企業ブランディングとは?価格競争の脱却と差別化の秘訣

類似の商品やサービスが溢れた昨今、経営に疲弊している企業はたくさんあります。

「価格競争に巻き込まれている」
「いい人材が獲得できない」
このような悩みを解消する糸口となるのが「企業ブランディング」です。

一時期経営不振になった大企業も、立て直しの際はブランディングから行っていることが少なくありません。
企業ブランディングは、価格競争に飲み込まれやすい中小企業にとってこそ重要です。 この記事では、企業ブランディングのポイントや方法について解説します。

企業ブランディングとは?価格競争の脱却と差別化の秘訣

企業ブランディングとは?

企業ブランディングとは、お客様や取引先、社員などに向けて共有したい自社イメージを確立することです。

企業名やその企業のサービスを聞いて「ここなら安心・安全だろう」「今どきのオシャレなイメージ」「あそこは老舗ブランド」など、消費者や取引先が自社に対して思い描くイメージが自社の目指すイメージと一致していたらブランディング成功といえます。

企業ブランディングが重要な理由

近年なぜ、企業ブランディングが重要視されるようになったのでしょうか?
その理由として、以下の様なニーズが挙げられます。

  • 他社との差別化
  • 価格競争からの脱却
  • イメージアップ
  • 理想の顧客・人材とのマッチング

他社との差別化

企業ブランディングがしっかりできると、他社との違いが明確になります。しかし、企業ブランディングがない場合には、お客様や取引先から見て個性がなく、「数ある類似商品のなかの一つ」としてしか認識されません。

例えば、貴社が「お茶」を販売していたとしましょう。
大手メーカーは様々な商品を展開していますし、最近では、大手小売店がOEMとして展開している商品もラインナップが充実しています。その結果、一見違う商品のように見えても、ラベルを見るとどれも同じ大手メーカーの商品だった、ということも珍しく無くなりました。

中小企業は、認知度や販売力、流通網などにおいて、そういった大手メーカーには敵いません。
そこで、お客様の記憶に残るためには「企業ブランディング」が重要になります。

「地元〇〇県の茶葉農家さんと作った摘みたて緑茶」といったネーミングをし、地方創生に力を入れる企業としてブランディングをすることで、他社のお茶と何が違うのかが明確になるのです。

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価格競争からの脱却

現代はほとんどの市場で飽和と商品のコモディティ化が進み、どの商品も一定の基準を満たし優れています。

一般的な消費者が持つ「同じ様なクオリティであれば、少しでも安い方でいい」といった価値観は今も変わらない中で、大手ディスカウントショップの商品でも「安かろう悪かろう」と言われる時代は終わり、価格が安くても一般的な使い方であれば概ね満足できるクオリティのものがほとんどになりました。
その結果、競合に勝つために値下げの効果が際立つようになった一方、価格以外の差別化が困難になり、他社の値下げにより価格競争に巻き込まれやすく、値下げにより短期的には競合に勝てても長期的には消耗し切ってしまうようになりました。
そのような中で、「いや、うちの商品は他とは違うんだよ」と言われることも多いのですが、伝わらない違いは無いのと変わりません。そして、その違いをしっかりと「伝える」ことが企業ブランディングです。

先ほどのお茶に例えてみましょう。

「地元〇〇県の農家さんと作った摘みたて緑茶」として販売することで、その地元の人が見れば「せっかくなら地元のお茶にしよう」「地方創生に取り組む企業を応援したい」と思う人が出てくることが考えられます。
他にも「摘みたて」という部分に付加価値を感じて、他社より高くても選ぶ人も出てくるでしょう。
企業ブランディングを行い企業のメッセージをお客様に伝えることで、コモディティ化した商品との差分が付加価値として認識され、安いこと以外にも価値が認められれば、価格競争から抜け出すことができます。

イメージアップ

どのような企業かが明確に伝わることは、企業のイメージアップにも繋がります。

例えば、単に社名や商品名だけでなく、「地方創生に取り組み、地元の農家さんと一緒に産業を盛り上げている会社」「オーガニック素材とブレンドにこだわっている会社」「毎年斬新な新商品を出している会社」など、その企業の取組やこだわり、特長などと一緒に認識されることで、一般の商品者からみても、取引先からみても、印象が大きく変わります。そして、その印象が企業のイメージアップにつながれば、多くの商品の中から選ばれやすく購入されやすくなりますし、採用でも優秀な人材を確保しやすくなります。

通常、企業に対する上記のようなイメージは、長期にわたる沿革の中で形成されていくことがほとんどであり、短期的に真似たからと言って同じようなイメージまでも獲得できるわけではありません。つまり、消費者の心の中にある企業イメージが良いものであれば良いほど、明確であればあるほど、競合にとっての模倣困難性が高まり、価格競争に巻き込まれる可能性が低くなります。

理想の顧客・人材とのマッチング

他社と差別化ができず、価格競争に巻き込まれている場合には、「安いから」という理由で選んだお客様ばかりが多くなります。そのようなお客様は価格だけが目当てなので、競合他社がもっと安い商品を出せばそちらに流れて行くことになり、流出を回避したければもっと安く売るしかなくなるので、さらに価格競争に巻き込まれやすくなります。また、そもそも求められている価値と提供している価値がミスマッチになりやすいため、クレームも生じやすくなります。

一方、自社のこだわりをしっかり伝えることはつまり、仮に競合の方が安かったとしても自社を選ぶべき理由を伝えることに他なりません。価格では無い自社のこだわりは、同じこだわりを大切にしているお客様から選ばれることに繋がり、価格競争からの脱却へと繋がります。お客様の大切にしているこだわりに合った価値を届けることで、値下げをしないでも満足度の向上につながります。

また、社内メンバーに対しても一体感や定着力に繋がりますし、採用市場に対しても、そういったこだわりに共感した人材や、「生まれ育った地元で頑張っている企業で働きたい」といった前向きな気持ちを持った人材が集めやすくなるので、自社に合った人材の定着が図られるといった良い効果があります。

企業ブランディングの種類

「企業ブランディング」と一言でいっても、複数の種類があり目的が異なります。
ポイントは、自社が目指すコーポレートイメージを具体化し、キャッチコピー、ロゴ、コーポレートカラー、ユニフォーム、キャラクターその他の各種ブランド要素に加えて、従業員の接客やアフターフォローなどの人的サービスまで漏れなく反映させ、全社的に統一感を持たせることです。
一つのブランド要素しか知らないお客様が他のブランド要素に振れた時、それが同じものだと直感的に認識できなければ、みすみす商機を逃がすことになるので、サービスの品質を高め、それを具体化し、あらゆる要素に統一的に反映させていくことは、ブランディングにおいて極めて重要です。

リブランディング

リブランディングとは、時代や市場に合わせてブランドをリニューアルすることです。

大手企業の歴史をみてみると、途中でロゴが変わっていたり、ターゲットが変わったり、イメージが変わっていると気付くことがあります。

好ましいブランドを形成しそれが顧客の中に浸透するまでには、長い時間と労力が必要です。しかし、だからこそ時代や環境の変化の中で「今までのイメージでは通用しない」となったら、今の時代・ニーズに合わせて大胆にブランドをリニューアルすることで、会社に新風を吹かすことができます。

また、もし今まで明示的なブランドを作って来なかったとしても、サービスを提供して行く中で、ユーザーや取引先にとって「こんな企業だ」「こういうことを大切にしている」といった、一定のイメージが定着している場合が少なくありません。
そのように自然に発生したイメージも、リブランディングすることで、ブランドとして確固たるものに変えて行くことができます。

デブランディング

デブランディングとは、もともとの企業イメージと切り離し、まったく別のイメージを作っていくことです。

これは企業イメージが強い大手企業が行うことが多く、例えば無印良品はもともと西友のプライベートブランドでしたが、一般の人は「無印良品=西友」というイメージをもっていません。また、黒マー油と硬めの細麺で人気の豚骨ラーメン専門店・なんつッ亭は、味噌ラーメンは味噌屋八郎商店という味噌専門の別ブランドで提供しています。両方とも個性的で美味しいラーメン屋さんですが、もし、味噌ラーメンもなんつッ亭で提供していたら、イメージがブレて個性が希釈化し、何屋さんか分からなくなっていたはずです。

このようにあえて企業と切り離したブランドを作ることで、既存事業で確立したブランドイメージを希釈化せずに新たな市場にアプローチしたり、両ブランドでそれぞれのこだわりを明確に打ち出したりすることができます。

採用ブランディング

採用ブランディングとは、採用活動時に求職者に向けて行うブランディングです。

「〇〇会社=ブラック企業」というイメージがつけば、当然採用が困難になります。
本人はもちろん、家族や教員でさえ「あの会社は辞めておきなさい」というため、マイナスなイメージは想像以上に深刻なダメージとなります。

一方で、「社員を大事にしている会社」というクリーンなイメージがあれば「働きたい!」という人が増え、優秀な人材を確保しやすくなります。

企業ブランディングのポイント

価格競争や人材不足など、多くの課題を抱えている企業にこそ企業ブランディングは重要です。
そのような企業ブランディングをするためには、どのように進めたらいいのでしょうか?

以下では、そのステップを簡単に説明いたします。

企業の現状分析を行う

まずは、自社の現状分析を行います。

自社の強みや弱み、歴史、人や想いなどを幅広い目線で書き出してみましょう。
「強み」「弱み」「機会」「脅威」は、見方や自社のリソースなどによりどちらにも見えるということが少なくありません。そのため、評価に迷う場合は、まずは事実ベースでの網羅を目指すのも一法です。

また、内部要素に関しては、社内でも様々な立場の人に議論へ参加してもらうことはもちろん、可能であれば社外の人にも意見を聴いてみるなど、多角的な視点から検討することで、深く広く本質的な情報に到達できる可能性が高まります。

市場調査を行う

ポイントは、各種統計情報などの二次データと、自社で直接確認する顧客の声などの一次データの、両面で調査を行うことです。

二次データは、官公庁や業界団体、各種報道情報などの中に既に存在し、一定の集計・加工がされているデータです。市場規模や成長性、過去に類似の制度変更があった時の消費者動向など(例:過去に消費税増がされた時の支出の変化)、全体的な傾向を掴みたいときに有効です。既にあるデータなので、新規調査のコストや時間をかける必要が無く、網羅的で高精度なのが特徴です。

一次データは、直接聴いた顧客の声、アンケート、クレーム、故障ログ、その他の自社で直接確認したデータです。その案件でどんなことが起きたのか、それに対しその顧客はどう感じたのか、といった個別具体的な情報を把握したいときに有効です。自社で独自に調査する必要があるためコストや時間はかかりますが、統計に現れる前の兆候や、顧客の内心の変化、開発中の商品やサービスに対する購入意向など、掘り下げた情報を把握できることが特徴です。最近では、比較サイト、クラウドファンディング、WEB上のレビューなど、顧客の意向を簡便に確認する手段が増えているので、そういった手段を用いることで効率的に調査を行えるようになってきています。

企業のビジョンや提供したい価値を明確にする

自社と市場を調べたら、市場が求めているもので、自社にできることが何かを洗い出していきましょう。

そこから、企業のビジョンや、社会やお客様に提供したい価値は何なのかを明確にし、具体的な言葉に落とし込んでいきます。この時、現在の自社の強み・できることだけでなく、在るべき姿や将来像をしっかり考え抜くことが重要です。

また、そういったビジョンや理念は、社内はもちろん、株主、お客様、仕入先など、企業を取り巻く様々な関係者にも支持を得る必要があります。そのため、例えば社内であっても、強みの洗い出し段階から従業員の参加機会を設け、ガイドブックや説明会を通じて浸透を図るなど、広報活動が不可欠です。

キャッチコピーやデザインを統一する

社会やお客様に提供したい価値が明確になったら、その価値を端的に表すキャッチコピーを考えます。

キャッチコピーの役割は、その企業がどのような企業なのかを一言で表して、見た人の心の中に印象付けることです。そのため、「みんなに笑顔を」など漠然としたキャッチコピーでは、他の企業との差別化ができないため企業ブランディングには繋がりにくくなります。

キャッチコピーのポイントは、自社の強みにフォーカスし、届ける価値が何かを伝えることです。

自社がお客様に伝えたいイメージに合わせてキャッチコピーを作ったら、そのイメージに合わせて、ロゴ、WEBサイト、キャラクターなどの要素を作っていきます。このように、提供したい価値を起点にキャッチコピーを作り、それに整合するように個々のデザインを作って行く考え方をIMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)と呼び、企業の望むイメージを社会や顧客に浸透させていくためには不可欠な考え方です。

通常、長期間にわたるブランディング活動の中では、どうしても様々な要素の持つイメージがバラバラになってしまいがちです。なのでブランディングを成功させるためには、広報部などが中心となって自社のイメージを明確化し、それを社内に継続的に伝え、各種販促物や社外に発信する情報についてイメージの統一を図っていくことが有効です。

認知を広げるための広報を行う

キャッチコピー、デザインができたら、今度はそれを多くの人に知ってもらう必要があります。
広告、DM、チラシ、人的アプローチなど、方法はたくさんありますが、サービスや業種によって相性のいい広報が異なります。

特に、認知の広め方は非常に重要であり、どのように広まったかによっても企業イメージが大きく変わり、ブランディングに繋がっていきます。
例えば、ハイブランドの商品を販売した場合、ハイブランドに興味がある人からみて「オシャレ」と思われる認知の広げ方が大切になります。ほかにも「安心・安全」という企業ブランディングをしたいのに、炎上商法で認知が広がったとしたら、マイナスのイメージが色濃く残ってしまいます。

長期的な企業ブランディングのためには、広報活動や情報の広め方について戦略的な対応が大切です。

お客様の反応をみながら検証する

広報活動をしながら、お客様の反応をみてみましょう。

企業ブランディングは一度で成功するものではありません。「世の中に、この価値提供が求められている!」と思っても、実際に出してみるとお客様に反応されないということはよく起きます。一度世に出してみて、お客様の反応をみながら微調整していくという姿勢が非常に大切なのです。

また、企業ブランディングには「有言実行」が大切であり、お客様はメッセージと実際が重なっているのかも見ています。「安心・安全をお届けします」というメッセージを懸命に発信していても、実際のお客様とのやり取りが無愛想であれば、お客様の心には残りません。メッセージを掲げ、それを実行しているからこそ「素敵な企業だ」とお客様の心に残っていきます。
そのため、「キャッチコピーを作り広報したらブランディングの完成」ではなく、キャッチコピーを作り広報しながら、社会に浸透させていく」という姿勢で臨まないといけません。「体裁を整えること=ブランディング」と思っている企業もありますが、それでは社会に浸透しないため、ブランディングの過程を見られていることを忘れないようにしましょう。

企業ブランディングで他社との差別化をはかろう!

企業のビジョンや提供したい価値を明確にし、「この会社といえば〇〇なイメージ」とお客様や社会に思ってもらうことで、他社との差別化につながります。

今は原価高騰、人材不足、価格競争など、多くの課題を抱えている中小企業が多いと思いますが、そんな今だからこそ企業ブランディングをして、価格に関係なく選ばれる企業を目指しましょう。

広報の相談は 『花村広報戦略』 へ!

企業ブランディングをするうえで、広報戦略は要となります。
下記のようなお悩みをお持ちの企業様は、お気軽にご相談ください。

  • 商品・サービスでは負けないけれど、知名度が足りない
  • 事業が急成長したのは良かったけれど、従業員の気持ちはバラバラで、人材流出が増えてしまった
  • 広報の必要性は分かるけれど、大きな特徴の無いB to Bの地方企業なので、何から始めたら良いか分からない
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花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。