刺さるプレスリリースの書き方/取材したくなる5つの仕掛け

前回、プレスリリースの書き方について説明しました。

プレスリリースとは、簡単に説明すると、メディア・報道機関に向けた情報提供のことです。起業や団体が、自社の商品・サービス・活動・その他を報道機関に知ってもらい、報道してもらうために、A4で1~2ページ程度の書類として配布されます。

もちろん、プレスリリースを出したからと言って、必ずメディアからの取材や報道に繋がる訳ではありません。むしろ、大半のプレスリリースは失敗に終わります。しかし、その中でもいくつかのポイントを押さえて対応することで、失敗の可能性を抑え、成功の確率を上げることができます。
今回は、プレスリリースとはなにかを理解したうえで、メディアに選ばれるための5つのポイントをお伝えします。

刺さるプレスリリースの書き方/取材したくなる5つの仕掛け

相手を理解する・・・相手は誰で、いつ、何を求めているか

非常に基本的なことですが、読者の皆さんは、具体的にどこの誰にプレスリリースを出すのか、お分かりでしょうか? 相手はどのような媒体で、何を担当しており、どういったスタンスなのか、きちんと把握されていますでしょうか?

例えば、女性向けファッション誌に対して、B to B企業の人事異動のプレスリリースを何百通送っても採用されることはありません。しかし、その人事異動が、女性を働きやすくするための人事制度導入に伴うものであったり、女性の役員・管理職登用に関するものであったら、たった1通のプレスリリースでも採用される可能性はあります。

重要なのは、自分がこれからプレスリリースを送る相手をしっかり理解したうえで、プレスリリースの価値を明確にしていくことです。

  • メディア特性の理解
    ・TVなら映像、ラジオなら音、新聞や雑誌ならインタビューの用意は不可欠
  • 番組、特集、企画、紙面など内容への理解
    ・雑誌なら、ファッション誌なのか経済誌なのか、読者層、過去の記事はどうかなど
  • どのような情報がニュースバリューになるかの理解
    ・一般的に「最〇」「初〇」はニュースバリューに繋がりやすい
    ・GW、夏休み、クリスマスなど世の中のイベントに合った情報は受け入れられ易い
    ・「〇周年」「〇人突破」など自社でタイミングを作るのも良い

相手に合わせる・・・Only1か、Universalか

「プレスリリース」と言うと、どこかから入手したリストや一斉配信サービスなどを使い、一人でも多くのメディアに配信することをイメージされる方がいます。もちろん、配信対象メディアを増やすこと自体は重要です。しかし、やたらめったら送るだけでは成果に繋がりません。

プレスリリースの成功確率を高めるためには、以下のような型を使い分けるのがお勧めです。

  • 「あなただけ」のOnly1型
    メディア一つ一つの特性に合わせてプレスリリースの訴求ポイントを調整する
  • 「誰にでも」のUniversal型
    一定の事前調査はするが、興味を持ったメディアが取材してくれたら良いと考え、プレスリリースの内容は調整しない

カスタマイズレベルを変える・・・集中と選択で効率的に

全てOnly1型で対応できたら良いですが、それでは手間がかかり過ぎます。しかし、だからと言って全部をUniversal型にすると、可能性のあるメディアをみすみす逃すことになりかねません。

お勧めなのは、事前にメディア調査に応じて一定のランク付けを行い、そのランクに応じて以下のようにカスタマイズのレベルを変えることです。

  • 過去に自社や自社商品と近い内容の掲載実績があるメディアや、戦略上どうしても掲載してもらいたいメディア
     →しっかりカスタマイズしながら対応する
  • 一定の条件が合うメディア
     →男女、年齢層、地域性など、特定の条件に応じて2~3パターンのプレスリリースを用意して使い分ける
  • それ以外のメディア
     →汎用的なプレスリリースで対応する

信頼を得る・・・情報だけでなく、発信源を信頼してもらう

一般論として、どの程度の知識があるのか分からない人が「美味しかった」と言っているラーメンには興味を持てなくても、信頼できる評論家のお勧めラーメンは行列に並んででも食べたいと思う人がいます。

プレスリリースも同じで、メディアの信頼を得ることは極めて重要です。

しかし、タレントのような有名人や大学教授のような研究者でも無い人は、メディアからどのようにして信頼を得れば良いのでしょうか?

しっかり顔を見せる

相手がメディアだからと言って、特別高いハードルや特殊なルールはありません。

プレスリリース段階で以下のような情報を開示し、顔を見せることで、取材対象者がまともな人物であり、情報の発信者が信頼できると伝えることは可能です。

  • フルネーム、連絡先、応答可能時間の明記は基本
     プレスリリースの反響期間は応答可能時間を延長すると良い
  • 簡単な略歴や受賞・表彰などの歴も記載すると良い
  • 自社WEBサイトがある場合は、取材対象者の経歴や顔写真も掲載しておくと良い
     メディアが取材前に見てくれた時に、取材対象者がどんな相手なのかを開示する

相手の要望に応える

広報PRは、社会に対する会社の窓口です。当然、プレスリリースを受けたメディアにとってもそれは大前提であり、確認事項があるときには会社のことを最も熟知している前提でオファーされることがほとんどです。

「相手の要望に応える」とは、このようなメディアの期待に応えることです。難易度はなかなか高いのに、期待に応えることができなければ、次からはメディアに敬遠される可能性さえあります。

このような経緯を踏まえて、メディアの要望に応えるためには、細かなFAQを用意するよりも前に、以下のようなポイントを満たすことをお勧めします。

  • 経営者インタビューや開示不可情報など、基本的な事項については予め経営の合意を取っておく
  • 経営会議、営業会議、開発会議などの重要な会議体にはできるだけ参加し、会社の方向性や公式見解、経営の意向などを正しく理解しておく
  • 経営層とは密に連携し、決まって無いことでもその場その場で適切に対応できるようにしておく
  • 社内各部署のキーマンと連携を取り、適時適切な助けを得られるとともに、取材内容に応じて適切な対象者をセットできるようにしておく
  • その情報が開示不可ということだけで無く適切な代替案が提示できるように、経緯や背景についても正しく理解しておく
     例:社の方針でお見せできませんが、△のインタビューなら対応が可能です。

簡単にあきらめない・・・繰り返し情報を発信する

前稿でもお伝えしましたが、メディアはプレスリリースを毎日3桁以上受け取っているので、1回や2回送っただけで採用されることは極めて稀です。むしろ、何度も何度も送り続けてようやく成功する、ということの方が多いでしょう。

もちろん、不発に終わったプレスリリースと全く同じものをただ毎日送っても、意味がありません。以下のようなポイントを押さえながら継続的に対応することで成功の可能性が高まります。

繰り返しプレスリリースを実施するためのポイントは以下の3点です。

  • タイミングを変える
    プレスリリース自体は全く変えず、時期だけを変えるので、最も負荷が少ない変更です。プレスリリースに大きなニュースがたまたま重なったので報道されなかった場合などに有効です。
  • タイトルを変える
    一度は不発でも、タイトルを変えるだけで成功する場合もあります。個人では発想が凝り固まってしまいがちなので、ディスカッションできる環境が社内にある場合などに有効です。
  • 中身を変える
    商品やサービスそのものは同じでも、色や形、訴求するポイントなどを変えることで、ニュースバリューが明確になり採用される場合があります。写真や動画などの素材が豊富、経営層や営業と調整しやすい、といった環境で有効です。

最後に

プレスリリースは、ただチラシを送るだけではありません。重要な情報を社会に発信する窓口であり、送った後は運を天に任せるでは時間の浪費です。それで万が一取材の依頼が来ても、要望に応えられず慌てふためいているようでは、メディアの信頼を大きく無くしてしまうことになりかねません。

プレスリリースの支援をご希望なら、トータルな対応が必要です。

弊社でもプレスリリースのご支援を行っていますが、上記の理由から、必ず事前にNDAを結び、経営情報も含め情報開示していただいたうえで、アフターフォローも含めトータルでご支援しております。

貴社自身がプレスリリースを対応する場合でも、基本的な注意点は同じです。

単に広報要員をアサインするだけで無く、メディアの信頼を得るための動きが取れるか、社内の支援体制はどの程度なのか、といったことをしっかり検討し、自社だけでは手が足りないなら、内製にこだわらず広報の専門家と連携しながら対応することをお勧めします。

著者のイメージ画像

花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。