【事業再構築補助金】埼玉県で申請・相談するなら(第8回)
(参考記事)
埼玉県で補助金を相談するなら/事業再構築補助金(7回)の講評
埼玉県で補助金を相談するなら/ものづくり補助金(13次)の講評
事業再構築補助金の第8回公募の採択が終了し、応募のあった12,591件(前回15,132件)のうち6,456件(前回7,745件)が採択され、内容が公開されました。 本記事では、今後申請を検討されている事業者様向けに事業再構築補助金 第8回公募 採択結果を講評し、全体の傾向や申請枠毎の有利不利などとともに、専門家への相談時の注意点などをお伝えします。
【事業再構築補助金】埼玉県で申請・相談するなら(第8回)
採択率などの傾向
第8回の採択結果で最も特徴的だったのは、申請件数と採択件数がともに過去最低だったことでしょう。
一方、採択率は前回と同率の51%で、これも前回と同様に過去最高位でした。
公募回数 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
第1回 | 22,231 | 8,016 | 36% |
第2回 | 20,800 | 9,336 | 45% |
第3回 | 20,307 | 9,021 | 44% |
第4回 | 19,673 | 8,810 | 45% |
第5回 | 21,035 | 9,707 | 46% |
第6回 | 15,340 | 7,669 | 50% |
第7回 | 15,132 | 7,745 | 51% |
第8回 | 12,591 | 6,456 | 51% |
前回の講評でもお伝えしましたが、事業債構築補助金は第6回から大きく傾向が変わっています。
これは、グラフにすると非常に分かり易いです。
申請件数が第1回から第5回まで20,000件前後で推移していたのが、第6回から突如15,000件台となり、第7回も同様でした。これで落ち着いたかなと思っていたら、今回第8回で突如12,000件台に落ち込んだので、少し驚いています。第10回からは条件が大きく変わったので、件数は今後も変動はするでしょう。
一方、採択率は第6回から3回連続でほぼ50%と高位安定です。
ただし、これは採択の難易度が下がったという訳ではありません。むしろ全く逆で、前回の講評でも伝えた通り、個別の採否が公表されるようになったことで、成績=採択率を下げたく無い各支援機関が受付段階で「見込みがある」案件だけを選り好みするようになった結果に過ぎません。他の言い方をすれば、第8回申請数12,591件の陰では、初期の頃との差分7~8,000件が受付段階で「見込み無し」と断られている可能性があり、実際の採択率は50%より遥かに険しいはずです。
いつから専門家に相談するか
例えば公募要領一つを取っても、初期の頃は30ページ強だったのが第10回では66ページと2倍になっており、これを読んで正しく理解するだけでも大変になりました。実際、一度でもご覧になったなら分かると思いますが、初見の事業者様がこの公募要領を全て理解し、要求事項に沿って事業計画書を作り、添付書類を用意するのは、率直に言って極めて困難です。また、仮に対応しても、競争評価の中で採択される可能性は極めて低いです。
それでも、申請額が少額なら自社で対応するのもありですが、500万円以上するような事業に大きなインパクトを与える投資なら、投資のアイディアがある程度固まった段階から専門家に相談し、ノウハウを活用して採択率を高めることを強くお勧めします。
事業再構築補助金で専門家に相談するタイミングをまとめると、以下の通りです。
まずは補助金の内容を知り、自分のビジネスプランが当てはまるか確認したい。
特に初期段階においては、正しい情報に基づいて検討することはとても重要です。一見あてはまらなくても、一定の軌道修正により該当する場合もあります。
投資金額が500万円を超えそう。
500万円以下だと、専門家の報酬(通常100万円~)を差し引くと手元にあまりお金が残らなくなりますが、概ね500万円を超えると、不採択時に全額自己資金で対応するのはそれなりに大変なので、専門家に相談しながら採択確率を高めていくことをお勧めします。
ちなみに、僭越ながら弊社も、一定の選別はしております。しかし、ぱっと見では難しそうでも、事業の方向性や投資の目的をちゃんと確認し、要求事項に合わせて柔軟に調整できれば、可能性が見えて来る場合もあります。支援機関の中にはそういった調整をせず事業計画書の作成だけをするという方もいますが、弊社は承っていますので、お気軽にご相談ください。
それぞれの採択率を踏まえた検討
前回に引き続き、都道府県別や申請区分別の数字を見て行きます。
埼玉県と全国平均の比較
都道府県 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 | 順位 |
全国平均 | 12,591(前回15,132) | 6,456(前回7,745) | 51%(前回51%) | 30(前回22) |
埼玉 | 423(前回465) | 227(前回239) | 54%(前回51%) | 23(前回22) |
まず、当社の事業所在地である埼玉県は、採択率・順位ともに前回とほとんど同じでした。
個人的にはもう少し高くなって欲しいと思っておりますが、弊社がご支援した事業者様は都内や千葉だったため、残念ながら今回の採択率には貢献ができませんでした。
その他の都道府県の状況
第8回 | 第7回 | |||||
都道府県 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 | 順位 | 前回採択率 | 前回順位 |
新潟 | 151 | 98 | 65% | 1 | 58% | 8 |
鳥取 | 48 | 31 | 65% | 2 | 51% | 25 |
茨城 | 214 | 131 | 61% | 3 | 56% | 11 |
岐阜 | 221 | 135 | 61% | 4 | 59% | 6 |
高知 | 33 | 20 | 61% | 5 | 51% | 23 |
岡山 | 190 | 114 | 60% | 6 | 53% | 20 |
滋賀 | 201 | 120 | 60% | 7 | 53% | 19 |
富山 | 113 | 67 | 59% | 8 | 58% | 9 |
愛知 | 941 | 552 | 59% | 9 | 55% | 12 |
山形 | 70 | 41 | 59% | 10 | 55% | 13 |
石川 | 137 | 79 | 58% | 11 | 59% | 5 |
山口 | 97 | 55 | 57% | 12 | 47% | 41 |
山梨 | 106 | 60 | 57% | 13 | 47% | 42 |
京都 | 447 | 251 | 56% | 14 | 50% | 29 |
静岡 | 410 | 230 | 56% | 15 | 58% | 7 |
長野 | 232 | 130 | 56% | 16 | 59% | 4 |
徳島 | 102 | 57 | 56% | 17 | 59% | 2 |
秋田 | 45 | 25 | 56% | 18 | 49% | 34 |
第8回と第7回を見る限り、新潟、岐阜、富山以外では、2回連続して一桁台の順位という都道府県は無く、あまり都道府県による難易度の偏りは無いようです。ちなみに、一都四県をはじめとした大都市圏の採択率は、埼玉が54%(23位)、千葉が53%(24位)である以外、全て中位以下でした。
申請区分別の採択状況
申請区分別の採択状況は、前回に引き続き、非常に分かりやすい差が出ています。
申請区分 | 第8回 | 第7回 | 第6回 | ||
申請数 | 採択数 | 採択率 | 採択率 | 採択率 | |
通常枠 | 7,261 | 3,562 | 49% | 47% | 45% |
大規模賃金引上枠 | 8 | 4 | 50% | 45% | 56% |
回復・再生応援枠 | 1,522 | 879 | 58% | 62% | 67% |
最低賃金枠 | 165 | 117 | 71% | 81% | 86% |
グリーン成長枠 | 434 | 173 | 40% | 40% | 40% |
緊急対策枠 | 3,201 | 1,721 | 54% | 55% | 0% |
合計 | 12,591 | 6,456 | 51% | 51% | 50% |
まず、最低賃金枠は、前回からは10%低下しましたが、それでも71%と、平均(51%)に対し20%も上回っています。次点の回復・再生応援枠は、前々回・前回から低下傾向にありますが、それでも平均(51%)に対して7%上回っています。
ここで言えることは単純明快で、入り口である申請枠をどう選ぶかによって、まだ事業計画書を1行も書いていない段階から、採択率が20%以上も変わってしまう場合がある、ということです。ですから、もし申請事業者様のご状況が複数の申請枠に当てはまるなら、最低賃金枠や回復・再生応援枠で申請できないかを検討することを強くお勧めします。
平均採択率を下回る枠での申請は避けるべきか?
では、平均(51%)を僅かに上回る緊急対策枠(54%)や、下回る大規模賃金引上枠(50%)、グリーン成長枠(40%)はどうか?
結論から伝えると、これまでは、該当するならこれらの枠で申請するべきでした。
理由は、これらの枠は不採択となっても条件を満たすことで通常枠の再審査を受けられたからであり、要するに、打席に2回立てたからです。
ですが第10回公募要領からは、不採択時に通常枠での再審査が無くなります。
不採択時の再審査を考慮せず、純粋に、申請する枠の補助金額や難易度だけで勝負する時代になった、ということであり、平均採択率を下回る枠での申請には慎重になった方が良いでしょう。
別なコラムで解説しますが、第10回公募要領は申請枠も含めて全体的に大きく変わっています。しかし、最低賃金枠は残っております。回復・再生応援枠は、緊急対策枠とセットになって物価高騰対策・回復再生応援枠となりましたが、一応は残っています。 変更直後なのでまだそれぞれの枠の採択率は分かりませんが、複数の枠に該当するなら、これまでの実績を参考に上記の2枠を優先するのも一つの方法でしょう。
支援機関別の応募・採択の状況
まず目立つのは、金融機関の採択率の高さです。
これについての仮説は前回講評に詳述していますが、事業計画書の作成や添付書類の準備が自社で対応可能なら、金融機関に相談すると、話しが早いでしょう。
ただ、一般的に金融機関は、事業計画書の作成や添付書類の準備といったサポートはしてくれません。そのため、そういった準備が自分ではできない・時間が無い、といった場合には、なんとなくネットで検索して出て来たコンサルタントに依頼するのでは無く、投資額に見合った資格を持っているのか、スタッフでは無くその有資格者自身が支援をするのかなど、慎重に検討いただければと思います。
埼玉県内の補助制度
残念ながら、2023/4/18現在で、事業再構築補助金に対する埼玉県の上乗せ補助制度は見当たりません。
ただし、埼玉県商工会議所連合会内の『埼玉県事業再構築支援センター』では、計画策定支援を行う無料の専門家派遣の調整や、事業再構築補助金の採択事業者に対する無料の専門家派遣による事業計画の実行支援などを行っており、本格的な依頼の前にまずは気軽に相談といった場合には一法です。
また、当社も専門家として登録されていますが、埼玉県商工会連合が行っている『専門家派遣事業(エキスパートバンク事業)』でも、一定回数は無料でご支援が可能です。こちらは、弊社を指名していただくこともできますので、ご希望の方は下記までご連絡ください。
【志木商工会】
■問合せフォーム:https://shikishishokokai.net/inquiry/
■メールアドレス:info@shikishishokokai.net
■電話番号:048-471-0049
まとめ
今回のコラムでは、これまでの第1回から第8回までを俯瞰しながら、事業再構築補助金のトレンドを確認して来ました。これを踏まえて、支援を依頼する専門家を選ぶ場合に、どのような点に注意すれば良いかをまとめました。
- 申請事業者にも相応の負荷がかかることをちゃんと説明し、時間を取るように依頼があるか。
- 各申請枠の採択率を正しく把握していて、申請事業者の希望に対して、数字(予想を含む)を交えた申請枠の提案があるか。
- ヒアリング担当者と事業計画書の作成担当者、添付書類などの担当者が同じか。
- 担当者は、投資額に見合う国家資格などを有しているか。
- 担当者は、申請事業者の事業内容や用語について分からないことあった時、曖昧にせずちゃんと確認をしているか。
事業再構築補助金は第10回から大きく変わっており、申請事業者様だけで無く、我々支援機関でも、また補助金の事務局でも、色々と混乱が生じています。実際弊社でも、事務局に問合せを行った際、「初めてなので分からない」と折り返しになることはしょっちゅうです。
ただ、そういった流動的な状況であるからこそ支援機関の役割は重要であり、申請事業者様の側でも、上記のような注意点を踏まえることが重要です。
貴社が信頼できる支援機関と出会い、事業を成功されることを祈念しております。