい:政治的 (Political)、経済的 (Economic)、社会文化的 (Socio-cultural)、技術的 (Technological)の頭文字
  • 客観的なエビデンスを示す(数字、研究データ、実名を出せる顧客や専門家など)
  • 愛や情熱をもって伝えられる情報を優先する
  • メディアでは無く、読者や視聴者にとってのメリットを含める

本文・・・社会的課題や開発秘話など、プレスリリースの背景を伝える

リード文やポイントには書ききれない情報を簡潔にまとめます。

(POINT)

  • 一文一意に絞る(社会的課題、開発秘話、顧客の声、などに絞って掘り下げる)
  • 基本は文章調でまとめ、下線や太字などの書式設定は使わない
  • タイトルやポイントとの結び付きを意識する

連絡先・・・いつ、誰に、どうやって連絡すれば良いのかを伝える

担当者名や連絡先だけで無く、受付可能時間も記載します。

なお、プレスリリース配信直後だけでも、受付可能時間は8:00-22:00など平時より拡大することがお勧めです。

まとめ

繰り返しになりますが、プレスリリースは膨大な数の競合を相手に最初の5秒で勝負が決するため、中身が良いのは当然として、見やすく、直感的に分かるものにすることが重要です。

ボリューム・・・絞り込みが良いか、詰め込みが良いか

情報量が少な過ぎるプレスリリースは、読み手に対し、スカスカで価値が無い印象を与えるので、一定の情報量が必要です。一方、熟語や専門用語、改行の省略などで情報を詰め込み過ぎると、可読性を損ねることになるので読んでもらえなくなる可能性があります。

実際に最適化しようとすると分かりますが、情報の取捨選択は決して簡単ではありません。優先度の低い情報を見極められずボリュームを削れないか、反対に必要な情報が見極められずスカスカになってしまうか、いずれも簡単には改善できませんし、会社によっては社や部の方針で制約を受けることもあります。

しかし、プレスリリースは飽くまで、メディアに対し取材のきっかけを与えるものであり、掲載の前には必ず自社サイトの調査や実際の取材を通じて詳細を確認されます。もちろん、中心価値やラストワンピースが漏れてしまっては、そのプレスリリースのニュースバリューがぼやけてしまいますが、プレスリリースだけで全ての情報を網羅する必要はありません。
重要情報はしっかりとアピールしながら、そうでは無い情報は大胆に外し、選択と集中をすることにより、ニュースバリューと可読性のバランスを調整します。絞る詰め込むかだけで無く、メディアが自社サイトを確認に来た時や実際に取材を受けた時を想定し、どのような点に着目して欲しいかを考えながら、本質的な価値だけを残して行くことが、見やすく、初めてのメディアでも直感的に分かりやすいプレスリリースに繋がります。

色使い・・・白黒が良いか、カラフルが良いか

色使いに関しては、絞り込むことが重要です。

時々、スーパーのチラシかと思うような派手でカラフルなプレスリリースを目にすることがありますが、当社ではお勧めしておりません。むしろ、お勧めは2~3色に絞り込んだシンプルなものです。

理由は、以下の通りです。

  • 色が多いと、強調されているポイントが分からなくなってしまう。
  • プレスリリースを送った後、メディア側がどう扱うのかが分からない。つまり、カラーで送ったのに社内配布時には白黒コピーされたりすると、読み難くなるだけ。
  • FAXで送る場合には適さない(メディアにはまだFAXを使っている会社が少なくありません)。

最後に

プレスリリースが綺麗だから、目立つからといって、それだけでメディアが取り上げることはありません。言うまでも無く、重要なのは中身であり、ニュースバリューです。
ですが、中身をしっかりと呼んでもらうためには、見やすく分かりやすいプレスリリースが必要です。そして、中身をしっかり考えるためには、広報に取り組み始める初期段階でプレスリリースのテンプレートを作り上げ、次回以降は同じテンプレートを使い回すことが有効です。そうすることにより、企業自身の作業負荷も削減できますし、メディア側に企業を覚えてもらうことにもつながります。

当社では、コンセプトの設計からプレスリリースの作成、アフターフォローまで、一貫して支援する『プレスリリース支援』を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

著者のイメージ画像

花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。