カスハラ対応 | 飲食店など対面接客で「態度が悪い」と言われたら

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飲食店など対面接客のにおけるクレームやカスハラは、それ以外の仕事に比べ、以下のような特徴があります。

クレーマーにとって

  • いつでも来店し、従業員・スタッフに直接アプローチできるため、暴行や動画撮影などの直接的な被害を受けやすい。

従業員・スタッフにとって

  • 突発的にアプローチされることになり、来店予約などで無い限り事前対策がしにくい。そのため、お店としても被害を把握し難く、速やかなヘルプがしにくい。
  • 服装、表情、姿勢、言葉遣いなど、「態度が悪い」といったクレームやカスハラが起きやすい。
  • 従業員の顔や名前を見ることが出来る(覚えられてしまう)ため、毅然とした態度に逆上された場合、個人攻撃の標的にされることがある。

    また、特有の制約があります。
    例えば、コールセンターやバックオフィス業務なら、お客様から態度は見えないので、マニュアルを見ながら対応したり身振り手振りで上司を呼んだりできますが、対面接客の場合はそうは行きません。

    また、クロージングにおいても、電話やメールなら多少強引に対応を打ち切ることもできますが、対面接客の場合、激怒し居座っているお客様に対し「電話を切る」のように簡単に打ち切る方法はありません。
    対面接客の場合でも、警備を呼ぶなど半強制的に排除する手段はあります。しかし、そうするとお客様が逆上して騒いだりし、更に物々しい状況となって、他のお客様の満足度を下げることになりかねないため、やはり簡単ではありません。何より、そもそも自社のミスが発端の場合は、対応を打ち切ること自体ためらわれます。

    このような注意点を踏まえて、本コラムでは、飲食店などの対面接客業で「態度が悪い」と言われた場合の対応について、具体的に解説します。

    カスハラ対応 | 飲食店など対面接客で「態度が悪い」と言われたら

    飲食店などの対面接客業で「態度が悪い」と言われたときの対応

    飲食店などの対面接客業でハードクレームやカスハラが起きやすい理由としては、まず、目の前にいる従業員やスタッフを気軽に捕まえてクレームをつけられる、ということが挙げられます。

    また、もう一つ重要なこととして、商品やサービスにご不満をお持ちの時点で、対人クレームも普段より発生しやすい状態である、という点にも注意が必要です。実際、メーカーの修理受付では、無償修理の場合に比べ有償修理の場合の方が圧倒的に、言葉遣いなどの対応クレームになりやすいと聞きます。そのため、注意をして対応していても、ついうっかり苦笑いなどをしてしまうと、「こっちはお前らのおかげで迷惑してんのに、笑うってどういう態度だ!? 責任者を呼んで来い!」などとお怒りになられる例は枚挙にいとまがありません。

    あらかじめ「態度が悪い」とはどんな態度かを整理しておく

    前述の通り、飲食店など対面接客業では、「態度が悪い」というクレームは避けて通れません。

    そこで、自社の商材やビジネスモデルに当てはめて、「態度が悪い」とは具体的にどういう態度なのかをあらかじめ整理します。
    一例を挙げると、以下のような整理が考えられます。

    • 説明が分かりにくい(特に、自社の商品やサービスについての説明)
      お客様の訊かれたことに答えられていない、前置きが長い、言い訳が多い、など
    • 態度が不適切
      溜め息、不貞腐れ、返事をしない、お客様を睨んでしまう、適さない場面で笑う、など
    • 発言が不適切
      ため口、喧嘩腰、責任転嫁や他人事的な発言、セクハラ的発言、差別的発言、など
    • 身だしなみがだらしない
      不潔、臭い、ちゃんと着ていない、など
    • 顧客の問題解決になっていない
      接客のレベル自体が低い(ミスの頻発や、お客様が何を求めているか分かっていない)、企業の都合を優先している、次善策や代替案を提示できていない、など

    実際には、お客様も我々も双方人間なので、必ずしも上記の例だけには限りませんし、上記に該当する場合でもお怒りを買わずに済むこともあります。ただし、それでも上記例のような態度を目の前で取られたら、やはり大多数の人が、「態度が悪い」と感じるのではないでしょうか。

    一方、対面接客業では商品やサービスに対する不満が人への不満に転嫁されやすいので、「態度が悪い」と指摘されても、客観的には非難されるような態度を取っていない場合もあります。
    そのため、不必要に刺激しないよう注意することは当然ですが、上記例のような具体的な行為を全く挙げず、「態度が悪い」とだけ延々言い続けるお客様には、具体的にどんな行為を指しているのかをちゃんと確認しましょう。

    実際に「態度が悪い」と言われたら、真摯に謝罪する

    もし、従業員やスタッフが前掲のような態度を取ってしまったことを確認した場合には、余計な言い訳はせずに、まずは速やかに謝罪しましょう。

    対策本の中には、事実関係を認めるような謝罪はせず、心情への謝罪に留めることを推奨するものもありますが、ここではもう少し踏み込んだ謝罪をお勧めします。具体的には、「溜め息は不適切な態度でした。誠に申し訳ございませんでした」など、事実に対し簡潔に謝罪することをお勧めします。

    言い訳をしながら謝罪をしない

    態度の悪さについて、具体的な言動を指摘されている場合には、「そう聞こえたなら謝罪します」といったふんわりとした謝罪では、「聞こえたこっちが悪いと言うのか!?」「言い訳しながら謝罪するな!」と、更なるお怒りを呼び、最悪、カスハラに発展する可能性もあります。そのような事態を呼び込まないように、具体的な行為を指して「態度が悪い」とご指摘いただいたら、余計な言い訳をせず速やかに謝罪しましょう。

    ポイントは、謝って済ませられるうちに済ませること

    当サイトでは、クレームやカスハラについて様々な対策を紹介していますが、最大の対策は未然防止であり、揉める前に鎮火させることです。

    もちろん、嘘も方便で謝るポーズをとっても、見破らたら更なる火種になるだけです。しかし、上記のような「態度が悪い」の例に当てはまる言動が実際にあったなら、まずは真摯に謝罪することが重要であり、大半はそれで治まります。

    謝って済まない場合は、それ以上のトラブルの回避を優先する

    飲食店など対面接客業でハードクレームやカスハラが発生したときに、最も注意しなければいけないことは、従業員やスタッフが暴言や暴行などの被害に遭わないことです。
    しかし、見落とされがちではありますが、次に注意しなければいけないことは、従業員やスタッフが加害者になってしまわないようにすることです。

    お客様が乱暴をして来たら、専門の訓練を受けていない従業員が適切に対応することは困難

    例えば、お客様が額がくっ付く距離まで顔を近づけて怒鳴って来たり、肩でグイグイ押し込みながら詰めよって来たりしたからといって、つい押し返してしまい、揉み合いになってしまったりしたら、最悪、相互暴行となる可能性もあります。

    従って、上記のようなトラブルを回避するためは、真摯に謝ってもお客様がご納得いただけなかった場合には速やかに上長に交代するなど、といったルールを決めておくことが重要です。

    すぐには上長に交代できない場合も想定して対策を決めておく

    シフト勤務やギリギリの人数で回しているお店の場合は、上司への交代や複数名での対応ができない場合もあると思いますし、アルバイトだけで回している時にハードクレームやカスハラが発生したら、対応そのものが困難という場合もあります。
    そのような場合には、以下の様な初期対応を共有し、従業員・スタッフを実害から守ることを優先します。

    • 初期段階で「自分には判断の権限がないので、本部に確認させてください」と言ってしまう。
    • ヤバイと思ったら速やかにその場から逃げ出す。
      「少々お待ちください」などと“言いながら”速やかにその場から立ち去ってしまい、「待て」と言われても待たない。
    • お客様の言動が怖い時には「怖いです」と正直に伝える。
    • 怒鳴られたり物を叩いたりされた場合には「脅かさないで下さい」と牽制する。
    • 暴言や備品の汚破損があっても、基本的に反応しない(できれば、予め通報手順も決めておく)。

    「態度が悪い」ことが原因の対応クレームやカスハラは、ほとんどの場合はその1件だけでなく、商品やサービス、日頃からの接客、いざトラブルが発生した場合のオペレーションなどに構造的な問題を抱えていて、類似のトラブルの芽が多数あります。そのため、同様のクレーム・カスハラを組織全体として削減するためには、紙のマニュアルでルールを作るだけでなく、行動規範を作ったり、実践型のマニュアルや研修を整備したりし、“組織として”対応する仕組みを作ることが有効です。

    そういった仕組み作りについて専門家にご相談を希望の方は、当社でも承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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    「謝罪すべきこと」と「解決策を提示すべきこと」を分けて、理不尽な要求を牽制する

    飲食店など対面型接客では、電話やメールと違い、強引に電話を切って着信拒否にしてしまう、といった方法で打ち切ることは困難です。そのような方法を採っても、店頭で大声を出されたら他のお客様にとって迷惑ですし、ヒートアップして写真や動画を撮られネットに晒されたり、実際に暴行を受けたりといったカスハラを受けたら、さらに被害が拡大してしまいます。

    そのため、謝罪と解決策を分けて、お客様をヒートアップさせないようにしながら理不尽な要求に対しては丁寧に牽制して行きます。

    「人(態度)」と「物(商品・サービス・費用)」を分けて対応する

    「人(態度)」へのクレームに対しては、前述の通り早期かつ真摯な謝罪が重要です。そうすることで、以降の対応を物(商品・サービス・費用)に集約させ、感情論と切り離した解決策を提示して行きます。
    一方、「物(商品・サービス・費用)」へのクレーム対しては、直接損害への等価交換を原則に解決策を提示します。例えば、飲食店で料理を間違えてしまった場合には作り直すこと、オーダーを通し忘れてしまったならその分のお代はいただかないこと、洋服に飲み物をこぼしてしまった場合にはクリーニング代が該当します。

    もちろん、満足度を大きく下げるような事に対するクレームが発生したら、割引券やドリンクをサービスする、といった行為を否定するものではありません。しかし、「態度の悪さ」にいつまでも固執し、物への優遇を要求される場合は、時には以下の様に毅然と突き放すことも必用です。

    「人(態度)」へのクレームは、会社としてクローズ済みであることを伝える

    「従業員の態度が悪い」とのご指摘は真摯に受け止め、既に十分な謝罪をしました。ご納得いただけなかったとしても、当社ではこれが精一杯の対応です。

    「物(商品・サービス・費用)」へのクレームに対し解決策を提示し、お客様に選んでいただく

    もちろん、クリーニング代は全額当店で負担します。ただ、お召し物を買い替えされた場合でも、当社の負担額はクリーニング代が上限です。即答いただかなくても結構ですので、一度、ご検討いただけないでしょうか?

    それ(態度)はそれ」、「これ(ハードクレーム・カスハラ)はこれ」で対応する

    こちらが突き放していると感じたら、更に攻撃的な態度をとって来たり、過剰な要求をして来たりする場合があります。そのような場合には、「それはそれ」「これはこれ」で対応するのが大原則として、カスハラ的な言動を牽制して行きます。
    一例を挙げると、以下の通りです。

    「あいつ本人に謝罪させろ」などと言われたら

    店内で起きたことは全て、店長である私の責任です。本人の態度が悪かったことについては、本人に代わって私からお詫びいたします。誠に申し訳ございませんでした。
    (個人攻撃になり、更なるトラブルになりかねないので、基本的には上司が対応する)

    「あいつをクビにしろ」などと言われたら

    お約束はいたしかねますが、今回の件やお客様のご意見は社内でもしっかりと共有した上で、本人に対しても厳しく指導なりを行っていきますので、それでご容赦下さい。

    「納得できる謝罪が無ければ料金は払えない」と言われたら

    恐れ入りますが、当店では既に十分な謝罪をしたと考えており、御食事代を払っていただけないなら、警察に相談せざるを得ません。それを踏まえて、もし謝罪に不足があるとお考えでしたら、何が必要か具体的に教えていただけますでしょうか。

    複数名で対応する時には予め役割を決めておく

    飲食業などの対面型接客業では、クレームやカスハラが発生すれば、多くのサイトや対策本で「複数名で対応すること」を勧めています。このような複数名対応については、厚生労働省のカスハラ対策企業マニュアルでも推奨されていますし、カスハラを受けている従業員にとって心強い面もあると思います。

    しかし、当社では必ずしも複数名で顧客対応することが効果的だとは考えておりません。

    複数名で対応することによるリスクを理解する

    ハードクレームやカスハラへの対応は、プレッシャーも大きく難易度も高いうえ、お客様の眼前で細かく相談できる訳でもないので、複数名だからといって、適切な対応ができるとは限りません。下手をしたら複数名で対応すること自体が火に油となり、「こいつ、横から勝手にしゃしゃり出てなんなんだよ!?」「お前の態度が悪いから怒っているのに、寄って集ってどういうつもりだ!」と、お客様がかえって逆上してしまうことも考えられます。他所でも書きましたが、土下座事件として報じられたしまむら様の事件では、店員さんは2名だったと報じられています。
    そのため当社では、単に「複数名で対応すること」とするのではなく、対応者の具体的な役割を予め決めておき、実際にカスハラが発生したら、その役割に沿って機械的に対応をして行くことをお勧めしています。

    お客様との直接対応をする役割

    最初にお客様から声をかけられた従業員が担当する可能性が高いですが、困難な場合などでは、速やかに上司や先輩に交代しましょう。
    なお、上司や先輩であっても、必ずしも十分な知識・スキルを持っているとは限りません。クレームやカスハラに対応する可能性がある人は組織として必要なトレーニングを受けさせるとともに、「上司に相談」が形を変えた丸投げにならないように、上司を含めた相談窓口を設置するなど、フォロー体制を構築することをお勧めします。

    関係先への連絡をする役割

    社内の関係部門、警備、警察などに連絡しましょう。
    この時、あえてお客様の見える位置で電話をすることで(かつ、カウンター内などの手が届かない位置で)連絡することにより、強い牽制効果を生みます。

    記録を取る役割

    お客様の言動や従業員の対応を時系列に沿って記録して行き、報告書などにまとめます。
    なお、お店によっては監視カメラなどで自動的に記録されている場合もありますが、そのような場合にも、あえてお客様に見えるように監視カメラが動いているか確認することにより、強い牽制効果を生みます。

    まとめ

    飲食店などの対面型接客業では、目の前にお客様がいるので、乱暴な態度を取られると大きな恐怖を感じますし、実際、怒鳴られたり小突かれたりする場合もあります。事業者としては、安全配慮義務の観点からも、上記のようなリスクから従業員を守る必要があり、そのためには、対面型接客業としての特性を踏まえた組織的な対策が極めて重要です。
    ですが、それらの対策は、決してクレーマーやカスハラ顧客を優遇することにより穏便に済ませるものではありません。他の業種・業態と同様に、「人と物を分ける」と「それはそれ、これはこれ」を原則として、カスハラには毅然と牽制して行くことが基本的な対応です。

    問題は、頭では理解していたとしても、手が届く距離にいるお客様から乱暴な態度で凄まれ、「お前の態度が悪いからムカついてるんだよ!」などと個人攻撃をされたら、強い恐怖とプレッシャーがかかってしまい、理解した通りに冷静な対応をするのが難しいことです。
    ハードクレームやカスハラへの対応においては、頭で理解する知識とそれを実行するスキルとを一致させる研修が不可欠です。当社では、基本的な考え方や対応方法のコンサルティングだけでなく、具体的な対応の研修や、実践スキルを身に着ける研修により、クレームやカスハラに組織的な対策を支援しております。

    クレームやカスハラにお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談下さい。

    レクーム カスハラ

    著者のイメージ画像

    花村広報戦略合同会社
    花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

    15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。