社内広報の事例紹介 リモートワーク時代に成功するポイント

コロナを機に中小企業やベンチャー企業にもリモートワークが浸透してから、以下のような声を聞くことが多くなりました。
「何となく社内の空気が停滞しているように感じる」
「日常業務はうまく行っているけれど、創造的なコミュニケーションや新商品・サービスが生まれにくくなった」

一方で、リモートワークの導入以降の変化に気付いてはいても、一度導入したリモートワークを完全に止めることは困難です。特に、出社率の低減に伴うオフィスの縮小や遠距離在住者の採用をした場合は、尚更難しいでしょう。しかし、リモートワークの環境変化をしっかり把握し、その変化に対応した社内広報を行うことで、上記のような停滞感は解消できる可能性があります。

今回は、リモートワークで社内広報を成功させるための、具体的なポイントをお伝えします。

社内広報の事例紹介 リモートワーク時代に成功するポイント

【背景】リモートワークの普及により、上司・部下ともに不安が広がっている

リモートワークは、上手く使うことで満員電車の回避や育児・介護との両立が実現するなど、生活の満足度を高めてくれる一方、前述のようにコミュニケーションの停滞や孤独感といったコメントを目にする機会も増えました。実際に、パーソル総合研究所が2020年に発表した調査結果でも以下のようになっており、部下の第一位・上司の第二位で、「相手の気持ちを察しにくい」ことに不安を感じていることが分かっています。

順位部下の不安上司の不安
第一位相手の気持ちが察し難い(39.5%)業務の進捗が分かりにくい(46.3%)
第二位仕事をさぼっていると思われないか(38.4%)相手の気持ちを察し難い(44.9%)

これらは、テレワークを止めるだけで相手の気持ちが理解できるほど簡単な問題ではありませんが、会社、事業展開、その課題、そこで働く人たちなど、社内の様々なメンバーを理解するうえでの前提となる情報がしっかりと共有できるように、社内広報の重要性が以前にも増して高まっていることを示すものであると思います。

なぜ、リモートワークでは社内広報の重要性が増しているのか?

コロナを境にビジネスのデジタル化は大きく進み、企業を取り巻く環境は大きく変わりました。当社の支援先でも、例えば地方の家族経営の建設業など今まではデジタル化と無縁だった事業者様も、今では抵抗なくオンラインで対応されるようになりました。こういった変化は今後も続き、社会・経済環境はさらに大きく変化していくすることが予想されます。そのため、企業は社員やステークホルダーに対して、変化に対応する情報を提供し続け、不安を解消することが必要になります。社内広報は、社員に対して企業の方針や戦略、取り組みなどの情報を正確かつ迅速に伝えるため、今後ますます重要な役割を担うことになるでしょう。

また、中小企業に至るまで広がっているリモートワークにより、社員同士のコミュニケーションが希薄になる傾向があります。そのため、社内広報を通じて、社員同士のコミュニケーションを促進し、社内文化を活性化することの重要性が増しています。さらに、対面接触が減った分、社内広報を充実させることで、経営のメッセージ、制度、文書、イベントなどの情報をアクセスしやすいように整理して伝えることで、生産性向を目指していくことも必用です。

リモートワーク時代の社内広報の重要性をまとめると、以下の通りです。

変化に対応するための情報を提供するため

コロナ禍以降、ビジネスの急速なデジタル化の進行により、社会や経済の環境変化が格段にスピードアップしており、今後もその傾向はますます拍車がかかると思われます。このような大きな変化の中で、企業は従業員に対して企業の方針や戦略、取り組みなどの情報を正確かつ迅速に伝え、変化に対応するための情報提供が必要です。
社内広報を充実させることで、社員に必要な情報を効率的に伝えることが不可欠です。

コミュニケーションの希薄化を解消するため

SlackやMicrosoft Teamsなどのビジネスチャット、ZOOMやGoogleミートなどのオンライン会議システム、といったツール類の充実により、リモートワークでも定型的なコミュニケーションはやりやすくなりました。しかし、対面のように、メンバーの表情から「何となく腑に落ちて無さそう」といった印象を読み取って早期に手当することで後半に大きな手戻りとなることを防いだり、「言語化できないけれどなんとなく気になる」といったポイントを話し合うことで早期の改善に繋げたり、といった不定形なコミュニケーションには課題が残っていると言われています。
社内広報では、このようなコミュニケーションの希薄化ポイントを把握し、それを解消するような取り組みをすることが必要です。

社員のモチベーション向上につながる可能性があるため

リモートワークでは、社員に対し様々な制約を与えるため、従来は無かったストレスや不安感が生じます。社内広報を活用して、社員に企業の取り組みや成果、メッセージ、同じ仕事をしている仲間たちの様子を伝えることで、社員のモチベーション向上につながる可能性があります。また、社内広報を通じて社員の貢献や功績を公表することで、会社としての目的・目標に対して大きくドライブすることにもつながります。

情報共有の3つのポイント

従業員への情報共有のやり方を3つのポイントを具体的に説明します。

情報の重要度に応じて共有方法を選択する

情報共有は、情報の種類や重要度に応じて共有方法を選択する必要があります。例えば、社外への情報はeメール、社内への情報は気軽に使えるチャットツール、社内外に関わらず緊急の情報は電話にするなど、自社の仕事や顧客とのかかわり方に応じた適切な共有方法を決めて行きます。

情報共有のルールを従業員に啓もうする

情報共有のルールは、社員がリモートワークをする上での基本となります。従業員がしっかり守れるように啓もうし、守れて無い人がいればリマインドやレクチャーをすることで、メンバー全員がルールを守れるように継続的な社内広報を実施して行きます。

フィードバックを受け付ける仕組みを作る

情報共有は、単方向のものではありません。人の入れ替わりや仕事の変化により、今までのルールが合わなくなることもあり、そういった場合には実態に合わせ速やかに改定し、それを社内広報により共有して行くことが重要です。そのため、社員からのフィードバックを受け付ける仕組みを作り、業務環境にルールの合っているかを継続的に把握できるようにすることが重要です。

コミュニケーション活性化の3つ

リモートワーク下でのモチベーション向上の3ステップ

リモートワーク環境下で、社員のモチベーション向上を上げるための取り組みを3つのステップで具体的に説明します。
なお、これらのステップは、広報PR部門だけではなく、人事や事業部門の上長など、主幹となる担当者と緊密に連携しながら、それらの担当者が動きやすいように環境整備し、背景や目的といった情報を発信することで、メンバーの目線が揃うようにして行きましょう。

目標設定と進捗確認の徹底

リモートワーク環境下では、社員が仕事に対する目標や意義を感じにくく、モチベーションが低下することがあります。そのため、目標設定と進捗確認を徹底することが重要です。実際、上記で紹介したパーソル総合研究所の2020年の調査結果でも、部下の不安の第2位は「仕事をさぼっていると思われないか不安(38.4%)」、上司の不安の第1位は「業務の進捗が分かりにくい(46.3%)」となっており、多くの企業でリモートワーク下の評価に不安を感じていることが分かります。

目標設定は、社員が仕事に取り組む上での目標を明確にし、自ら設定した目標に対し工夫しながら達成することで、自己実現感の向上に繋がります。また、上司の立場では目標の達成手段や進捗確認の方法を部下としっかり話し合い、必要な権限を与え、リモートワーク環境下でも部下が目標を達成できるようにサポートして行くことが重要です。

数字目標だけが一方的に上から落とされてもなかなかそれを達成するためのモチベーションを持ちにくいので、組織内外の環境や経営戦略など、会社の大きな方向を伝える機会を作ったり、それに基づいた各部の取り組みの説明機会を作るよう促したりなど、目標管理が効果的に機能するように広報からもバックアップをして行きましょう。

適時適切で具体的な会話の継続

リモートワーク環境下では、対面に比べてどうしても進捗が見えにくいです。例えば、どんなにツールを充実させても対面の時のような「業務指示に対し、何となく気もそぞろ」といった感覚的な情報まで把握するのは困難であり、進捗が問題無いと思って安心していたらある日突然退職を申し出られて驚いた、といった声を聞くこともあります。

重要なのは信頼関係であり、信頼関係を構築するためには、目標の達成度合いだけで無く、従業員の取組を細かく確認し、良いことでも改善が必要なことでも、気付いた点を具体的にフィードバックして行くことです。「注意をしたから」と言って、それだけで信頼関係が崩れることはありません。従業員の仕事をちゃんと見て、従業員の成長につながるフィードバックをすることは、ポジティブな内容でもネガティブな内容でも、従業員の信頼関係の構築に繋がります。

従業員の取組を細かく確認するためには、以下の3点が有効です。

  • 業務の進捗確認など内容が決まっている会話に関しては、オンライン会議を活用して、短時間で良いのである程度高頻度で実施する。
  • 直接顔を合わせる機会も定期的に設け、ある程度フリートークもできる場を用意する。部下が多くなかなか時間が取れない場合は、チーム全体の報告会の後に多少フリータイムを設ける、といった対応も有効。また、広報部門が主幹となることで、例えば四半期に一度など全社のメンバーが顔を合わせる機会を作ることも検討する。
  • 従業員との面談のやり方を個々の上司に任せきりにせず、継続的に検討・検証しながら、ある程度標準化を図る。標準化した手順や項目で定点観測することで、従業員の変化や会社の傾向などが見えやすくなる効果もある。
    ※この場合には、他社の取組や社外からの客観的な意見を参考にするのも有効です。

直接対面の時の感覚が染みついていると、「そんなにしょっちゅう確認しなくて良いだろう」と思ってしまいがちですが、オンラインだと対面に比べ格段に情報が少なくなります。長年一緒に仕事をして来たメンバーが同じ仕事をするなら良いかもしれませんが、メンバーの入れ替わり、顧客や仕入れ先など外部環境の変化、仕事そのものの変化、個々の体調やライフステージの変化など、様々な環境変化により、必ずしも「〇〇だろう」が通じない場合もあることには注意が必要です。

広報としては、そういった変化やそれに伴う留意点などの客観的な情報を周知し、組織内の会話が活性化するようにリードしましょう。

報酬と評価の明確化

リモートワーク環境下では、社員の働き方や貢献度が見えにくいため、上司・部下の双方で評価に対し不安を抱えていることは、前述した通りです。そのため、目標、取組、会社の支援、成果と評価基準、報酬の明確化が重要です。特に、評価基準と報酬については、不明確だとそもそも取組のモチベーションが高まりませんし、従業員の想定と会社の定めと違っていたら(「達成したのに(つもりなのに)期待していた評価(または報酬)に繋がらなかった」)、会社や会社の定める目標そのものが信頼されなくなるなど、信頼関係に深刻な影響が生じます。
ですから、目標、取組、会社の支援、成果と評価基準、報酬を明確化することは極めて重要です。ポイントは、目標、取組、会社の支援など、会社全体の事業計画や育成制度と密接に結び付く情報は、従業員間の理解に落差が生じないように、社内広報により統一した情報を発信したうえで、必要に応じ個別に説明することです。

また、リモートワークを導入する場合、単に自宅等で勤務するだけでは、水道光熱費の負担などで満足度が下がる場合もありますが、育児や介護その他の私用に応じた柔軟な出入りが可能な制度と併用することで、リモートワークのメリットが最大化され、従業員の満足度が高まると言われています。
そういった社内の声をしっかり聴くことも広報部門の役割であり、そうやって従業員満足度が高まることにより業績や評価に繋がる可能性も高まるため、主幹部門と連携して対応しましょう。

まとめ

コロナによる仕事スタイルや生活スタイルの変化により、企業はより会社の内外ともにコミュニケーションの取り方を変え、広報活動を強化することに迫られています。例えば、従来は紹介中心の顧客開拓でWEBサイトやオンラインでの取引の仕組みが不要だった企業でも、非接触でビジネスを行うための仕組みや、非接触のコミュニケーションに対応した適切な広報活動をしなければ、紹介に対応できなくなっています。
また、ソーシャルディスタンスの広がりや健康と安全に対する関心が高まったこともあり、自社の健康・安全対策を積極的に広報する必要も生じています。コロナ以外でも、従業員の健康管理に注力し、それを対外的にも認識させるために広報PR活動を行っている企業は、そうでは無い企業に比べ、社会的なイメージが大きく違ってくるのではないでしょうか。

広報PRパーソンは、今後さらに拡大するこれらの変化に対応するために、自社の広報戦略を見直し、新しい取り組みに積極的に取り組むことが求められます。

花村広報戦略では、個々の企業の実態を細やかに把握し、オーダーメイドで支援しています。
代表は中小企業診断士(経済産業省登録)であり、スモール・ミドルのビジネスの専門家でもあるため、経営から広報までワンストップで支援することが強みです。リモートワーク下での社内広報の見直しについて、社外に専門のパートナーが必要とお考えの方は、当社にお気軽にご相談ください。

著者のイメージ画像

花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。